矢野経済研究所 ICT・金融ユニット

アナリストオピニオン
2018.06.18

働き方改革を支えるインターネット環境の選定において重視すべきポイント

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01 働き方改革などを背景に、クラウドの利用率が50%を超える一方、新たな課題も

近年、業界を問わずに多くの企業が働き方改革の一環として、働く場所の制約を取り払うべく、Web会議システムやグループウェア、ファイル共有サービスなどのクラウドサービスを積極的に活用している。
経済産業省が毎年実施している「情報処理実態調査」の平成28年調査によると、平成27年度のクラウド・コンピューティング利用率は54.2%と半数を超える結果となった。平成21年度の調査以降、毎年度最高記録を更新し続けており、クラウドサービスは急速に普及し続けている。
グローバルでも、クラウドサービスの市場規模は二桁成長を続けており、国内のクラウド・コンピューティングの利用率は引き続き堅調に伸びていくことが期待されている。

 

【図表1:クラウド・コンピューティングの利用率】

 

※平成26年度調査は未実施 ●出典:経済産業省、「平成28年 情報処理実態調査」より抜粋

 

急速に普及しているクラウドサービスだが、導入企業では次のような課題が発生している。

 

【図表2:クラウドサービス導入後の課題・被害】

このようなユーザー企業が抱えるクラウドに関わる課題を解決し、クラウドサービスが持つメリットを享受するためには、インフラとなるインターネット接続回線の選定が重要になる。
具体的には、課題①に対しては「通信速度の速い回線」、課題②に対しては「可用性が担保された安定性の高い回線」、課題③に対しては「安全性の高い回線」を利用することがそれぞれ重要と考える。
そのため、本レポートでは、次項から各々の選定ポイントについて述べる。

02 課題①:トラフィック量の増大によるレスポンスの遅延

「通信速度の速い回線」の選定ポイント
クラウド上でのトラフィック量が増大した結果、業務ソフトなどを利用する際に、操作が重くなり、レスポンスの遅延が生じることがある。そのような課題に対するインフラの基本能力を比較するために、インターネット接続回線の3つの指標に関する比較結果を見てみたい。
この調査では、クラウドアプリケーション利用時のスループットをみるために「①通信速度」を比較対象としている。また、往復の遅延時間(RTT)が短くなるほど、高いスループットが期待できるため「②RTTの測定」を行っている。そして大容量のファイルを受け渡す際に、ファイル転送がストレスなく使えるかを比較するために「③容量1GBのファイル転送時間」を比較している。それぞれの結果について、最適な数値に色が付いている。
この結果を見てわかる通り、クラウドサービスの応答速度はインターネット接続回線によって大きく異なる。クラウドサービスの活用に際しては、クラウド上でトラフィック量が増大した際にも応答速度が維持できる回線を選定することが重要であることがわかる。

 

【図表3:速度測定サイトによるスループット比較】

図表3:速度測定サイトによるスループット比較

※測定条件:比較数値は、回線ごとに朝(9:00~10:00)、昼(13:00~14:00)、夕(17:30~18:30)の時間帯に測定した平均値。

 

【図表4:pingコマンド実行によるRTTの測定比較】

図表4:pingコマンド実行によるRTTの測定比較

※測定条件:各クラウドサービス(AWS、Azure、Office365、G Suite、サイボウズ)にpingコマンドを実行し、RTTを4回測定した結果の平均値

 

【図表5:1GBのファイル転送時間における比較】

図表5:1GBのファイル転送時間における比較

※容量1GBのファイルを各々のクラウドサービスに3回アップロード/ダウンロードした場合における転送時間の平均値
※アルテリア・ネットワークス株式会社が持っている光ファイバーサービスには、「ARTERIA光」と「UCOM光」があるが、スペックが同等のため「ARTERIA光」にて検証
※<図表3~5>の測定事業者:アルテリア・ネットワークス株式会社

