矢野経済研究所 ICT・金融ユニット

レポートサマリー
2025.12.23

APN(オール光ネットワーク)の普及に向けた調査を実施(2025年)

APN(オール光ネットワーク)の国内市場について3つの普及シナリオとイメージ図を作成。今後の社会変化に備え、ユーザー企業も事業イメージを検討すべき時期に。

株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越 孝)は、国内の APN(オール光ネットワーク)市場を調査し、将来展望を明らかにした。ここでは、APNの3つの普及シナリオについて、公表する。

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【図表:APN普及シナリオ】

【図表:APN普及シナリオ】
  • 矢野経済研究所作成
  • 注:APN(All Photonics Network)の拠点は、通信事業者の局舎などの中継点やトランシーバー(光信号の送受信機能を有する機器)設置拠点をさす。3つの普及シナリオごとに、横軸に時間軸、縦軸には拠点の設置数を置いたイメージ図を作成した。

 

APN(オール光ネットワーク)の概況

APN(All Photonics Network:オール光ネットワーク)は、光電変換を極力なくすことで、大容量・低消費電力・低遅延な情報伝送を実現しようとする技術コンセプトである。政府は、APNを今後増大が見込まれる大容量のデータを低消費電力・低遅延で伝送させるための基幹的なインフラとして位置付けており、今後、Society 5.0に向けた我が国の社会を支える基盤になることが期待されている。

本調査では、横軸に時間軸、縦軸にAPN拠点設置数を置いたイメージ図を作成し、3つのAPN普及シナリオを作成した。

シナリオ①(低位予測)は、ハイパースケーラー等大手データセンター事業者を中心とした普及に留まるシナリオである。現在、生成AIへの旺盛な需要により、ハイパースケーラーと呼ばれる大規模クラウドサービス運営事業者において、APNは活用され始めている。今後は、ワット・ビット連携といった動きもあり、APNはデータセンター間を繋ぐ通信回線として導入されていくと想定できるが、シナリオ①では拠点数の広がりは一定規模にとどまる見通しとなる。

シナリオ②(中位予測)は、モバイルフロントホールや通信キャリアの拠点等に実装されるシナリオである。まず、APNの共通基盤技術が開発されれば、複数の通信キャリア間をシームレスにつなぐ光回線ネットワークが構築できるようになる。また、APNは5G回線基地局等のモバイルフロントホール(アンテナ部と制御装置を結ぶ光回線)へ展開していく見込みで、順調にいけば通信キャリアの局舎等全国的に普及していくものと想定される。しかし、このシナリオでは、主に通信キャリア自身のインフラとして活用され、一般企業や一般消費者にとって、APNは間接的な利用にとどまる見通しとなる。

シナリオ③(高位予測)は、一般企業におけるサービス需要が喚起され、APN機器の標準化・小型化・低廉化につながり、広く普及につながるシナリオである。シナリオ③では、APNのトランシーバーを収容したマイクロデータセンターなどが街中に整備され、一般企業等にもAPN拠点が設置されていく。全国にAPN拠点が整備されれば、拠点付近のIoT端末(例えば自動車等)から送信される大容量データをクラウドに送り、クラウド上でAIが解析し、IoT端末へ戻すといったことが実現できる。シナリオ③が実現していくことで、Society 5.0が目指すインテリジェンスな社会が成立していくものと考える。

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APN(オール光ネットワーク)の注目トピック

■APNの普及には、ユースケースを見出すことが重要
広く普及することが期待されるAPN(オール光ネットワーク)であるが、その普及動向を決定づけるのはユースケース(Use Case)の発掘というのが業界関係者の一致した意見である。
現在、ユースケース確立に向けた取組みは通信キャリア主導で行われているものの、回線を利用する一般企業など多くのユーザー企業では、大容量・低消費電力・低遅延な通信回線を利用したビジネスイメージはほとんど検討されていない。
APNは普及に向けた初期段階の技術コンセプトとはいえ、既に商品化されている。今後の社会変化に備え、多くの一般企業においても、来るべき未来を想定した事業イメージを検討すべき時期にきていると考える。

