矢野経済研究所 ICT・金融ユニット

アナリストオピニオン
2016.02.26

注目されるIoT社会実現までの道筋

IoTとは

最近、注目されるICTテクノロジーにIoT(Internet of Things)がある。
IoTとは、携帯電話/PHS通信に準じた機器間データ通信であるM2Mを始め、家電やパソコン、スマートフォン、タブレット端末、人(SNSなど)、畜産・ペット、センサー、OA機器、家具、輸送機器などのモノをインターネット接続した仕組みを表す概念である(全体イメージは下図参照)。

【図表:IoTの概念】

【図表:IoTの概念】

矢野経済研究所作成

IoTが目指すもの

IoTで実現する最大のテーマは「見える化」である。従来は具視化できなかった事象をデジタル化することで、様々な事象の「見える化」をサポートするのがIoTである。さらにIoTの上流工程では、ビッグデータ解析、AI/機械学習などによる‘新たな価値/新規ビジネスの創出’も見込まれる。
IoTが生み出す具体的価値としては、「リアルタイム化、最適化、意思決定支援、自動認識・自動制御、遠隔計測、測位、予知・予測・予防、(不動産などの)価値向上、ビジネスモデル創出/新規ビジネスの創出」などがある。
IoTが普及すると、例えば工場などの製造現場やメンテナンス現場において、従来のベテランの経験と勘に頼っていた‘判断や評価(ノウハウ)’といった点を、データとして可視化できるようになる。つまり、ベテラン従業員でなくても対応可能な業務に落とせるようになる。またコンシューマレベルでは、日常生活の見える化を実現することで、無駄の解消(省エネなど)や生活シーンの改善・快適化の実現が期待される。
IoTが普及すると、データ収集に加えて、このような収集データの解析や解析結果の現場へのフィードバックにより、一層の付加価値が創出されると期待される。

標準化動向

IoTを実効性の高い仕組みとする上では、標準化の深化が不可欠である。
現在では、「通信・インターネット関連」「デバイス・エリアネットワーク関連」「業種・業態別」といったレイヤーごとに標準化団体が乱立している。この中で、IoTでの標準化を主導する可能性が大きな組織としては「oneM2M」があげられる。
oneM2Mは、日本のARIB/TTC、米国のATIS、EIA/TIA、欧州のETSI、中国のCCSA、韓国のTTAが設立した組織で、oneM2MにはSmarthome系組織や新世代M2Mコンソーシアムなども合流しており、IoT通信技術の標準化への取り組みが進んでいると見られる。
oneM2M以外では、googleやApple、GE、インテルといったIT企業が独自の連携団体を立ち上げているほか、ITU-T(国際電気通信連合-電気通信標準化部門)や、OMA(Open Mobile Alliance)などでも標準化に向けた様々な取り組みが行われている。
日本では新世代M2Mコンソーシアムが、技術課題解決やインタフェースの整合・統一、相互接続試験、ナショナルプロジェクトへの共同参画といった取り組みを進めていたが、現在ではPartner Type2としてoneM2Mに合流している。
現状では、各標準化団体はIoTに対するフォーカスが異なっており、有力事業者では複数の標準化団体に加盟しているところも多い。この現状を見ると、当面は各方面に目配せしつつ様子を探っている印象が強い。

IoTの普及・拡大に不可欠な低消費電力ネットワーク

IoTの普及では、ネットワーク網の拡大とあわせて低消費電力ネットワークの実現が不可欠である。将来的に、IoTでインターネット接続される機器・デバイスが数十億個レベルになると、従来のネットワークでは消費電力量が非常に膨大となり、電源問題がボトルネックになる可能性が高い。
そのためIoTの普及には、新たな低消費電力ネットワークを開発・導入する必要がある。ここで注目される低消費電力技術としては、「LPWA(Low Power Wide Area)」「EnOcean」などがある。

IoTが注目される背景

トリリオンセンサー構想(センサー1兆個時代)に代表されるようなセンサーネットワーク社会の到来を見通す上で、IoTのようなネットワークインフラの実現は不可欠である。
さらにIoT導入効果が、従来のコスト削減や業務効率向上だけでなく、収集データの解析をベースとした新たなビジネス機会の創出、並びに付加価値の提供へとシフトしてきた点も見逃せない。
その上で、IoTへの注目が高まってきた背景には、以下のような要因を指摘する。

【図表:IoT需要が高まる背景】

【図表:IoT需要が高まる背景】

矢野経済研究所作成

早川 泰弘(ハヤカワ ヤスヒロ) 上級研究員
産業調査/マーケティング業務は、「机上ではなく、現場を回ることで本当のニーズ、本当の情報、本当の回答」が見つかるとの信念のもと、関係者各位との緊密な関係構築に努めていきます。日々勉強と研鑽を積みながら、IT業界の発展に資する情報発信を目指していきます。

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