矢野経済研究所 ICT・金融ユニット

2023.09.25

【アナリストオピニオン】待ったなしの技能伝承、工場におけるAI自動化を拒むハードルと押さえるべきポイント③

工場におけるAI導入において押さえるべきポイント
さて、工場においてAIを導入する上では、少なくても次の5つの質問に対する明確な答えを持つ必要がある。

■取組み①:人材教育
5つの質問に回答するためには筆者は少なくても3つの取組みが必要と考える。本稿では、自動車工場を例として、OEM(=自動車会社)の取組みをベースに記載したい。まず1つ目のポイントは「人材教育」である。人材教育を通じて、①~③の質問に対する回答が可能となる。AI導入の前に前提として工場に関係なく問題発見能力(=解決すべき問題の明確化)や問題解決能力を身に着けることで①は解決できる。
次に実際に工場のIoT化に際してボトルネックの探索(=②)やボトルネックの解決に際してのデータの取得(=③)に際しては、ベンダーの協力が必要となる。ここで重要なのは基本的にOEM各社は積極的にAIに係る専門人材を新卒、中途問わず採用活動を進めており、内製化の傾向にある点である。このためベンダーはAIを活用したソリューションやモデルを納入する際に、OEMとともに徹底した形式知化を通じたモデル化と併せて、導入後の運用や保守、その後の横展開の検討を含めて、OEM側で対応できるようにスキルトランスファーを行うことが必要となる。そうした意味でも「人材教育」があたる。

■取組み②:データ取得環境の整備
さて、問題発見能力や問題解決能力、ベンダーからのスキルトランスファーでスキルを身に着けたとしても、データの取得ができないのでは機能不全に陥る。冒頭でも記載の通り、工作機械の耐用年数は長く、センサー内臓であれば問題ないものの、内臓されていない機械も多くあるため、AIなどの導入に際しては、工作機械の状況によってはセンサー情報を取得するための環境整備が必要となる。
例として豊田自動織機は、工場にある射出成形機向けに、AI/機械学習を活用した自動補正システムを構築するうえで、工作機械に情報分析基盤を実装、データを取得するための環境として工作機械のIoT化をテーマとしたプロジェクトを進め、環境を整える取組みを進めてきた。
AIの活用に際しては、出来るところから始めることも可能であるが、豊田自動織機のようにデータ取得環境を整備することでその後の取組みを一気に加速させるやり方もある。

■取組み③:ホワイトボックス化
最後にベンダー経由でAIを導入したとしても最終的に自分たちで使いこなす必要がある。モデルがブラックボックスでは自社で精度を上げるべく、制御値をはじめとしたパラメータの調整などを行う必要が生じた際に導入ベンダーに依頼する必要があり、改善スピードが落ちることになる。そこでOEMは推論モデルのロジックなども含めて現場側で必要に応じて手を加えられるように、納得いくまで議論を重ねながらホワイトボックス化を進めている。
特に製造業は自動車に限らず製造物責任を課されているため、何かトラブルが発生した際には事業者側が説明する必要がある。ブラックボックスのAIでは何が起きたのか説明がしきれないため、AIをホワイトボックス化し、現場側である程度、手を加えられるように操作性を含めて取組まなければならない。
(山口 泰裕)

※全文は以下よりご覧いただけます。

https://www.yanoict.com/opinion/show/id/389

山口 泰裕(ヤマグチ ヤスヒロ) 主任研究員
ITを通じてあらゆる業界が連携してきています。こうした中、有望な業界は?競合・協業しうる企業は?参入障壁は?・・・など戦略を策定、実行に移す上でさまざまな課題が出てきます。現場を回り実態を掴み、必要な情報のご提供や戦略策定のご支援をさせて頂きたいと思います。お気軽にお声掛け頂ければと思います。

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