矢野経済研究所 ICT・金融ユニット

レポートサマリー
2024.02.29

ローカル5Gソリューション市場に関する調査を実施(2024年)

ローカル5Gソリューション市場は2025年度以降に本格普及へ。既存の通信規格を用いたIoTシステムの更新に合わせて、5Gベースへの代替が進展する。

株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越孝)は、国内の5Gソリューション市場を調査し、製造、建設、物流、医療、セキュリティ、社会インフラ、スタジアム/ライブソリューションなど分野別の5G活用およびIoT型ソリューションの普及動向、将来展望を明らかにした。
ここでは、ローカル5Gソリューション市場予測、分野別の普及動向、プライベート5G市場動向等について公表する

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【図表:ローカル5Gソリューション市場規模予測】

【図表:ローカル5Gソリューション市場規模予測】
  • 矢野経済研究所調べ
  • 注:事業者売上高ベース。
  • 注:2023年度は見込値、2024年度以降は予測値。
  • 注:ローカル5Gネットワークを構築するためのシステム/アプリケーション開発費、端末/デバイス、電波利用料/回線利用料・通信費、プラットフォーム/クラウド利用料、運用管理費などを対象とした。但し、ローカル5Gネットワークのインフラ設備(基地局など)の費用や工事費は含んでいない。

 

ローカル5Gソリューション市場の概況

一般企業や自治体、各種団体などが総務省に免許を申請し、企業や自治体、団体の建物や敷地内など特定範囲(狭域)限定で構築する5Gネットワークであるローカル5Gは、コロナ禍による行動制限が緩和された2022年度から導入検討/PoC(概念実証)が進展した。2023年度に入るとPoC件数の増加とともに、徐々に実装段階のプロジェクトも増えており、2023年11月末現在でローカル5Gの免許人は152者(公表を承諾している事業者のみ)となっている。そうしたことから、2023年度のローカル5Gソリューション市場規模は、事業者売上高ベースで前年度比217.2%の63億円を見込む。

ローカル5Gソリューション市場は黎明期~導入期にあり、本格的に普及するのは2025年度以降になると考える。ローカル5Gソリューションのターゲットとなるのは、リアルタイム対応/遠隔モニタリング、最適化、意思決定支援、自動化・自動制御、データを基にした予知・予測・予防、価値向上といったテーマになる。
また、ローカル5Gネットワークを企業や団体が単独で利用するのではなく、複数の企業や団体が共同利用するローカル5G基盤の共有型や、レンタルパッケージ(レンタル型、サブスク型)などのローカル5Gソリューションも登場している。さらにローカル5Gネットーワークの用途を特化することで、運用コストの低廉化を実現するソリューションも期待されている。

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ローカル5Gソリューション市場の注目トピック

■プライベート5G市場動向
近年、プライベート5Gが注目され、一般企業や自治体、団体のDX化/デジタル化のサポート技術として、キーワードになっている。

プライベート5Gは、MNO(Mobile Network Operator:移動体通信事業者)がセルラー5G(キャリア)回線を使って、企業や自治体、団体の建物や敷地内などに、必要な帯域で5Gネットワークを提供するマネージドサービスである。
プライベート5Gでは、ローカル5Gと違ってユーザ企業サイドが無線局免許を取得する必要はなく、MNOがユーザ企業の建物や敷地内に基地局設備を設置し、その保守運用も行う仕組みである。そのため、ユーザ企業サイドの投資・運用負担は比較的少なく、ローカル5Gへの投資に二の足を踏んでいる企業や自治体、団体が注目するサービスとなっている。

製造/工場向けの5GベースのIoTソリューションは比較的新しい技術であるため、当面は新たな課題や問題に直面する蓋然性が高い。プライベート5Gの建て付けであれば、高コストや運用に手間がかかるといったローカル5Gでの課題を解決する手段を持った事業者も登場してきており、併せてIoTソリューションにおけるユースケース(Use Case)の積み上げが進みつつある。
見方によっては、「プライベート5Gはローカル5Gよりも有望」といった見解も見られ、5G活用での方向性の一つとして、プライベート5Gは無視できない技術領域であると考える。

※プライベート5Gは、ネットワークスライシング技術でネットワークの論理分割を行い、高い安全性でユーザ企業の閉域サービスとセルラー5G(キャリア)回線を接続するマネージドサービス。

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ローカル5Gソリューション市場の将来展望

2025年度以降、本格的な普及が進むローカル5Gソリューションでは、既存の通信規格を用いたIoTシステムの更新タイミングに合わせて、5GベースのIoTソリューションへの代替が進展する見込みである。この場合、当面はセルラー5GベースのIoTソリューション導入が主導するが、併せてローカル5G及びプライベート5Gも並走し、用途や目的に沿った使い分けが進む見通しである。
現状のローカル5Gのポジションは、先行するITベンダーによる自社グループ内の工場や事業所での実装/PoC(概念実証)や自動車メーカーに代表される先進的なユーザ企業による実装/PoC案件が増えている。しかし、多くの案件は2024年1月現在では圧倒的に実証/PoCに止まっている。このようにローカル5Gソリューションの現在地はまだ黎明期にあると言える。

