矢野経済研究所 ICT・金融ユニット

アナリストオピニオン
2018.08.23

スマートフォン搭載インターフェイスの大きな変化と意味するもの

弊社では2018年7月に市場調査資料「2018-2019スマートフォン連携サービス・機器・NFC市場展望」を発刊した。資料内から直近のスマートフォン市場で起こっている事象の一部を纏めてみた。

スマートフォンからの除外が進む3.5mmジャック

最近イヤホン・ヘッドホンの接続端子として利用されてきた3.5mmフォーンジャック/プラグ(ミニジャック/プラグ)を搭載しないスマートフォン製品が増加している。契機となったのは2016年9月に発売された(米)Apple「iPhone7」「iPhone7Plus」で、同製品はLightningコネクタに一本化された事で、従来型のイヤホン・ヘッドホンを使用する際には変換アダプタの使用が求められた。その後、Android OSを搭載するスマートフォンにも3.5mmフォーンジャック/プラグを搭載しない製品が増加している。

3.5mmフォーンジャック/プラグを廃止する動きが広まった理由は下記が挙げられる。

①スマートフォンの実装密度が進む中、レガシィインターフェイスとなる3.5mmフォーンジャック(メス)を搭載する事が無駄になってきた。
②特にAppleに言える事だが、Lightningコネクタに一本化する事で対応イヤフォン(Lightningコネクタ対応)を製造するサードパーティからライセンス料を徴収できる。
③Bluetoothのオーディオプロファイルの高度化によりワイヤレス接続方式のイヤホン・ヘッドホンの音質が急速に向上したこと。
④3.5mmフォーンジャック/プラグは接触不良のトラブルが起こりやすいこと。
⑤microUSBからUSB Type-C端子への置き換えが進む。

特に⑤USB Type-C端子への置き換えが顕著で、同端子は

  • 裏表の指向性が無くどちらからも挿せ、且つ信頼性が高い
  • 充電時間短縮
  • データ転送の高速化
  • キャップレス防水・防塵対応(一部)

といった特徴がある。

一方でコスト高といった課題を抱えているが、(米)600ドル以上の高価格帯製品では採用モデルが増加傾向にあり、今後普及が進む事でコスト低減が進む可能性が高い。

また、③Bluetooth対応のワイヤレス製品は高音質対応が進むと同時に低価格化が進んだ。また、接続性や充電環境の改善が進んでおり、気軽に利用できるようになったことが大きい。
スマートフォンに搭載されるインターフェイスは集約化が進み、物理的に外部機器・アクセサリに接続する端子はUSB(microUSB、USB Type-C)に集約化されつつある。AppleのLightningコネクタについてもUSB Type-Cに置き換わる噂も出ている。

現状では3.5mmフォーンジャック/プラグの全てが置き換わる状況にはないものの、今後コストダウンが急速に進めば、(米)400ドル以下のミドルエンド以下に瞬く間に普及する可能性は否定できない。また他の機器に於いて3.5mmフォーンジャック/プラグを廃止する動きは出ていないものの、薄型TV、オーディオ機器にもUSB搭載は進んでおり、いずれ3.5mmフォーンジャック/プラグ端子は淘汰が進む事になるかもしれない。

【図表:スマートフォン搭載 主要インターフェイスの搭載動向】

スマートフォン搭載 主要インターフェイスの搭載動向

矢野経済研究所推計
出典:2018-2019スマートフォン連携サービス・機器・NFC市場展望
※USBに関してApple「Lightningコネクタ」がUSB Type-Cに統合される仮定した数値

急速に普及が進むワイヤレス給電(充電)

スマートフォンに搭載されるインターフェイスは集約化が進む半面、急速に普及が進むインターフェイスも存在する。その代表格がワイヤレス給電(充電)規格「Qi」(チー)である。
無線給電の技術は結構古くから実用化されていたものの、規格統一されたのは2008年にWPC(Wireless Power Consortium)設立以降である。他にも幾つかの業界団体が存在したものの、現在はWPCに一本化されており、2017年9月時点で半導体、自動車、携帯電話メーカー等244社が参画している。
日本では2012年から2013年に掛けて一度NTTドコモが推進したが普及が進まなかった為、手を引いている。その後トヨタ自動車の一部乗用車にQi対応充電器が装備された関係もありKDDIから発売される製品の一部に搭載され続けた。

海外では(米)Googleのスマートフォン、タブレット「NEXUS」シリーズや(韓)サムスン電子「Galaxy6 edge」以降の同シリーズ製品等、メジャーな製品に搭載されていた。状況が大きく変化したのは3.5mmフォーンジャック/プラグのケースと同様、Appleで2017年9月に発売された「iPhone8」「iPhone8Plus」「iPhoneⅩ」の存在である。前述のサムスン「Galaxy」と併せて世界のトップ2メーカーが揃って採用した結果、他のメーカーもQi搭載を始めている。Qiのメリットとして

  • 充電コネクタに接続しないで充電可能
  • コネクタ破損の心配がない

といった点が挙げられる一方、

  • 充電中のスマートフォン使用は出来ない
  • 使用条件が厳しく、位置をしっかり合わせる必要やケース・ジャケットを装着したままの充電が出来ないケースがある。
  • 充電時間がケーブル接続より掛かる
  • 価格が高価

といった欠点も持ち合わせている。但し自動車内で使用する場合、これら欠点の一部は問題とならないケースもあり、自動車での普及が先行する可能性がある。

 

今後、規格見直しや仕様変更によって改善が進む可能性は高く、サードパーティからも製品が出始めており、今後低価格化が進む可能性も高い。

依然としてAppleの影響力は大きいが、厳しい開発競争に晒されている。

Appleの世界シェアは現在15%前後で、シェア2位を維持している。一方で中国、インド市場での苦戦が顕在化し、特に中国メーカーの追い上げに晒されている。近年Appleはデバイス、インターフェイス関係の業界団体に相次いで加盟しており、独自性は維持しつつも自社のプレゼンスを落とさない範囲で業界標準を採用する事で孤立化しない戦略を採っている様である。前述のLightningコネクタ廃止の噂についてもその一環ではないかと推察される。

サムスン電子に関してもグループ企業の半導体ビジネスを積極的に活用する事で高い競争力を獲得してきたが、中国メーカーの一部もそれに倣い始めている。特に華為技術(ファーウェイ)は膨大な研究開発予算を投じて独自CPUを開発し、現在はAI分野で先行し始めている。今後AIは勿論の事、カメラ開発、VR/AR、自動車連携等様々な分野で競争が繰り広げられるのは間違いなく、インターフェイス採用一つとっても業界トレンドからの逸脱や搭載タイミングの出遅れはメーカーにとっての致命傷になると言える。

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賀川 勝(カガワ スグル) 上級研究員
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