矢野経済研究所 ICT・金融ユニット

アナリストオピニオン
2022.08.17

コロナ禍で厳しさを増すデジタルカメラに思うこと。

市場縮小が止まらないデジタルカメラ市場

昨今、最も驚いたのはデジタルカメラ市場における出荷台数統計である。コロナ禍の2020年の出荷台数は2018年実績の半分以下に落ち込み、2021年についても引き続き低迷しているのである。昨今人気となっていたミラーレスカメラも例外ではなく、出荷台数は半減している。中でも写真愛好家やプロ向けである一眼レフカメラの出荷台数は激減し、2021年は8万2,000台にまで減少した。先日、大手メーカーの新製品開発停止が報道されたが、現状は否定するのが難しいほど、厳しさを増している状態である。

2020年はCOVID-19環境下に於いて生産ラインが長期的にストップしたことに加え、世界的に旅行需要が減退したことが大きく影響したことが大きく影響している。

2021年についても前年の状況を引き継いだことに加え、世界的な半導体・部品の供給不足といったサプライチェーンの影響が加わっており、状況は更に厳しさを増しているのは理解できる。

【図表:日本市場 デジタルカメラ出荷台数実績】

【図表:日本市場 デジタルカメラ出荷台数実績】

出典:CIPA デジタルビデオカメラ:JEITA

スマートフォンが現在のカメラ市場における主役?

しかし、デジタルカメラ市場を減退に追い込んだ張本人であるスマートフォンの出荷台数について、2020年の世界における出荷実績は前年比15%減少であったものの、国内市場について、2019年秋の消費税増税、販売奨励金の大幅な削減があったのにも関わらず、前年実績を大きく上回った。
背景には一部事業者の3G停波による代替需要の特需に加え、大手事業者への値下げ圧力による低価格プランの導入、低価格スマホの需要拡大があったのも確かである。一方で10万円以上する高級スマートフォンの需要も大きく、そうした製品は例外なく、高品質なカメラ機能を搭載しており、依然としてスマートフォンへの旺盛な買い替え需要に支えられていた事が裏付けられた。

昨今、スマートフォンにおけるカメラ性能の向上ぶりは目覚ましく、高画素化が進むと同時に、複数のレンズを搭載し、様々なシーンでの撮影を可能としている。またSNSへの投稿に於ける利便性の高さに加え、撮影・編集アプリの充実により誰でも簡単に撮影画像を修正・編集することも可能になり、多くの消費者にとってスマートフォンで完結することが可能である。

そうした状況をカメラメーカー各社も把握しており、既に各種対策を講じている。具体的にはラインアップを整理し、モデルライフの長い製品企画と高付加価値製品へのシフトを進めるだけでなく、360°カメラへの進出やSNSでの使用を意図した新機軸の製品を導入し市場から高い評価を得たものの、台数での貢献度は限定的である。販売店や業界全体でも水面下では様々な活動やサービスを提供し続け、カメラユーザーを下支えしている。

カメラ市場V字回復への打開策は?

カメラ市場は主に日本メーカーによって占められているものの、これだけ市場が縮小した現在、ビジネスを縮小するメーカーが相次いでも不思議ではない状況に迄、追い込まれている。少なくとも新型コロナウイルスを乗り越え、経済・社会環境が正常化へ向かい、カメラを用いて撮影を行う機会が増えなければカメラの需要が回復する機会は巡ってこない。

スマートフォンでは実現できない、高品質な撮影が可能なデジタルカメラの市場は決して少なくない規模で存在する。一方で行き過ぎたラインアップの整理や事業の縮小によって、消費者の購買意欲を減退させることはあってはならない。
かつて「コンデジ」として隆盛を極めたレンズ一体の市場は現在、見る影もないほどに縮小してしまっている。販売店を覗いてもモデル数は少なく、価格も含めて選択肢は殆ど無い状況となっている。しかし、依然としてレンズ一体型を使用しているユーザーは少なからず居るのも確かで買い替えの受け皿となる製品が無い現状はいかがなものだろうか? メーカーはコンデジの新製品開発を凍結し、旧製品を販売している状況にあるが、アフターコロナ以降を見据えて新製品を開発してみてはどうか?ビジネス面でのリスクは高いかもしれないが、消費者がいざ購入したいと思った時、店頭で購入できる製品が無いのは寂し過ぎるし、先ずは実売価格2万円以内で購入できる使い勝手が良く、スタイリッシュな製品を期待したい。

賀川勝

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賀川 勝(カガワ スグル) 上級研究員
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