矢野経済研究所 ICT・金融ユニット

アナリストオピニオン
2010.08.02

カード決済の更なる普及に対し、ICT業界が貢献できること

消費者の支払手段/EC事業者の代金回収方法

2010年6月に経済産業省が発表した「平成21年 消費者向け電子商取引実態調査」によると、消費者が購入時に選択した決済方法としてはクレジットカードが44%を占めている。この調査は消費者向け電子商取引を行う事業者(=BtoC EC事業者、以下EC事業者と表記)を対象としており、上掲の構成比は決済方法別の年間売上高をベースに算出されている。クレジットカードに代金引換や銀行振込・郵便為替が続く構図は、EC(電子商取引)サイト構築事業者や決済サービス事業者など、ECのインフラに関わる企業の感覚と概ね同様ではないかと考えられる。

【図1:消費者の決済方法別構成比】
消費者の決済方法別構成比

(出所:経済産業省「平成21年 消費者向け電子商取引実態調査」)

一方、社団法人日本通信販売協会が実施している調査(全国通信販売利用実態調査、通信販売企業実態調査)によると、通信販売利用者の代金支払い手段や通販企業の代金回収方法で最も多いのは代金引換であり、コンビニエンスストアが続いている。クレジットカードは、消費者の支払手段では3位であるが、通販企業の回収方法としては郵便振替に次ぐ4位となっている。
これらの結果は通販全体を対象としたものであり、カタログ通販などの状況も反映していることになるが、代金引換はEC(電子商取引)事業者にとっても軽視できない代金回収方法である。EC(電子商取引)事業者を対象として弊社が実施した調査において、対応している代金回収方法としてはクレジットカードと代金引換がそれぞれ90%程度を占めており、これら二者はほぼ標準装備といった状態である。この調査結果は回答件数をベースにしたものであり、金額ベースで示されている消費者の決済方法別構成比とは単純に比較できないものの、代金引換に対する備えは相対的に厚くなっている感がある。

【図2:EC事業者(決済サービス利用)が対応している代金回収方法】
EC事業者(決済サービス利用)が対応している代金回収方法

(出所:矢野経済研究所「ECサイト構築市場の動向とユーザニーズ 2010」)

「ショッピングはバーチャル、決済はリアル」という消費行動も

現金以外の決済に対応していない小規模小売店や飲食店などを除けば、私はクレジットカードや電子マネーを支払手段としている。「銀行口座から現金を引き出し、財布を介して支払いを行う」という過程が無駄であると考えており、極力キャッシュレスで済ませたいからである。従って、スーパーマーケットで食料品を購入するような、比較的少額の決済でもカード払いである。
こうした考え方は日本国内では多数派ではないようであり、現金払いの人々が続いてレジの待ち時間が長くなることもしばしばである(私が利用するスーパーではカード利用で5%引きになる日が設定されているようであり、入会キャンペーンも積極的に行っているように見えるのだが)。極めて大雑把なイメージではあるが、個人消費に占めるカードショッピング取扱高の構成比は十数%であることを想起すれば、それは必然ということになる。
対面決済でクレジットカードが利用されないことについては、習慣的な側面も考えられるが、EC(電子商取引)のような非対面決済の場合はセキュリティ面の理由も大きいと言われている。実際、「カード情報の漏洩が心配だからネット通販では使わない」といった声を耳にすることもある。ネットバンクを利用するなど、クレジットカード以外にもオンライン決済の手段はあるのだが、代金引換の手数料を負担することになったり(EC事業者側が手数料を負担する場合もあるが)、支払の為にコンビニへ出向いたりと、あまり合理的とは言えない消費行動も根強く残っているように見受けられる。「ショッピングはバーチャルであるが、決済はリアルで」というのは、セキュリティ意識を覆すだけのインセンティブをバーチャル決済に見出せないからだろうか?

社会的責任、或いはビジネス拡大の視点からの検討を

貸金業法改正によってカード会社のビジネスモデル見直しが迫られる中、「個人消費に占めるカードショッピング取扱高の構成比を30%に」という掛け声もあがっているが、現実的にはカード利用は促進されていない。EC(電子商取引)はカード決済がフィットしやすい分野であると考えられるが、更なる普及に向けては前述のような課題も残されている。そうした状況下、法改正が苦境を招いたことを背景に、行政に対してカード利用促進策を求める向きもあるが、一方では自助努力の必要性を説くカード会社もあり、業界の足並みが揃っているとは言い難い。
このような問題は、ICTベンダにとっては対岸の火事ということになるのであろうが、日常生活がICT無しでは考えられなくなっている時代において、社会のインフラを担うICT業界が積極的に関与していく方向性は検討に値しないのだろうか。また、そこまで大上段に構えなくとも、「バーチャルの世界を強化し、リアルからの移行を促す」という視点から世の動きを再点検し、ICTのビジネス拡大に繋げることを検討しても良いのではないだろうか。

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坂田 康一(サカタ コウイチ) 専門研究員
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