矢野経済研究所 ICT・金融ユニット

アナリストオピニオン
2015.03.10

急成長の「ソーシャルメディアBPOサービス市場」

新たに登場した「ソーシャルメディアBPOサービス」とは

ソーシャルメディアBPOサービスとはソーシャルメディアを利用した企業のマーケティング業務等の代行サービスを指す。具体的には、以下の「ソーシャルメディア運営業務」「投稿監視業務」「ソーシャルメディア分析業務」の3つの業務を代行するサービスのことである。

「ソーシャルメディア運営業務」とは広告・マーケティング等に活用されているソーシャルメディアへの投稿や企業ページの運営業務を指す。近年ではFacebookやTwitterを利用しながら企業がPR活動を行う場面が増えており、更新頻度が高いほどコンシューマーへの訴求につながることから、こまめな運用が求められる。

「投稿監視業務」とはソーシャルメディア上の企業に関する口コミや書き込みの内容を監視する業務のことを指す。内容が公序良俗に反するものであったり、根拠のない企業の悪口であった場合には削除等の対応をする必要がある。企業にとって投稿監視業務の重要性は以前よりも増している。それは、ソーシャルメディアの拡散力が非常に高まっており、企業の悪評に関する投稿を放置しておくと、その拡散力によってあっという間に悪評が世間に浸透し、企業のイメージを落としかねないためである。企業は、ソーシャルメディアユーザーの投稿を意識的にチェックしなければならなくなっている。

「ソーシャルメディア分析業務」とはソーシャルメディア上に散在する企業に関する口コミ・書き込みなどを集めて分析する業務のことを指す。企業は、分析によって得られた結果を、機密情報の漏洩チェックやマーケティングに活用している。

なお、ソーシャルメディアBPOサービスの提供事業者には、ソーシャルメディアBPOサービスを主業としてサービスを展開している事業者もあれば、主業とせずにサービスを展開している事業者もある。主業として展開している事業者には、例えば、イー・ガーディアン株式会社、株式会社ガイアックスなどが挙げられる。

企業におけるソーシャルメディアの活用は諸刃の剣

近年、各企業ともマーケティングにソーシャルメディアを活用するケースが増えている。ソーシャルメディアの魅力は少ない投資で情報を拡散できる点にある。SNS世界最大手の米Facebookでは売上高の9割程が広告収入と言われているが、2014年7~9月期決算では前年度同期比の純利益が90%も伸長し、依然として勢いは止まらない。
FacebookやTwitterを活用したマーケティングを手掛けている企業では、専任の社員を置くケースもある。「いいね!」ボタンやシェア数などの数値で広告効果を図りやすい点も、企業に受け入れられているようだ。  

一方でソーシャルメディアの拡散力は企業にとって脅威にもなっている。近年、食品業界で起きている異物混入事件などはその良い例だ。ソーシャルメディアが普及する以前は、異物が混入したとしても示談で済むケースも多かった。しかし、現在ではソーシャルメディアに画像を載せて拡散され、ニュースでも大きく取り上げられてしまうなどといったリスクが増えた。中には消費者により捏造された情報が拡散してしまうケースもあり、それにより企業に発生する損失は計り知れない。それによる損失の穴埋めは結果として食品価格に反映されることになるであろうから、消費者にとってもいい結果は生まない。

以上のように、ソーシャルメディアは、企業のマーケティングにおいて使い勝手の良いツールであるが、一方で使い方を間違えると大いなる脅威となってしまう。そのため、活用するのであれば、企業は相応のリソースを割いて対応していく必要がある。

ソーシャルメディアBPOサービス市場の規模推移予測

2012~2018年度の「ソーシャルメディアBPOサービス」の市場規模は、年平均成長率(CAGR)10.1%で推移し、2018年度には111億4千万円に達すると予測する。

現状、多くの企業はソーシャルメディア運用業務を内製で行っており、ソーシャルメディア運用業務をアウトソーシングしている企業はまだ多いとは言えない。しかしながら、先に挙げたとおり、Webマーケティングの重要性が高まる中で、企業は同分野への予算を増やす傾向にあり、Webマーケティングツールの一つとしてソーシャルメディアの活用を図る企業が増えている。そして、そのような動きに伴い、ソーシャルメディア運用業務をアウトソーシングする場面も増えている。

また、投稿監視業務についても、前述の通りソーシャルメディアの拡散力が非常に高まったことで、企業の悪評に関する投稿を放置しておくと、その拡散力によってあっという間に悪評が世間に浸透し、企業のイメージを落としかねなくなってきているため、企業は公序良俗に反するような書き込みや口コミ、そして企業に対する誹謗・中傷をチェックするため、投稿監視サービスを利用するようになってきている。

さらに、ソーシャルメディア上に散在する企業に関する口コミ・書き込みなどを集めて分析するソーシャルメディア分析業務においても、企業は、分析によって得られた結果を、機密情報の漏洩チェックやマーケティングに活用するため外部の専門家にアウトソーシングするようになってきている。

このように、Webマーケティングの重要性が高まっていることに対応して、企業がソーシャルメディアへの対応を強化しているため、その動きに合わせてソーシャルメディアBPOサービス市場も拡大していくと予測する。

【図表:ソーシャルメディアBPOサービスの市場規模推移予測】
【図表:ソーシャルメディアBPOサービスの市場規模推移予測】

矢野経済研究所推計

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