03 課題②:不安定な通信

「可用性が担保された安定性の高い回線」の選定ポイント
クラウド化した基幹システムなどのネットワークが途切れたり、システムがダウンしてしまうと、ビジネスに多大な影響を与えることになる。そこで本項では回線提供事業者が安定性の高い回線を提供するために取り組んでいる工夫について触れたい。まず「回線の提供方法」には、大きく分けて「専有型」と「共有型」がある。「専有型」は1社に1本を直収で敷設することや状態を常時監視していることなどから、複数ユーザーが回線をシェアする「共有型」と比較するとコスト面では若干割高となる。しかし、各社の利用状況に応じて、トラフィックのコントロールや増設を柔軟に行うなど、一定の品質を維持、提供することが可能であり、輻輳を回避することが可能となっている。
一方、「共有型」は、線を分岐する分、コストを安く抑えられるものの、近年のトラフィック量の増加に対して許容量が追い付かず、速度低下が生じる可能性がある。
また、「輻輳の可能性」について、「共有型」の場合には、スプリッタの分配ポイントなどで輻輳が生じる可能性がある。一方、「専有型」は輻輳ポイントがなく安定した回線を提供できると考えられる。
このように安定性を重視するのであれば、「専有型」の回線を選定することが望ましいといえるだろう。

 

【図表6:専有型/共有型】

図表6:専有型/共有型

矢野経済研究所作成

 

【図表7:専有型/共有型の仕組みの違い】

図表7:専有型/共有型の仕組みの違い

04 課題③:マルウェアなどによる攻撃による被害の発生

「安全性の高い回線」の選定ポイント
速度や安定性だけではなく、インターネット環境の選定においては、近年急激に増え続けているマルウェア対策についても考慮する必要がある。クラウドサービスやスマートフォンなどの急速な普及、ソーシャルメディアなどの利用の拡大に伴い、メールによるばらまき型攻撃やランサムウェア「WannaCry」をはじめ、さまざまな悪質なマルウェアが増加しており、多くの企業や政府機関において被害が発生している。
マルウェアに感染すると、個人情報などの機密情報の流出につながるほか、意図せずに加害者になることもあり、多大な損失につながってしまう恐れがある

 

【図表8:マルウェアによる被害事例】

図表8:マルウェアによる被害事例

各種資料より矢野経済研究所作成

対策としてはここでも回線の選定が重要であり、マルウェアブロッキングを標準装備した回線を選定することが望ましいといえるだろう。

05 回線選定に際して意識したいポイント

働き方改革を背景に、クラウドサービスの活用が急速に進んでいる一方、クラウドサービスの導入企業においては「トラフィック量の増大によるレスポンスの遅延」、「不安定な通信」、「マルウェアなどによる攻撃による被害の発生」などの課題が発生している。
そのような課題を見越し、適切なインターネット環境を整備していくためには、「応答速度の速い回線」、「可用性が担保された安定性の高い回線」、「安全性の高い回線」を選定することが重要となる。具体的には、クラウド上でのトラフィック増大時でも応答速度が速く、専有型で安定的な速さを持ち、マルウェア対策を標準装備している回線を選定することが望ましい。
こうしたポイントで比較した結果、アルテリア・ネットワークスのインターネット接続サービス「ARTERIA 光」および「UCOM 光」は、専有型ならではの安定的な速さやSLAに裏付けられたバックボーンの品質の高さに加え、マルウェア対策を標準装備している点でアドバンテージがあるといえる。

山口泰裕

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山口 泰裕(ヤマグチ ヤスヒロ) 主任研究員
ITを通じてあらゆる業界が連携してきています。こうした中、有望な業界は?競合・協業しうる企業は?参入障壁は?・・・など戦略を策定、実行に移す上でさまざまな課題が出てきます。現場を回り実態を掴み、必要な情報のご提供や戦略策定のご支援をさせて頂きたいと思います。お気軽にお声掛け頂ければと思います。

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