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参考:このレポートに掲載されている主なデータ一覧

  • ローカル5Gの特徴と期待されるソリューション
  • IoT活用/データ活用イメージ
  • ローカル5G(ローカル5G型IoT)の普及見通し
  • 5Gネットワーク/ローカル5Gの対比
  • ローカル5Gの普及見通し(製造/工場)
  • ローカル5Gの普及見通し(農林水産/畜産)
  • ローカル5Gのポテンシャル評価
  • 分野別のIoT活用の見通し(2025~2030年)
  • 5G型IoT市場規模推移(2020~2030年度予測)
  • プライベート5G型IoT市場規模推移(2020~2030年度予測)
  • ローカル5G市場規模推移(2020~2030年度予測)
  • ローカル5G市場の内訳(2025年度予測)
  • 分野別のローカル5G市場規模推移(2020~2030年度予測)
  • ローカル5G市場での分野別構成(%)
  • 工場/製造での課題
  • ローカル5G普及への課題
  • 製造/工場でのIoT活用の現状
  • 製造/工場でのIoT活用の見通し(3~5年後)
  • 製造/工場での基礎データ①
  • 製造/工場での基礎データ②
  • 「IoT×製造」によるイノベーションイメージ
  • 製造/工場でのIoT/データ活用事例
  • ローカル5Gの普及見通し(製造/工場)
  • 製造/工場でのローカル5G市場規模推移(2020~2030年度予測)
  • 主要企業の5Gソリューションへの取り組み
  • 工場/製造での課題
  • 建設投資・許可業者数・就業者数推移
  • 年齢階層別建設技能者数
  • 新・担い手3法「建設業法・入契法の改正について」のポイント
  • インフラ分野でのDX施策イメージ
  • 土木工事におけるICT施工の実施状況
  • ICT建設機械等認定制度
  • 建設関連の基礎データ
  • 建設・不動産・建物関連でのIoT活用事例
  • 建設業におけるIoTソリューション
  • 建設における国内ローカル5G市場規模推移(2020~2030年度予測)
  • 総合物流施策大綱(2021~2025年度)
  • 物流/倉庫でのIoT活用の現状
  • 物流/倉庫でのIoT活用の見通し(3~5年後)
  • 物流/倉庫での通信ネットワーク
  • 物流/倉庫関連での基礎データ
  • 無人搬送車システム納入実績
  • 物流/倉庫関連でのIoT活用事例
  • ギガらく5Gを活用した製造・物流工程の無線化イメージ
  • 自動搬送システムイメージ
  • ローカル5Gの取り組みイメージ
  • ローカル5Gの実証イメージ
  • ローカル5Gの普及見通し(物流/倉庫)
  • 物流/倉庫での国内ローカル5G市場規模推移(2020~2030年度予測)
  • 主要企業の5Gソリューションへの取り組み
  • フィジカルインターネット実現に向けたロードマップ
  • フィジカルインターネットが実現する価値
  • 流通小売でのIoT活用の見通し(3~5年後)
  • 流通小売での基礎データ
  • 流通小売でのIoT/データ活用事例
  • ローカル5Gの普及可能性(流通小売)
  • 流通小売での国内ローカル5G市場規模推移(2020~2030年度予測)
  • 主要企業の5Gソリューションへの取り組み
  • ローカル5G普及への課題
  • 防犯/セキュリティでのIoT活用(現状)
  • 防犯/セキュリティでのIoT活用の見通し(3~5年後)
  • 防犯業務支援ソリューション
  • 高齢者見守り業務支援ソリューション
  • 防犯/セキュリティでの基礎データ
  • 見守り・セキュリティ/防犯関連でのM2M/IoT活用事例
  • 主要企業の5Gソリューションへの取り組み
  • 防犯/セキュリティでのローカル5G市場規模推移(2020~2030年度予測)
  • 遠隔医療の定義
  • 遠隔医療の分類
  • オンライン診療システム市場の形成過程
  • 医療情報に関わる3省2ガイドライン
  • 遠隔医療/オンライン診療/オンライン受診勧奨/遠隔健康医療相談の関連性
  • オンライン診療の主な利点
  • 医療(遠隔医療)での基礎データ
  • 医療(遠隔医療)でのIoT/オンライン診療システム参入企業
  • 医療(遠隔医療)でのIoT/在宅医療向けオンライン診療システム
  • 医療(遠隔医療)での5Gソリューションへの取り組み
  • 医療(遠隔医療)での国内ローカル5G市場規模(2020~2030年度予測)
  • 遠隔医療の普及拡大イメージ
  • 社会インフラITの全体イメージ
  • 社会インフラ向けITソリューションが期待される背景
  • 建設後50年以上を経過する社会インフラの割合
  • 社会インフラでのIT活用の現状と今後の見通し
  • 社会インフラ向けITソリューション市場規模推移(2018~2027年度予測)
  • インフラ対象/インフラ構造物の定量データ
  • 社会インフラ関連でのIoT活用事例
  • 5G型ITソリューションの可能性
  • 社会インフラでの国内ローカル5G市場規模推移(2020~2030年度予測)
  • 主要企業のローカル5G/5Gソリューションへの取り組み
  • インフラ保全で期待されるITテクノロジー
  • スマートシティでのIoT活用の現状
  • スマートシティでのIoT活用の見通し(3~5年後)
  • 主なスマートシティ事例
  • 主要企業の5Gソリューションへの取り組み
  • スマートシティでのローカル5G市場規模推移(2020~2030年度予測)
  • 主なスマートシティ事業事例(自治体別、実証実験含む)
  • 農林水産/畜産でのIoT活用の現状
  • 農林水産/畜産でのIoT活用の見通し(3~5年後)
  • 農林水産/畜産での基礎データ
  • 農林水産/畜産でのIoT/データ活用事例
  • ローカル5Gの普及見通し(農林水産/畜産)
  • 農林水産/畜産でのローカル5G市場規模推移(2020~2030年度予測)
  • 主要企業の5Gソリューションへの取り組み
  • 教育振興基本計画(第4期計画)での教育ICT関連の施策と指標(抜粋)
  • 教育におけるICT環境整備に必要性について
  • GIGAスクール構想における端末整備に関する予算/計画
  • 教育用コンピュータ1台あたりの児童生徒数の推移
  • 普通教室の無線LAN整備率の推移
  • インターネット接続率の推移
  • 普通教室の大型提示装置整備率
  • 指導者用・学習者用デジタル教科書整備率
  • 統合型校務支援システムの整備率推移
  • 都道府県別統合型校務支援システム整備率
  • 各教科等の指導におけるICTの効果的な活用について
  • 学校/教育現場でのICT/IoT/5Gソリューションへの取り組み
  • 全国公立学校のICT環境整備状況(令和5年3月1日時点)
  • 学校での国内ローカル5G市場規模推移(2020~2030年度予測)
  • スタジアム/ライブ会場においてIoTがもたらす効果
  • アフターコロナ時代におけるスポーツ観戦でのIoT
  • 東京オリンピック・パラリンピックでの5G事例
  • スタジアム/ライブ会場での5Gソリューションへの取り組み
  • 体育・スポーツ施設の件数
  • サッカースタジアムの概要
  • スタジアム/ライブソリューションでの国内ローカル5G市場規模(2020~2030年度予測)
  • 実証実験の概要

