6月25日、一般社団法人 電子情報技術産業協会(JEITA)との共催で、ITユーザトレンドセミナー2026「AI活用の実態と課題」を開催した。本項では、そのセミナーで語られたポイントについて簡単に振り返る。
なお、ここでの振り返りは、あくまでも筆者がセミナーを聴講した内容をもとに感想を交えて作成しており、細かな表現などは実際と異なる箇所がある点には留意頂きたい。
まず、本セミナーは2部構成で、第一部はJEITA、YRIがAI活用のトレンドや、AI活用までのステップを語り、第二部は実際にAIを活用している中小企業の方にAI活用に至った経緯や活用の実態について話してもらった。
JEITAの講演は前半パートと後半パートに分かれた。前半はITユーザトレンド調査のAIパートを中心にアンケート結果の紹介、後半はAIを活用している企業/団体7件について活用の実態などを紹介した。
参考1:(AIユーザトレンド調査2025)
https://home.jeita.or.jp/it/publications/pdf/publication_202512.pdf
参考2:(AIユーザトレンド調査2025 AI関連事例紹介)
https://home.jeita.or.jp/it/file/jirei0316.pdf
JEITAは講演の最後に、AI・生成AIについては、ひたすら使う文化を作ることが必要だと述べた。最初は間違えたらどうしようという気持ちもあるかもしれないいが、100%の解はでないという割り切りも必要で、最初から完璧を求めるのではなく、まずは使ってみる。また、どう使ったら良いのか、について周りと情報交換をしながらAI・生成AIの活用を継続する仕組みを作っていくことが大切だと締めた。
矢野経済研究所は中小企業がAIを活用し、定着を目指すまでのステップについて言及した。まずは第2段階に到達することが目標になる。
【図表:AI活用3段階の構造比較】
出所:矢野経済研究所
そのために、必要な5つのステップを示した。
【図表:AI導入を成功に導く5つのステップ】
出所:矢野経済研究所
第二部は、ゲストスピーカーによる講演である。
みつわポンプ製作所(従業員数20名程度)におけるAIの活用は、1人のキーマン(非エンジニア)が同社社長に直談判したことから始まった。
同社ではExcelなどでデータを管理していたと言う。しかし海外に販売の拠点を作ったことで、やりとりをするにはクラウドが良い、とローカルにあるデータをクラウドに移行する作業を進めることになった。もともとデータを効率的に使えるよう、マクロも組んでいるが、Excel上に組んだマクロはそのままクラウド上に移行しても、期待するようには動いてくれなかったと言う。ここにAIを活用し、クラウド上でもマクロが上手く機能するようにしている。
また、ポンプの材質などを記録している台帳があると言う。これも従前はローカルで管理していたと言うが、クラウド上でもきちんと使えるよう、Webアプリを構築した。社内でしか確認ができなかったものが外出先でも確認できる、として営業要員からも好評だと言う。
AI・生成AI活用のポイントは、社内を見まわし、AIで遊んでいるような人材がいないか、確認をすることだと言う。そうした人材がいればその人にAIを使える環境を渡し、効率化などに取り組んでもらうことが良い。当該人材は、好奇心を持ってAIの情報を収集し、AIを使っていくのではないだろうか。同社はそれを期待している。
AI・生成AIの活用を進めていくためには、AIを使うことに対する好奇心を持った人材、ならびにそうした人物に自社が抱える課題の解消に向けてAIを使わせること、と言えそうである。
フライスターではユーザックシステムの受注AIエージェントを利用している。同社では月間約15,000件(日にちベースでは750件)の受注業務をこなしている。従来は、届いたFAXによる注文を、全国4カ所、11名でシステムに手入力していた。求められるスピードは、1枚あたりおよそ30秒程度で、熟練者を中心に個人の能力に依存している状態であったと言う。またミスの許されない内容であることなどから入力者に心的ストレスもかかっている状態であっただろうと同社は言う。同社では、この課題を改善していきたいと考え、受注AIエージェントを採用した。
導入するにあたっては、AIを導入するというところではなく、業務を改善するというところに主眼を置いた。ミスを撲滅するという施策のひとつにAIがあった、というのが、従業員が受注エージェントを受け入れやすくなったポイントである。
「これを使ってください」ではなく、入力者がプロンプトを書くというのも自身でやったことが結果につながる点で良かった、と同社は言う。受注エージェントを利用すると、作業負担が軽減し、入力ミスも減るので、入力者たちの意識も変わっていった。ある程度対象者を絞って効果を実感させたことも良かったと振り返る(一部に手入力も残した)。同社では、1人でプロンプトを書かせることはせず、何人かが集まってプロンプトを書き、おかしいな、など言いあいながら結果を導き出しているという。最初は難しい言葉を使いたくなるが、新入社員に伝えるような言葉で書くことが良い結果につながっているようである。
課題の解決、および従業員目線での導入がAIの活用定着につながったと言える。
同社では、検査の帳票や報告書など、紙が現場に散見されたという。図面など、必要な時に皆で1時間も2時間も探すのは無駄だなと感じた。この課題の解消がAI活用にいたるきっかけのひとつである。
最初は無償で使えるノーコード/ローコードツールを使ってアプリ開発を始めたというが、限界もあり、当時話題になっていた生成AIを活用し始めた。今では現場での使いやすさを追求した従業員全員がアクセスできるプラットフォームができるまでになっている。同社ではキーマンがアプリのたたき台を作り、現場で利用、改善案が上がり、それを修正して最適化しているという。
また特徴的な使い方が手順書を現場で作ったあと、その手順書をAIに評価させる取り組みである。社内では70点以上の手順書を目標にしており、各々がAIのアドバイスも踏まえ、手順書をブラッシュアップし、それなりの品質のものを作っているという。点数は、1点につき25円、100点で2,500円が会社から支払われるという報奨金制度もある。会社と従業員がWin-Winになれる仕組みである。
さらに同社では、さまざまなことをデータとして蓄積しているという。例えば加工に関わる標準時間の把握などがその一例である。使えるデータを持っていることが、将来、さらにAIが進化したときの資産になっていくとみてのことである。
1人でも良いので、社内にAIを使い、アプリをどんどん作れる人材がいるかが競争力の差になっていく可能性がある。
JEITAでは毎年CEATECでオンラインセミナーを行っている。今年の開催はCEATEC 2026 公式Webサイト内で9月15日(火)以降に配信予定である。現時点でどのような講演が行われるかは未定だが、今後もITトレンドを発信していく意向である。
(小山博子)
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