矢野経済研究所 ICT・金融ユニット

アナリストオピニオン
2012.05.15

市場の閉塞感打破や差別化に悩んだら、基本戦略からスタートする

ドキュメント業界では、コニカミノルタビジネステクノロジーズによるビジネスコンビニ国内最大手「フェデックス キンコーズ・ジャパン」の買収が話題となっている。
業界では、お客さんの仕事と競合となる事業展開はタブーとされてきたが、今回は新規参入ではなく、買収という形を取る事で実現している。

ドキュメント業界では、近年の踊り場のような市場の閉塞感を打破する為、様々な差別化戦略の展開がとられている。

弊社では、そうした相談毎をしばしば請けるが、私自身その際には常に基本に返り5Force分析や競争優位の基本戦略からスタートする事としている。本サイトをご覧の皆様にとっては釈迦に説法かもしれないが、今回はこの2つについて簡単に触れてみたいと思う。

5Force分析

まず、5Force分析であるが、企業は常に何らかの外的要因により競争をしなければならない状況に置かれており、その外的要因を整理・分析する手法である。

1.新規参入の脅威
自社の市場に他業種の企業やベンチャー企業が新規に参入することにより、新しい競争が始まったり、競争が激化したりする。これらの新規企業の参入を防がなくてはならない。
2.代替製品、代替サービスの脅威
既存企業にとって参入者が脅威となるのは、既存製品よりも安価に提供する場合、あるいは性能的に上回る代替品を同価格に提供する場合である。高収益を維持している業界に、新規参入企業が優れた性能の代替品で参入する場合は、業界の競争が激化し、既存製品の価格低下、収益低下により、業界内での攪乱が生じるため、特に脅威となる。
3.顧客の交渉力
価格主導権を顧客が持つ場合や製品開発に関しての声が大きい場合など、顧客の力が強い場合には顧客対応に優れた企業がリーダーになる。顧客の力が強くなるのは以下のような条件の下である。
  • 顧客が集中している場合
  • 顧客の購入量が顧客の総購入コスト全体に占める比率が高い場合
  • 購入される製品がコモディティ化され、差別化がないか極めて少ない場合
  • 競合が多い場合
  • 顧客の収益力が低い場合
  • 顧客が内製化を検討している場合
  • 顧客が当該企業から購入する必要性がない場合
  • 顧客の情報量が豊富な場合
4.供給者の交渉力
製品を提供する企業が、外部の供給業者から、原材料等を調達する場合、供給者との力関係が影響する。
5.既存競合同士の敵対関係
通常の競合する会社間の関係である。例えば、価格引下げ、宣伝広告の攻撃、差別化製品の投入、アフターサービス強化、店舗網の拡大など多様である。

競争優位の基本戦略

次に、競争優位の基本戦略であるが、これは市場規模が大きく拡大しない低成長時代には、成長戦略よりも、厳しくなる競争でいかに競合他社を上回るかという競争戦略が重要になる。業界内で有効なポジショニングを取る事によって、競争優位を獲得維持できる為である。そして、競争優位の獲得については、以下のいずれかの戦略を実行する事になる。

1.コストリーダーシップ戦略
業界内で最も低いコストによって競争優位に立つ戦略である。他社と同じ製品をより安く生産し・調達するということである。低コストの源泉は、規模の経済、範囲の経済、独自生産技術、流通システム、原材料へのアクセスなどである。ただ、生産数量の背景がなくては、なかなか難しい。少しの材料費コストダウンが大きな効果を生むには、数量ベースが大きくないといけないので、どちらかというと強者の戦略となる。
2.差別化戦略
差別化の内容は様々であり、他社製品にない機能、圧倒的なブランド力、きめ細かいサービス等々がある。言い換えると、競争優位を確立して、競争を回避する戦略ともいえる。
3.集中戦略
上記戦略は、業界全体をターゲットとしているのに対し、集中戦略は、ある特定セグメントに狙いを絞り、限定された範囲での競争優位を目指すものである。集中戦略は、ターゲットセグメントの内部でコストリーダーシップを目指すコスト集中戦略と差別化を目指す差別化集中戦略に分類される。集中化で重要なのは、自社の経営資源・組織能力の強みを発揮できる事と、成長性・収益性などの点で魅力的であることである。

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