矢野経済研究所 ICT・金融ユニット

アナリストオピニオン
2015.07.23

一般消費者層への3Dプリンタ普及

普及が鈍化する一般消費者向け

3Dプリンタがものづくりに革命を起こす技術として注目を集めてから一年以上が経過した。2014年7月には三菱重工業がロケット開発にあたり3Dプリンタの活用を視野に入れていることを明らかにしたように産業向けの3Dプリンタ活用は目を見張る勢いで成長を続けている。他方コンシューマ向け3Dプリンタは企業が業務の一環として利用するため(例えば研修用)に購入するケースは多いが、一般消費者が趣味などで購入する割合はまだ小さい。そこで本稿では、一般消費者が利用するコンシューマ向け3Dプリンタについて、現在の市場と今後の展望を考察する。

3Dプリンタとは

3Dプリンタとは、3次元データをもとに樹脂や金属などの積層によって立体物を作成できる機器・装置や3D CADなどで作成された3次元データを読み込み、多くは平面的に出力される素材を積み重ねていくことで複雑な立体でも造形できる装置を指す。2Dプリンタとの対比でわかりやすいため、日本では3Dプリンタという用語が広く普及しているが、国際的にはAdditive Manufacturing Technology(AM)と呼ばれている。

また3Dプリンタには複数の種類があるが、一般消費者向けに市場で数多く出回っているのは熱溶解積層方式(FDM)と呼ばれる方式の装置である。当該装置は熱に溶ける樹脂を一層ずつ積み上げていく造形方式を採っており、素材は主にABS樹脂やPLA樹脂である。

作りたいモノをイメージできない

3Dプリンタが注目されるようになった背景の一つには、コンシューマ向けの安価で小型の3Dプリンタが家電量販店でも購入できるようになったことが挙げられる。これに端を発しマスメディアによる3Dプリンタに対する報道が過熱したが3Dプリンタに対する一般消費者の認識は十分とは言えず、筆者が3Dプリンタの取材をするにあたっても3Dプリンタを3Dコピー機と考えている一般消費者が少なからず存在した。そのため3Dプリンタでモノを作ろうとした場合、思うように作れず装置が押入れで埃をかぶるといった結末を迎えることもある。

一般消費者が3Dプリンタを利用する場合に障壁となるのは3Dデータの作成であったり、素材費用であったりが想起されるが、こうした事柄はいずれ時間とともに解決される。筆者はむしろ3Dプリンタで作りたいものをイメージできないことに課題があると考える。いま「3Dプリンタで何を作りたいか」と問われて答えに窮する者は少なくないだろう。そこで自社のコンシューマ向け市場を拡大しようと考える3Dプリンタ事業者や3D造形サービス事業者は、一般消費者向けに3Dプリンタでこういったものが作れるということを伝播させていく必要がある。近年は3Dプリンタを含むデジタル工作機械を用いてモノづくりを行う場、ファブ施設も増加基調にありモノづくりの楽しさは広がりつつあるが、こうした施設も日頃からモノづくりを趣味としない者にとっては敷居が高いということは認識しておく必要があるだろう。今後、一般消費者の需要を喚起できる活用例の表面化が進むことを期待する。

コンシューマ向け3Dプリンタ市場

弊社では2014年10月に『2014年版3Dプリンタ市場の現状と展』を発刊したがコンシューマ向けと言える熱溶解積層方式の出荷台数(国内)は2015年予測が前年比376.7%の18,920台である。しかしこのうちの多くは産業用や教育用で、一般消費者向けの市場は黎明期にある。

【図表:3Dプリンタの出荷台数(2013~2015年予測/熱溶解積層方式)

【図表:3Dプリンタの出荷台数(2013~2015年予測/熱溶解積層方式)】

矢野経済研究所推計
注:事業者出荷数量ベース
注:2014年以降は予測値

3Dプリンタ市場は順調に拡大を続けているが、それは産業用を中心とした場合である。3Dプリンタに技術的課題があることはもちろんだが、モノづくり人口が拡大し一般消費者層にも広く普及するかどうかは一般消費者に3Dプリンタでモノを作りたいと思わせることが必要となる(例えば3Dデータとそれを作れるだけの材料をセットにしたキットの販売などがあれば手軽にモノづくりが可能)。こうした意味では市場への参入余地はまだ大きいと言える。

求められる用途創出

一般消費者向け3Dプリンタ市場は未だ発展途上段階にあり、今後どのように発展していくかは未知数である。しかし将来的にはメーカーが家電製品などの部品をホームページ上にアップロードし、一般消費者がそれを家庭や3D造形サービス事業者の3Dプリンタから出力する時代になることが期待されている。一般消費者向けの3Dプリンタ市場拡大のためには想像力を働かせ、用途を創出することが必要となろう。

小山 博子(コヤマ ヒロコ) 上級研究員
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