他社を眺めても・・・
前述した通り、期待感が剥がれたからといって、実態としてそれが悪いことを示すとは限らない。剥がれた理由の第一は、DXの認知が多くの企業で進んだためであり、相変わらずITベンダは忙しい状況にある。期待から実践へと推移したがゆえにバズワードが萎んでいくのは当然の結果といえよう。
しかし、剥がれた理由には、DXなど他社もできてないではないか、という落胆ないしは安堵によるものも一定数ありそうに感じている。心配なのはこのケースだ。
ずいぶん昔、SaaSやクラウドなどが登場する前には、ERPなど3文字英語がITマーケットをけん引していた。そのころはERPパッケージを買えば会社が変わると思っていたのに変わらなかった、という嘆き節があった。背景には、他社も入れてるからウチも入れよう、でも業務を変える気は更々ない(だからERPパッケージの導入効果も限定的)というものだ。とはいえ、そもそもERPは今日では非競争領域という扱いだ。非競争領域のIT化であれば、導入して思ったより効果がでなかったとしても、そこは割り切ってしまう見方もできるだろう。
しかしDXは事業の中核に影響するものだ。本質的に他社横並びで比較するものではない。「あの会社は力を入れてやってるようだが、どうも投資した効果は出せてない」「DXと騒いだあの会社、結局何も変わってないではないか」こういう目線で見ること自体、本質的にはDXとの相性が悪い。つまり、後者の剥がれた理由には、自社の事業がよく見えていないのではないか、という危険を感じるのである。
まとめれば、期待感が剥がれ落ち、だれもが知るキーワードになった今こそ、自社にとってのDXとはなんなのだという原点回帰が重要になると感じている。(忌部 佳史)
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