矢野経済研究所 ICT・金融ユニット

アナリストオピニオン
2018.09.06

矢野経済流アイデアハック!

アイデアとは

“アイデアとは既存の要素の新しい組み合わせ以外の何ものでもない”

そう定義したのは、ジェームズ・W・ヤングである。1940年に出版されて以来、いまだに売れている『アイデアのつくり方』という本のなかで彼はそう述べている。ずいぶん前に私も読んだのだが、薄い本のなかにアイデア発想の本質が描かれており、今でも印象に残っている。

AIがホワイトカラーの仕事を奪う、などといわれるようになった昨今、人間の創造性を発揮できるアイデア創出は、今まで以上にその重要性が高まっている。

それは弊社でも同様だ。マーケットが日々激しく変化するなか、冷静な観察力と大胆な発想が、新たな分析の視点を与えてくれる。顧客へ伝えるインサイトも、アイデア創出抜きに提供できるものではない。

アイデア創出のフレームワーク

弊社には、未来企画室という部署があり、クライアント企業のアイデア創出会議をファシリテーションしたり、『アイデア発想法16 どんなとき、どの方法を使うか』を発刊するなど、アイデア創出を支援している。
先日、そのメンバーから話を聞く機会があったので、その内容を簡単に紹介したい。

さて、アイデア発想法といえば、何を思い浮かべるだろうか。最も有名で多用されるのは、間違いなく、ブレスト(ブレーンストーミング)であろう。正規のルールに基づかなくとも、「とりあえずブレスト風にアイデアを言っていこうか」というような会議に参加した経験は、多くの人があるだろう。

ところが聞くと、ブレスト以外にも多数のアイデア発想法があり、それぞれ、“お似合いの場面”というのがあるという。 「まったくのノーアイデアのときは、ブレーンストーミング」「誰(ターゲット)向けのものかが確定しているなかでアイデア創出する場合はマトリックス法」などのように、どのような場面において、どのような方法が適しているのか、使い方のコツがある。

それぞれ詳細は、先ほど紹介した書籍や、矢野経済研究所 未来創造のホームページに記載されているので、そちらを見てほしい。ここでは、簡単に場面とそれに対応するアイデア創出のフレームワーク名を抜粋しておく。

矢野経済研究所作成

アイデア創出で大事なのは、その前提

未来企画室メンバーの話を聞いていて、なかでも、なるほどと思ったのが、アイデア発想にはその前提が大切、というものである。
言い方を変えると、上記では「場面」と「フレームワーク」をさらっと対応させているが、実はフレームワークそのものより、場面を絞り込むことの方が大切というのである。

例えば、他社の新サービスを羨ましく眺め、「当社もああいう新しいものを考えないといけないよな。よし、みんなを集めて新サービス検討のブレストでもするか」と安易に会議を開いてしまうことはないだろうか。

見たこともないようなアイデアを、それほどの期待もなく求めるならば、そうした会議も無駄ではないかもしれない。しかし現実には、役に立たない、散漫としたアイデアがいくつかでるだけで、時間を無駄にすることになる。

これは明らかに前提条件や場面の練り込み不足である。特に一人ではなく、集団でアイデアを出し合う場合は、共通認識をいかに構築するかが無駄な時間の節約に直結する。 例えば「顧客からA、B、Cというクレームが来ている。これらをヒントに何か売れそうな新サービスはないだろうか」と投げかければ、具体的でビジネスに直結するアイデアが生まれやすくなる。

言われてみれば当然のことなのだが、アイデアが不足しているときは、ついついアイデアそのものに目を奪われがちだ。一歩引いて、考えださねばならないアイデアの周りにある前提条件を整理することが、アイデア創出の近道となる。

さきほどの“A,B,Cのクレーム・・・”でいえば、投げかければ、必ず誰かが、「そもそも、そのクレームが発生する原因はなに?」というような発言をする。それにこたえるように、真因の見極めや、そのクレームによる顧客側のデメリットの明確化などへと話題が展開することだろう。
そうして議論を深め、では、それを解決するための新しいアイデアはないか、というところまで課題を追い込めると、具体的で展開可能なアイデアが醸成しやすい。

弊社がマーケットリサーチにおいて最重要としているのが、業界関係者等へのインタビューである。それは、机上の空論ではなく、事実を理解してマーケットの実態と未来を描き出すためである。アイデア創出も同様であり、無から有を生み出すことはできないし、間違った前提条件から意義あるアイデアは生まれない。

未来を考えるには、まずは、事実を見極めることこそが重要なのだと改めて感じた次第である。

忌部佳史

忌部 佳史(インベ ヨシフミ) 理事研究員
市場環境は大胆に変化しています。その変化にどう対応していくか、何をマーケティングの課題とすべきか、企業により選択は様々です。技術動向、経済情勢など俯瞰した視野と現場の生の声に耳を傾け、未来を示していけるよう挑んでいきます。

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