矢野経済研究所 ICT・金融ユニット

アナリストオピニオン
2011.03.22

プリンタ市場は今後、どのように発展していくのか?

進化し続けてきたプリンタ技術

いきなりですが、「プリンタ」と聞いて何を思い浮かべますか?

多くの方が、家庭で使用するインクジェットプリンタを想像されるのではないでしょうか。恐らく次いでオフィスにあるような、ページプリンタ(レーザープリンタやLEDプリンタ)でしょう。

印刷機を使わなければならなかったものが、プリンタで手軽に出力出来るようになりました。さらに、プリンタからの出力はドキュメントのプリントに止まらず、インクジェットプリンタでは写真も綺麗にプリントアウトできます。4、5年程前から写真出力の品質も向上し、写真屋さんで出すものと余り変わらないものが出来るようになりました。

プリンタと一口に言っても、多くの種類があります。大きく分けると、電子写真方式とインクジェット方式があります。方式毎に特徴はありますが、プリンタから出力された製品が、身の回りにたくさんあります。例えば、取扱説明書、クレジットカードや携帯電話の請求書や料金明細、ダイレクトメール、通信教育のテキスト、フォトブックなど様々な印刷物があります。これらは主にオンデマンド印刷と呼ばれるものであり、弊社では下記〔A〕~〔E〕のように定義し、市場動向を追いかけている【オンデマンド印刷(POD)市場に関する調査結果 2010】。また、関連レポートとして【2010 POD市場の実態と展望】もあるのでご興味のある方は参考にして欲しい。

〔A〕 少ロット印刷を得意とし、印刷機利用に対してコスト優位性を持つもの
〔B〕 ショートラン(短納期)対応
〔C〕 バリアブル(可変データ、ONE to ONE対応)印刷が可能
〔D〕 無版印刷
〔E〕 分散出力可能なシステム構築が可能である

矢野経済研究所作成

また、先に記したものは全て紙への出力されるものであるが、紙以外の物へのプリントも多々ある。それはフィルムや布などへのプリントである。具体的には、屋外広告、のぼりや横断幕、Tシャツ・ユニフォームやカバンといったものが挙げられる。これらを得意とするのが、大判インクジェットプリンタ(ラージフォーマットプリンタ)と呼ばれるプリンタである。因みにこちらのプリンタについては【2009-2010 プリンタ・プロッタ市場の実態と展望】にて掲載しているので、参考にして欲しい。また、これらのプリンタではパッケージ(お菓子の箱など)やノベルティグッズ(名入れなど)へのプリントが可能である。

インクジェットプリンタの応用技術

インクジェットプリンタでは、非接触で微小な液滴(インク)を必要な量だけ正確に着地させることが可能であるという特長を活かし紙やフィルム以外へのさまざまな実用・研究が行われています。
それらを幾つか紹介しましょう。

●捺染プリンタ
まず、現在の延長に近いところで言えば、捺染プリンタというものがあります。従来、布地に模様をつけるには異なる色で染色した糸を組み合わせる、色付けした糸で布地に刺繍を施すといった方法や布地の部分染めによる捺染などがあった。インクジェットプリンタの技術発達により、布地に直接染料を吹き付けることが可能となり、インクジェットを利用した捺染は、織飾や刺繍では困難であった微細な模様付けが低コストで可能となっている。
●回路基板製造
次に、回路基板製造がある。電気回路基板の回路パターンの生成にはフォトリソグラフが現在も利用されているが、ここにインクジェットの技術を使い、回路上に直接回路パターンを印字することが可能となっている(但し、フォトリソグラフほどの精度はない)。2004年にセイコーエプソンがこの技術を利用して、20層の積層回路基板の開発に成功している。その他、配線や抵抗のパターンだけでなく有機半導体をプリントし、TFT(Thin Film Transistor)を直接形成する技術も開発されている。
●ディスプレイ製造装置
さらに、ディスプレイ製造装置が挙げられる。この装置で生産されるものの一つに、液晶テレビ(LCD)に使われるカラーフィルターがある。LCDはカラーフィルターがなければ映像は映らない重要なパーツである。このカラーフィルターではBM(ブラックマトリックス)と呼ばれる土手の中に赤・緑・青(シャープのLCDでは黄も追加されている)のインクを塗布している。そして、ディスプレイでは他にも、有機ELディスプレイなどが挙げられる。
●DNAチップ
バイオテクノロジーの分野では、オーダーメイド医療に活用されるDNAチップが挙げられる。具体的には、DNAを溶かした溶液をインクジェットプリンタから検査試薬を塗布したDNAチップへ吹き付ける方法である。また、バイオ・プリンティングというのもある。これは、インクジェット液滴のサイズ(正確にはノズルの径)と細胞のサイズがほぼ同じである事に着目した研究分野であり、細胞を積層させ、組織を形成するというものである。現在はまだまだ研究段階であるが、将来は人体の各組織を生成し、医療の現場で役立つ日が来るかもしれない。もう少し早く実現しそうなところで言えば、セラミックを塗布することによる人工骨が挙げられる。

上記以外にも、インクジェットは印刷物に接触せずに印刷が可能であることから紙以外の素材や立体物への印刷も模索されている。この様にプリンタは様々なものを印刷する事が可能であり、もう10年も経つと、さらに多種多様な用途が出てきていることだろう。もしかしたら、プリンタのスイッチを入れると、プリンタからテレビが出てくる時代も来るかもしれない。

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