矢野経済研究所 ICT・金融ユニット

アナリストオピニオン
2011.08.24

日本のICT産業に到来したチャンス

国内スマートフォンの普及は既に第二段階に入っている

スマートフォンの普及が想像以上に急速に進んでいる。国内では、通信キャリアが販売する形態が一般的なため、携帯電話の置き換え市場という見方が自然であるが、実際にはもう少し広い視野で見た方が適切であろう。
国内におけるスマートフォンの普及は、既に第二段階に入っていると考えられるだろう。つまり、これまでのアーリーアダプタ、つまり先進ユーザー中心のマーケットから、多数派のアーリーマジョリティへと拡大してきているのである。そして、この段階で導入するユーザーにとっては、スマホは気の利いた携帯電話であり、通信可能な音楽プレーヤーであり、ゲーム機兼用のメール端末になりつつあるのではないか。つまり、ブームに乗り遅れないよう、とり急ぎスマホに買い換える人が購入者の中心になりつつあり、そういったユーザーにおいては、本来のスマホの特性を活かしきることなく、携帯の代替機としての利用からスタートすることになる。
これらのユーザーにおいては、購入したスマホの使い方に関して、これまでの先進ユーザーのように、必ずしも探究心豊かに自分なりのアプリを捜し求めたり、カスタマイズに多大な時間を費やさない可能性が高い。
従って今後は、同じスマホユーザーでも、従来のケータイ利用から大きく変わらない、あるいは使いにくさから、逆に敬遠を始めるユーザーも出てくる可能性もある。
実際、最近は電車内などでスマホの利用者が激増しているが、失礼ながら利用されている内容を、不自然にならない範囲で覗かせて頂くと、ゲームが圧倒的に多く、占有率40%程度ではないかと推計される。次いでコミックやメール、動画などとなっている状況である。なかなか面白そうなアプリや、ソーシャルメディアと思しき利用者には、お目にかかれなくなってきている。つまり、従来のケータイ利用イメージのまま、スマホに移行してきている人が多くなってきていると想像されるのである。

一方、モバイル系の事業者では、スマホ対応を喫緊の課題として、大急ぎで対応を図っている状況である。多くのケータイコンテンツ事業者は、スマホへの切り替えのタイミングで、他のアプリにチャーンされることなく、そのまま移行してもらい、ユーザーのつなぎとめを図ることに必死の状況である。しかし、そのような競争が進めば進むほど、ケータイ→スマホという安易な市場の置き換えが実現することになる。
スマホの普及をまたとない事業機会であると認識し、新規参入を狙う事業者も無数に存在するだろうが、ケータイ→スマホの図式の中で、新たにユーザーに食い込んでいくことは、相当難しい段階に入ってくるであろうし、折角参入を図っても、新規事業者間での埋没の恐れも大いに高まっているのである。

今しかできないアクションを見逃してはならない

しかし、少しマクロな視点に立つと、我々は今、とてつもなく大きな転換期に差し掛かっていると認識すべきではないか。それは、かつてのインターネットの普及に勝るとも劣らない大きな転換点となる可能性がある。それは、世界中の一人一人が、個人単位で、相互に直接ネットにつながり始めることであり、そういった社会インフラがいつの間にか、自然に整備されつつあるということである。
それは家庭を単位とした、かつてのPCやネットの普及、音声、テキストが主役で、かつ閉じられたネットワークであった携帯電話の普及の世界から、更に次のステップに進むことでもあるのだ。
これらの持つ意味の違いは、中東の革命や中国の鉄道事故の際の現象を見ても明らかである。そして、我々の課題は、この現象をいかに次の社会の発展に活用していくか、という点にある。
今や、数多くの事業者が、従来の自らの事業拡大として、スマホインフラを活用しようともくろんでいる。しかし、これだけのインフラを、単に従来の市場の延長線上に留めておくのは、社会的にも大きな機会の損失であると思われる。この無限の可能性をもったインフラを活用し、今まで不可能であった、新たな社会への脱却を目指すべきであると思われる。
例えば、まず医療分野、教育分野、福祉分野など、ICT化の遅れが目立つ分野への応用が考えられる。また、その意味では中小企業の生産性向上への応用も重要なテーマとなろう。
また、日本人という比較的高いナレッジをもつ国民のネットワーク化による、知識や知恵の集積を、国民全体の生産性の向上に生かすようなビジネスも目指すべきであろう。
また、元来日本人が不得手とし、国際的な弱みになっている語学や外国人とのコミュニケーションにも生かせそうである。
海外の市場も含めて考えれば、今後の普及台数のポテンシャルは、限りなく大きい。わが国としては、この膨大なインフラを想定した起業家への投資など、今しかできないアクションを決して見逃してはならない。ICT分野でずっと後塵を拝してきたアメリカ勢力に対抗、あるいは追い越すチャンスが到来しているともいえるのではないだろうか。

野間 博美(ノマ ヒロミ) 理事研究員
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