矢野経済研究所 ICT・金融ユニット

アナリストオピニオン
2023.03.13

奪われるインターネットの信頼と再生を促すWeb3

新しいデジタル空間は未開の新大陸か

Web3.0、メタバースというキーワードが注目され、いよいよ“インターネット”を過去のものとしようとする機運を感じるようになった。Web1.0をインターネットとするなら、いまはWeb2.0なのだから既にインターネットは過去のものといえるのかもしれない。しかし、個人的にはWeb3は別モノ感が強く、時代の切れ目は今この瞬間なのではないかと感じている。
Windows95が登場して以来、インターネットは一般大衆にもアクセスできる場となった。私自身が個人でPCを購入したのは96年。ネットスケープナビゲーターを使い、電話回線でアクセスしたのも、もうおおよそ30年前のことになっている。世代とは概ね30年を指すというが、まさに時代の変わり目の真っただ中にいるということなのだろう。

真正性の重要度が高まる

話は変わるが、最近、子供にせがまれて某社の高性能ゲーム機を購入した。私はほとんどゲームをしないのだが、子供が遊ぶ画面をみて、その画質の美しさには驚かされた。子供はサッカーゲームを好んで遊んでいるのだが、隣で見ていると、あたかも本物の日本代表戦を見ているかのような気分になることがある。そのときは、操作しているのは子供なのだが、すっかり日本代表の選手がゴールを決めたような目線で眺めていたのだ。画像がリアルであることの意義、意味を思い知った瞬間でもあった。
目に映ることがリアルではなくて実はバーチャルだったなどという話は、SF映画の世界での出来事だった。しかし、その未来の一端が、このゲーム画面に映し出されている。いまはそういう時代なのだ。

データ駆動型社会に潜む危険性

リアル/バーチャルといえば、それはSF的な響きもあってどこか心地よい、知的興奮のようなものを感じさせるワードである。しかし実際の社会では、“本物かフェイクか”という問題となろう。そこにあるのは明確な悪意であり、バーチャルをリアルに感じたなどという素朴な感想を言ってる場合ではない。フェイクは排除されなければならない問題であり、その有害性は今後、ますます強まるだろう。
背景にあるのは今後到来するデータ駆動型社会である。データ駆動型社会とは、インプットされるデータに応じてAIなどが判断して次のアクションへとつないでいくような社会である。A社が流すデータを受け取ったB社が、人間を介在させずに判断し、アウトプットを変えるような社会である。つまり、システムを乗っ取らなくても、悪意あるフェイク(偽物)データを流すことで、悪いアクションを引き起こすことができるようになってしまう懸念があるということだ。
そのためにブロックチェーン技術などを使った真正性の証明に期待が寄せられるし、それらが中心的な技術になるのも必然であろうと考える。
こうして考えると、Web2.0で起きたのはインターネットの信頼の毀損であり、Web3がもたらすのはその再生なのかもしれない。

忌部佳史

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忌部 佳史(インベ ヨシフミ) 理事研究員
市場環境は大胆に変化しています。その変化にどう対応していくか、何をマーケティングの課題とすべきか、企業により選択は様々です。技術動向、経済情勢など俯瞰した視野と現場の生の声に耳を傾け、未来を示していけるよう挑んでいきます。

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