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調査要綱

調査対象:ITベンダー、移動体通信事業者、インフラ事業者、CATV事業者、ユーザ企業、地方自治体など
調査期間:2023年10月~2024年1月
調査方法:当社専門研究員による直接面談(オンライン含む)、電話による調査、郵送アンケート調査、ならびに文献調査併用

※ローカル5Gとは:ローカル5Gとは、MNO(Mobile Network Operator:移動体通信事業者)が広域でサービス提供するセルラー5Gとは異なり、一般企業や自治体、各種団体などが総務省に免許を申請し、企業や自治体、団体の建物や敷地内など特定範囲(狭域)限定で構築する5Gネットワークをさす。
ローカル5Gは、従来のセルラー回線やWi-fi、Bluetooth、有線などの通信ネットワークと比較すると、5Gの高速・大容量(映像配信や製造機械での大量データ対応など)、低遅延(協働ロボットや遠隔医療など遠隔作業支援など)、多接続(スタジアムでの参加型アミューズメントや交通流等の都市データ対応など)といったメリットがあり、IoT(Internet of Things)型ソリューションや特定範囲内でのAGV(無人搬送車)やロボットの自動運転などでの利用が期待される。

ローカル5Gソリューション市場とは:本調査におけるローカル5Gソリューション市場とは、ローカル5Gネットワークを構築するためのシステム/アプリケーション開発費、通信モジュール、端末/デバイス、電波利用料/回線利用料・通信費、プラットフォーム/クラウド利用料、運用管理費などを対象として、それらのハードウェア、ソフトウェア、サービスなどを提供する事業者の売上高ベースで算出した。
但し、ローカル5Gネットワークのインフラ設備(基地局など)の費用や工事費は含んでいない。

<市場に含まれる商品・サービス>
システム/アプリケーション開発費、通信モジュール、端末/デバイス、電波利用料/回線利用料・通信費、プラットフォーム/クラウド利用料、運用管理費など

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早川 泰弘(ハヤカワ ヤスヒロ) 主任研究員
産業調査/マーケティング業務は、「机上ではなく、現場を回ることで本当のニーズ、本当の情報、本当の回答」が見つかるとの信念のもと、関係者各位との緊密な関係構築に努めていきます。日々勉強と研鑽を積みながら、IT業界の発展に資する情報発信を目指していきます。

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