近年、Twitter、Facebookといった新たなソーシャルメディアが台頭してきている。こうした新たなコミュニケーションメディアは、その情報の伝播の早さが特徴であるといえよう。従来型のメディアはそれがネット中心のものであっても、伝わり方にはいくらかの時間の緩やかさがあった。例えば、掲示板やブログは、書き込みから情報の伝播までには一定の時間を要し、何らかの合意が形成されるには、一定の時間を要したといえる。その意味では、まだストック型のコミュニケーションメディアであったといえるのではないか。
しかし、人々のネットへの参加率や依存度が高まるにつれ、より即時性が求められるようになり、ほぼリアルタイムのメディアに中心が移ってきているようだ。つまり、ネットコミュニケーションは、ストック型からフロー型へと、その性質を変えつつあるといえるのである。
この結果、チュニジアやエジプトのように、瞬時に国民間でのコンセンサスが出来上がり、独裁国家の転覆に至るような事態までが起きるようになって来ているのである。
しかし、このネットコミュニケーションメディアは、それを利用しているだけのつもりでいる我々個人にとっても、大いに注意が必要な存在となりつつある。
先日、一流ホテルの飲食店のアルバイト従業員が、サッカー選手と芸能人が来店していることをTwitterで発信し、大いに話題となった。しかし、注目されるのはその先の話で、ひとしきりサッカー選手の話題が広がった後に、そのつぶやいた従業員へとネットの関心は移ったのである。つまり、その従業員を特定できる個人情報が出回るようになり、個人の特定のみならず、そのプライベートな情報までもが大いに公開されることとなったという。今や、芸能記者のルーティンの仕事に芸能人のブログやツイートのチェックがあるとされるが、ネット社会における有名人は、必ずしも芸能人だけではないのである。
また、今年の始めには、GROUPONを利用したおせち料理が話題になった。ネットを利用して大量の注文を受けたのは良かったが、その注文をこなすことができず、品質の著しく劣る商品を提供することとなった問題である。
恐らく、業者にしてみれば、容易にネットビジネスに参入してみたものの、その圧倒的な効果に体制が追いつかなかったことが原因となったのであろう。
しかし、ネット型サービスの特徴として、そうした企業の失敗は瞬く間に伝播し、かつそこには画像という極めてリアルな情報も含まれていたため、その情報は信憑性も十分なものであった。
ネット社会に不慣れであったことには、同情の余地を感じなくはない。しかし、そこではそのような曖昧な配慮は一切存在せず、結果的に徹底的に業者を糾弾することとなった。ネット社会の怖さの典型的な例であろう。
ネット型のビジネスで成功している企業の多くは、その強みをネット以外の部分に有していると言える。
例えば、飲食店の予約サイトとして成功している「ぐるなび」は、広告を集めることが出来る最大の要因を、飲食店のコンサルティングにあると考えているという。飲食店のメニュー開発や経営管理などの面で信頼を獲得し、結果としてサイトへの広告を出してもらえるというビジネスモデルである。
こうした側面は、多くのネットビジネスに見られる傾向である。つまり、ネットビジネスという形は取っているが、最終的には、ビジネスを行うのは人であり、人と人の信頼関係がそのビジネスの成功要因になっているのである。
今後、急速に広がるネット型の社会で生きていくためには、その気軽さを軽視するのではなく、今まで以上に慎重に行動することが求められよう。また、高い人間性を追及し、真摯な態度で向き合わなければ、むしろメリットよりもリスクの方が高まっていくのかも知れない。
(野間博美)
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