株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越孝)は、国内のインターネット広告市場を調査し、現況、参入企業の動向、および将来展望を明らかにした。
【図表:インターネット広告市場規模推移と予測】
2020年度はコロナ禍における景気後退で様々な産業分野で業績が落ち込んでいた。しかし、2021年度は景気回復と共に前年度の落ち込みの反動から広告予算を増やす企業が増加し、さらに企業のDX化が急速に進んだことにより、インターネット広告市場は大幅に伸長した。一方で、2022年度はコロナ禍の行動制限緩和により、広告主がコロナ禍で一時的にオンラインに振り向けた投資予算が再びオフラインへの投資予算に戻り、同市場の成長率は前年度に比べて緩やかになったとみる。このような状況から、2022年度の国内インターネット広告市場規模(広告主によるインターネット広告出稿額ベース)は前年度比112.2%の2兆9,340億円と推計した。
2023年度は、これまで景気を押し上げてきたコロナ禍明け後の需要回復がほぼ一巡したと考えられ、景気回復は緩やかなペースとなった。インターネット広告市場は引き続き成長するものの、2023年度の同市場規模は前年度より伸長率が鈍化し、前年度比106.3%の3兆1,180億円を見込む。
■AIがインターネット広告市場に与える影響
インターネット広告において、AIは事業効率化やサービスの多様化に利活用されていくと考える。実際にクリエイティブの生成や広告効果予測、広告運用オペレーターの業務効率化など、様々な領域でAIの活用が広がっており、特にクリエイティブ領域におけるAI活用が加速していくとみる。さらに、今後は業務効率化だけに留まらず広告の効果改善にAIが活用されていくと考える。
これまでもプラットフォーマーが提供するシステムにおいてAIが活用されてきたが、技術レベルが向上し続けている。これはインターネット広告市場において有益な傾向だが、今後のAI活用方法の変化が広告会社の事業に大きな影響を与えるものと考える。例えば、広告予算がAIによって自動的に最適化されるなど、広告会社の提供価値の一部がAIによって代替される可能性がある。
また、AIに対する過度な期待には懸念の声もある。あくまでも業務効率化の手段の一つとしての活用に限定される可能性や、AIチャットサービスの利用がITリテラシーの高い一部のユーザーに限られる可能性もある。また、AI活用においては、AIの透明性や説明責任、セキュリティ、倫理と法律の問題など、様々な課題点がある。
今後も引き続き、他の媒体からインターネット広告へのシフトが進むと予測する。また、企業のDX化進展やEC化率の拡大により、市場は緩やかに成長していくものと期待する。
広告種類別では、サーチ広告とソーシャルメディア広告、動画広告の成長が市場を牽引し、2027年度の国内インターネット広告市場規模は4兆円を超えると予測する。
■広告代理店
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調査対象:インターネット広告代理店、メディアレップ、アドテクノロジー提供事業者、メディア等
調査期間:2023年9月~11月
調査方法:当社専門研究員による直接面談(オンライン含む)、ならびに文献調査併用
※インターネット広告市場とは:本調査におけるインターネット広告市場規模は、インターネットの各種媒体に出稿された広告主による広告出稿額を合算し、算出している。
<市場に含まれる商品・サービス>
運用型広告(ディスプレイ、サーチ)、非運用型広告ほか
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