株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越孝)は、国内のロボアドバイザー市場の調査を実施し、ロボアドバイザーの動向や将来展望を明らかにした。
【図表:ロボアドバイザー市場規模推移と予測】
近年、個人のリスク許容度や投資目的に合わせたポートフォリオ(金融商品の組成)を自動的に構築、運用するロボアドバイザーの利用者が拡大している。その背景には、金融商品の多様化が進んでいることなどから、情報を網羅的に把握し、適切な投資判断を下すことが困難と感じている働く世代において、資産構築支援に対するニーズが高まったこと等があげられる。海外においてはAIを活用したロボアドバイザーが中心となっているが、日本においてはAIを活用していないロボアドバイザーが主流ではあるものの、昨今ではAIを活用したロボアドバイザーが台頭しつつある。
日本のロボアドバイザーサービス提供事業者は、働く世代の資産構築支援を主軸にサービスを提供しており、インターネットを介して、より簡単にストレスなく、資産構築の出来る環境の提供を目指している。自動でポートフォリオの調整がなされ、長期的にリスクコントロールが出来る点などが評価され、新NISA(少額投資非課税制度)の開始や良好な投資環境を背景に、市場は確実に伸長している。
2023年度のロボアドバイザー市場規模は預かり資産残高ベースで、1兆8,460億円となった。2024年度には3兆円を超える水準まで拡大すると見込む。
■AI活用の進展
国内ではAIを活用していないロボアドバイザーが主流であるが、昨今ではAIを駆使したロボアドバイザーが台頭しており、グローバル資産を活用した分散投資とAIによる相場先読みを掛け合わせることで、運用効率の向上を追求している。仮にマーケット(相場)が悪化するという見通しの場合、マーケットへの警戒感を大幅に高めたポートフォリオを組むなど、運用リスクをコントロールする目的で大幅な組み換えが行われる点が運用効率の向上に繋がっている。
また、従来の投資一任契約の取引では、ポートフォリオの組み換えが積極的に行われるため、売買時にNISA口座の取引可能残高を消費してしまうことになることから、NISAの取引には不向きであると考えられていた。
近年では、NISAとの親和性を高めるため、売却を伴うリバランス(通常はポートフォリオに偏りが出た場合、割合が大きくなった部分(ex米国株など)を売却して、割合が小さくなった部分(ex米国債券)を購入することでリバランス(組み換え)を実施する)ではなく、毎月の積立時に各資産への積立額を適宜変更することで、ポートフォリオを維持する取り組みを進めている。こうしたNISA口座との親和性を高めたり、ロボアドバイザーで培ったノウハウに基づいて投資信託の開発への助言を行うなどにより、NISA口座への対応が進み、利用者の拡大に繋がっている。
ロボアドバイザー市場規模は堅調に拡大を続け、2030年度には預かり資産残高ベースで、12兆円を突破すると予測する。
この背景として、従来の証券会社が取り込むことの出来なかった投資経験の少ない働く世代のニーズを取り込むことに加え、AIを活用したロボアドバイザーの普及拡大により、投資経験者層のニーズを取り込めることから今後も市場は拡大していくとみる。
今後は、ユーザーの環境の変化等を織り込んで、資産形成サービス全体の向上を図ることも重要となる。そのためにも、証券や投資信託への投資だけではなく、ウェルスマネジメント(現金をはじめ、金融商品や不動産なども含めた資産全体を管理する資産管理サービス)と連動したサービス提供も必要となると考える。
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調査対象:ネット証券会社、ロボアドバイザーサービス提供事業者
調査期間:2024年1月~5月
調査方法:当社専門研究員による直接面談(オンライン含む)および文献調査併用
※ロボアドバイザー市場とは:本調査におけるロボアドバイザー市場とは、投資家が資産運用の際に商品の選定や売買のタイミングなどを完全にお任せできる投資一任契約であり、投資家に合ったポートフォリオ(金融商品の組成)を設定し、積立、長期運用で資産構築を支援するサービスである。利用者の中心は投資経験が浅い30代や40代の働く世代となっており、手数料が比較的低く、小額からインターネットで気軽に出来る点が従来の投資一任契約とは異なっている。なお、ロボアドバイザー市場規模は預かり資産残高ベースで算出している。
<市場に含まれる商品・サービス>
ロボアドバイザーサービス
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