矢野経済研究所 ICT・金融ユニット

アナリストオピニオン
2011.01.18

変化するネットマーケティング事情

EC(電子商取引)展開企業の重視する売上拡大施策が変化

EC(電子商取引)サイトにおいて重視されている売上拡大施策は年々変わりつつある。
2010年6月に主要EC(電子商取引)サイト向けに実施したアンケート調査では、重視する売上拡大施策は「サイトへの集客」から「サイト内での施策」へシフトしていることが窺われる結果となった。アンケート集計結果において現状と、3年前に重視していた施策を比較した場合、顕著な変化が見られた。

【図表】最も重視している売上拡大施策(単回答)
最も重視している売上拡大施策(単回答)

矢野経済研究所作成
注:集計対象はECサイト展開企業
注:現在の回答数は97社、3年前の回答数は94社(無効回答を除く)、いずれも単数回答

「サイト内での施策」を重視する企業の比率が3年前に比べて20.2ポイント多く、「既存顧客に対する施策」を重視する企業の比率は12.9ポイント多かった。その一方で、「サイトへの集客」を重視する企業の比率が33.1ポイント少なかった。
つまり、多くのEC(電子商取引)サイト展開企業において、以前は「とにかくサイトへ来てもらうこと」が強く意識されていたものが、現在では「サイト訪問者にとにかく買ってもらうこと」に意識が移り変わりつつある。
 

サイト内施策が重視されることで、ネットマーケティングツール利用が加速

ネットマーケティング関連ツールを大きく分類すると、アクセス解析ツール、ネット視聴率調査、クチコミ分析ツール等の「分析系ツール」と、レコメンドエンジン、自動入札ツール、LPOツール、EFOツール、サイト内検索エンジン等の「最適化ツール」と、「メール配信システム」の3つに分けられる。
既述のようにサイト内での施策に注力する企業が増加しているため、「分析系ツール」、「最適化ツール」、「メール配信システム」の全てのツールにおいて市場は拡大している。

【図表】ネットマーケティング関連ツール総市場規模推移
ネットマーケティング関連ツール総市場規模推移

ネットマーケティング関連ツール総市場規模推移

矢野経済研究所作成
注:ツール市場規模に関しては、自社開発ツールやサイト構築パッケージの一機能として提供されているケースは除き単独のツールとして提供される製品のみを対象とした。
注:上記アクセス解析ツール市場規模には広告効果測定ツール市場規模を含む。

中でも特に伸張しているツールとして「最適化ツール」が挙げられる。
「最適化ツール」の市場規模は2009年度には50億6,200万円(対前年度比135.3%)に達し大きく伸張している。「最適化ツール」は分析結果を施策に反映する部分を担う。そのため、ツールの導入が即売上に直結しやすく、ツール導入後に得られる効果も高い。この様な状況により、ツール導入企業は大きく増加し、市場は拡大している。
一方、「分析系ツール」の市場規模は2009年度に84億8,500万円(対前年度比103.2%)に達し、伸張しているものの微増に留まっている状況である。「分析系ツール」に関してはツールにより得られたデータを如何に分析するかといった取組がツールを有効に活用するためには重要である。しかし、同市場においては十分なノウハウを保有したアナリストが不足しているといった課題があることなどから、ツール導入企業の急激な増加には至っていないものと見られる。
古くから提供されている「メール配信システム」に関しては、近年レコメンドエンジンと連携したレコメンドメール等、新たな製品/サービスの提供が開始されている。これにより、よりメール受信者の嗜好に合ったパーソナライズ化されたメール配信が可能となるため、One to Oneマーケティングの実施を図る企業等への導入が進展している。メール配信システム市場規模は2009年度に59億6,000万円(対前年度比108.8%)に達したと見られる。

ネットマーケティングの自動化が進展

企業のネットマーケティングツールへのニーズが強まる中、ツールを利用する際に発生する人的オペレーションの負担等の課題も存在している。
例えば、アクセス解析ツールとLPOツールを利用する場合、担当者はアクセス解析ツールで得られたデータに基づき、LPOツールで実施する施策等を考える必要がある。
また、LPOツールを単独で利用する際にも、クリエイティブ等の制作は担当者が作成しなければならないケースが多い。

上記の様な課題を解決すべく、近年ツールにおいて新機能の提供やツール連携によりマーケティングの自動化が進展している。
新機能の事例として、ツールによるページやクリエイティブの自動生成機能や、A/Bテスト等を自動的に実施する自動分析機能等が挙げられる。
また、ツール同士の連携の事例として、ツール間のデータの受け渡しの自動化や、「分析系ツール」で分析した結果を自動的に「最適化ツール」でサイト施策に反映する取組等が挙げられる。

この様な新機能の提供やツール同士の連携によりマーケティングの自動化が進展し、ツール利用で得られる効果の向上やツール利用企業のオペレーション負担の軽減が可能となる。これにより、各ツールベンダは既存顧客への満足度の向上や、新規顧客の獲得を目指している。

ツール同士の自動連携等のネットマーケティングの自動化が進展すれば、効果測定から施策実施までの期間の短縮化や、測定で得られたデータを忠実に施策に反映することなどが可能となる。つまり、これまでのようにツールをアナログで利用するケースと比較した場合、全オペレーションの作業効率に加え、施策実施におけるリアルタイム性や正確さが大きく向上する。
例えば、ウェブサイトにおいて、過去の行動履歴等に基づき同じユーザーでもサイト訪問の都度表示コンテンツが変わるなど、各訪問ユーザーにとって訪問時点の最も適切なコンテンツを表示させることが可能となる。

この様に各ベンダがツールの機能強化を図る一方で、ユーザー企業であるEC(電子商取引)サイト等のウェブサイトにおいては、ツールをどんどん活用し要望をベンダにぶつける事が、ネットマーケティングツールが今後より進化を遂げるためには重要であると考える。

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西川 徹(ニシカワ トオル) 専門研究員
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