矢野経済研究所 ICT・金融ユニット

アナリストオピニオン
2011.10.17

デジタル印刷機への興味は2012年

デジタル印刷機市場の現状

デジタル印刷機は、世に出始めた20数年前から現在に至るまで、日々進化を遂げている。国内においてもそれなりに普及しているが、海外ほど活用されておらず、“いまいち浸透していない”といった感覚が正直拭い去れない。

デジタル印刷機の特徴としては、次の事が挙げられる。

〔A〕小ロット印刷を得意とし、印刷機利用に対してコスト優位性を持つもの
〔B〕ショートラン(短納期)対応
〔C〕バリアブル(可変データ、ONE to ONE対応)印刷が可能
〔D〕無版印刷
〔E〕分散出力可能なシステム構築が可能である

海外ではこれらの特徴を活かし、DMやカタログ、チラシなど様々なものに活用されている。国内でもデジタル印刷機の活用物(印刷物)として大差はない。しかし、国内では印刷会社がオフセット印刷機で頑張る為、〔A〕〔B〕といったにデジタル印刷機の特徴が薄れている。

具体的には、7~8年前は1,000部/JOB程度と言われていたオフセット印刷機とデジタル印刷機のコスト分岐点(デジタル印刷機の方が安くなる分かれ目)が、2~3年前には500部/JOBとなり、現在は300部/JOBという状況である。中には50部/JOBでもオフセット印刷機で対応している印刷会社もいる程である。仮にこのペースで今後も推移した場合、2013年には200部/JOB、2015年には150部/JOB程度が当たり前になる可能性も否定できない。最近では、印刷機メーカーから3種類の200部/JOBという印刷を10分程度でこなせてしまう印刷機が市場投入されており、むしろ、現実味を帯びてきそうだ。

【分岐点】
【分岐点】

矢野経済研究所作成

進化し続けるデジタル印刷機市場の今後の展開は?

印刷の歴史を見ると「高品質」、「生産性」、「採算性」を徹底的に追い求め進化してきたのが、現在の印刷技術である。そしてここにデジタル印刷が登場しても、これらをそうそう手放すはずもないことは容易に想像がつく。ではデジタル印刷機の今後はどうしたらよいのだろうか。

ここで一度、悶々とした気分を忘れてみよう(私だけかもしれないが…)。例えば、当事業部がメインとするITの世界ではどうだろうか?SNSやニコニコ動画などは、本流であるマス的なメディアを脅かしているのが現状であり、この勢いは止まらない。Webの場合、マスメディアとしての役割はしっかり持ちつつ、それとは別に、非マスメディア的な部分が力を持っているからである。「SNSっていまいち信用できない」、「難しそうだから…」などと言っては、ビジネス機会の喪失となる時代なのだ。

ここで、何が言いたかったかというと、印刷会社は印刷会社で本流だが、非印刷企業にこそ道があるのではないかという事である。つまり、成功するデジタル印刷機ビジネスは以下の事などが挙げられる。

(1)オフィス文書に関するサービス(ネット注文、オフィスコンビニ等)
(2)徹底的にPODにこだわったサービス
(3)文書部門のアウトソーシングビジネス
(4)Webや電子書籍とリンクしたサービス

こうした非マス的なビジネスのヒントは弊社レポート【オンデマンド印刷(POD)市場に関する調査結果 2010】を参考にしてほしい。

2012年はdrupa2012が開催される。drupaとは、Druck und Papierの略で4年に一度ドイツで開催される印刷総合見本市であり、各旅行会社からも多くの視察ツアーが組まれるほど盛大な見本市である。1995年はCTP drupa、2000年はDigital drupa、2004年はJDF drupa、そして、前回の2008年はInkjet drupaと称されている。
参入企業はdrupa2012に向け、様々な機器やソリューションを開発しており、来年も様々な機器やソリューションが登場するだろう。この中に、上記のようなサービス/ソリューションが多く登場することを期待したい。

 

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