矢野経済研究所 ICT・金融ユニット

アナリストオピニオン
2014.06.19

個人情報は「守る」から「活用する」時代への大転換へ

平成26年1月24日、成長戦略関連の重点施策の実行を加速化・深化するための「産業競争力強化に関する実行計画」が閣議決定された。
今後の日本の成長戦略を考える際に、ITの活用は当然重要になると考えられるが、この中でITに関わる項目を見ると、項目(4)として、「世界最高水準の IT社会の実現」というテーマがある。これは、ITを活用した民間主導のイノベーションの活性化に向けて、世界最高水準の事業環境を実現するため、規制・制度改革の徹底及び基盤整備を進めるという主旨のものである。
この「世界最高水準の IT社会の実現」というテーマには、公共データのビジネス利用を図る「公共データの民間開放」、3.4GHz~3.6GHz帯の新たな周波数の割当てやM2M関連の法的整備などを含む「世界最高レベルの通信インフラの実用化」等と並んで、「世界最高水準のオープンデータやビッグデータ利活用の推進 」というテーマがある。
これは、ビッグデータ時代において、個人情報及びプライバシーを保護しつつ、パーソナルデータの利活用を促進するため、IT総合戦略本部において取りまとめられた「パーソナルデータの利活用に関する制度見直し方針」を踏まえ、パーソナルデータの利活用に関する制度の見直し作業に着手し、平成 26 年6月までに、法改正の内容を大綱として取りまとめ、平成27年を目途に必要な法的措置を講じることを目指すものであるとされている。

その「パーソナルデータの利活用に関する制度見直し方針」によれば、IT・データの利活用は、グローバルな競争を勝ち抜く鍵であり、その戦略的な利活用により、新たな付加価値を創造するサービスや革新的な新産業・サービスの創出と、全産業の成長を促進する社会を実現するものとされている。個人情報及びプライバシーの保護を前提としつつ、パーソナルデータの利活用によって民間の力を最大限引き出し、新ビジネスや新サービスの創出、既存産業の活性化を促進するとともに、公益利用にも資する環境を整備する。さらに、事業者の負担に配慮しつつ、国際的に見て遜色のないパーソナルデータの利活用ルールの明確化と、制度の見直しを早急に進めることが必要である、とされている。

個人情報保護法の制定から、約10年が経過したが、総じて社会全体としてネガティブな影響の方が目立っている状況ではないか。災害時において関係者の連絡先を知らせなかったり、特に問題のない卒業アルバムの制作が避けられたり、等ということも起きている。
特に事業者としては、個人情報に付帯する各種情報を活用することで、様々な販促策やマーケティング施策を考えたいところではあるが、個人情報の活用に関する正式なルールがないことから、保守的な判断を下す傾向になりがちである。
そこで、今度の成長戦略では、個人情報及びプライバシーの保護に配慮したパーソナルデータの利用・流通を促進するため、個人データを加工して個人が特定される可能性を低減したデータに関し、個人情報及びプライバシーの保護への影響並びに本人同意原則に留意しつつ、第三者提供における本人の同意を要しない類型、当該類型に属するデータを取り扱う事業者(提供者及び受領者)が負うべき義務等について、所要の法的措置を講ずる方針である。
これによって、パーソナルデータ、センシティブデータとは別に、利活用することで社会的に意義の高いデータの定義やその取扱いを明確にし、その有効利用を図ろうとするものである。
従来より、POSデータやクレジットカード、ポイントカードや、それに結びつくはずのPOSデータなどは、色々な販促や商品企画などに活用が可能であるが、あまり積極活用されていないのが実態である。
また、最近ではSNSのIDに紐づく様々なネット上での活動履歴や、ECとリアル店舗間での顧客情報の共有など、うまく活用することによって、非常に興味深い分析が可能になりそうなデータが、ストックされつつある。スマホが急速に普及する中、位置情報も非常に有効な情報になる。
消費者にとっては、自分の行動が分析され、特定の企業の利益に活用されることはあまり気持ちのいいものではないかもしれない。また、ストックされている個人情報が、何らかのトラブルで漏えいした場合のことを考えると、リスクを感じるのも致し方ない。しかし、そのような負の側面ばかりではなく、メリットもあることをきちんと伝えていくことも非常に重要である。
個人情報の活用に慎重であるべきなのは変わらないが、グローバル社会の中で、日本だけ無暗に情報化の流れに逆らってばかりもいられない。特にGoogle社に代表されるような外国企業だけが、日本のユーザーの情報を活用して利益を享受するような事態になることも避けなければならない。
そのためにも、パーソナルデータの正しい活用方法を、国としてきちんと吟味の上で定義し、利用可能なデータとそうでないデータの線引きをし、可能なものに関しては、積極的に活用する道筋をつけていくという方針は正しいと思われる。
消費者側に対しては、個人に紐づく情報であっても、適正に利用されることで、提供者にもメリットがあることを訴求していく必要がある。そして、漠然とした個人情報活用に関する誤った知識や恐れを払拭しなければならない。
かつて、監視カメラが公共の場に設置されることで、監視社会の到来だという認識が広まったことがある。しかし、最近では監視カメラが犯罪者の逮捕につながったりすることで、社会的な存在意義が認められ、そのような意見は聞かれなくなりつつある。むしろ最近では、悪質な犯罪が起きると、監視カメラの映像はないのか、と期待されるまでの存在になっている。
個人情報に関して、これまでは守られなければならないものという視点で語られ、活用に関しては否定的な論調で語られることが多かった。しかし、こうした政府の取組によって、社会全体でのコンセンサスを形成し、うまく「活用する」ステータスに発展させる必要があると言えよう。
ただし、こうした取組は、個社の利益のみに貢献するだけでなく、国の成長戦略に記された以上、国全体の競争力につながるような大きな構想で取組まなければならない。

野間 博美(ノマ ヒロミ) 理事研究員
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