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参考:このレポートに掲載されている主なデータ一覧

  • 国内データトラフィックの推移予測、データセンターの消費電力予測
  • オールフォトニクス・ネットワーク
  • IOWN・APNが目指す目標
  • IOWN光電融合デバイス開発
  • 従来のネットワークとAPNの違い
  • モバイルネットワーク(基地局―アンテナ)のオール光ネットワーク化
  • 光電融合技術の世代と適用領域
  • PECロードマップの整理
  • DCIにおけるリソース最適化と低消費電力化
  • ディスアグリゲーテッドコンピューティングの概念
  • ディスアグリゲーテッドコンピューティングのキー技術:論理構成の概要
  • ディスアグリゲーテッドコンピューティングのモックアップ
  • 2030年代のAI社会を支えるデジタルインフラ像
  • オール光ネットワーク(APN)の利用者の拡大
  • オール光ネットワーク(APN)の普及・拡大に向けた官民の連携
  • オール光ネットワーク(APN)の社会実装に向けた技術開発ロードマップ
  • デジタルインフラ整備計画2030 概要
  • デジタル海外展開総合戦略2030 概要
  • ワット・ビット連携官民懇談会取りまとめ1.0 概要
  • 複数プロバイダを跨るネットワーク接続の全体アーキテクチャ
  • 共通基盤技術の開発内容の検討に当たって想定する二つのユースケース①
  • 共通基盤技術の開発内容の検討に当たって想定する二つのユースケース②
  • APN普及シナリオ
  • 拠点数の増加イメージ(参考)

■NTTドコモビジネス株式会社

  • AI-Centric ICTプラットフォームイメージ
  • 3,000kmの超遠距離を模擬した2拠点間でのAIモデル学習実証環境
  • NTTドコモビジネスが開発したRDMA転送ツール
  • 800G-ZRを用いた長距離接続イメージ
  • 検証内容イメージ図
■日本電気株式会社(NEC)
  • 活動ロードマップ
  • WXシリーズ製品適用領域
  • ネットワークの機能分離及びオープン化
  • リアルタイム顔認証実証の実証イメージ
  • 多様なユースケースを支えるネットワーク
■1FINITY株式会社
  • 1Finityのネットワーク製品群
  • APNポートフォリオ
  • フォトニックトモグラフィ
  • 次世代データセンターアーキテクチャ
■沖電気工業株式会社
  • フレキシブルPONの消費電力検証結果
  • 400G-PONを使用したフレキシブルPON
  • PONスライス制御技術の概要図
  • SFP+規格に準拠した光通信モジュール写真
  • エッジプラットフォームの成長
■住友電気工業株式会社
  • データセンター関連製品
  • 2024 ShowNetにて提供した複数拠点収容サービス
  • LLMCの変換遅延時間と視線追従映像遅延時間の関係
■古河電気工業株式会社
  • IOWNに貢献する新製品の開発
  • 空孔コアファイバ(HCF)
  • IOWN技術×V2I技術
  • 消費電力削減の検討
  • iPOPでのIOWNデモンストレーション

 

  • 光通信のネットワーク網
  • シャーシ/ブレードの特徴
  • 光通信システム伝送速度の変遷
  • 光トランスポンダの構成
  • MUX/DEMUXのネットワーク内での配置構造

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    • APNの現状回線数
    • 発展に向けた今後のポイント
    • 地方創生とAPN
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調査要綱

調査対象:通信キャリア、光伝送装置等関係企業など
調査期間:2025年6月~9月
調査方法:当社専門研究員による直接面談(オンライン含む)、ならびに文献調査併用

※APNとは:APN(All Photonics Network:オール光ネットワーク)とは、有線ネットワークや情報通信装置・デバイスに光電融合技術を活用し、通信網の全てにおいて電気信号と光信号との変換を極力なくすことで、大容量・低消費電力・低遅延な情報伝送を実現しようとする技術コンセプトである。
APNは段階的に開発が進められている技術であり、既に一部では商用化されている。政府は、APNを今後増大が見込まれる大容量のデータを低消費電力・低遅延で伝送させるための基幹的なインフラとして位置付けている。

<市場に含まれる商品・サービス>
APN技術

曺 銀瑚(ゾ ウノ) 研究員
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