矢野経済研究所 ICT・金融ユニット

アナリストオピニオン
2014.01.28

ホームで勝つために積極的にアウェイでの経験を

2020年オリンピック開催に向け高まる期待感

2020年の東京オリンピック開催が決まり、各業界からの期待が集まっている。
サッカーW杯と並んで世界の2大スポーツイベントとされるオリンピックは、各競技会場や選手村の建設、道路/地下鉄など社会インフラ整備の促進に加え、開催地の知名度やイメージの向上、国民の国際交流の促進にも寄与するなど、様々な分野で大きな経済効果をもたらす。
特に近年は、通信インフラやICT利活用の環境整備が重視される傾向にある。前回2012年のロンドンオリンピックでは、ツイッタ―やフェイスブックなどのSNSがコミュニケーション手段として活用されたという特徴から「ソーシャル五輪」とも称されている。
これには、オリンピック開催期間中に発生すると想定される大量の通信トラフィックへの対応のために、ロンドン市内に50万箇所ものWi-Fiスポットを設置したという背景がある。その効果もあり、国際電気通信連合(ITU)が発表する世界各国のICT開発に関するランキングにも影響が現れている。このランキングは、携帯/固定電話の契約数やインターネットの世帯普及率、パソコン知識を持つ人口などを尺度として指数化し、ICT発展度合いを比較したものであるが、英国では2011年から2012年にかけてこれらの指数を改善させ、ランキングを上昇させたとされている。
このように、世界的スポーツイベントの開催は、経済効果に加え、ICT領域を筆頭に様々な分野で新しい技術やイノベーションに関するトライアルが行われる、またとない技術革新の機会でもある。

待ちの姿勢ではなく「アウェイ環境」で実戦経験を

では、2020年のオリンピック自国開催に向け、どのような準備を進めるべきだろうか。
やはり、これから開催されるオリンピックやサッカーW杯の動向を注視することが最も有効であると考えられ、その意味で現在最も注目を集めている国がブラジルであろう。
ブラジルは、2014年6月に開催されるサッカーW杯のため12の都市でスタジアム建設などのインフラ整備に総額1兆4000億円が投資され、さらに2016年にはリオデジャネイロでの夏季オリンピックの開催も控えており、一連のインフラ整備におけるトレンドは2020年を見通す上で、非常に重要であると考えている。
そのブラジルW杯のインフラを支えている日本の技術が多いことは、意外と知られていない。

ICT領域に関しては、パナソニックがサッカースタジアムのデジタルサイネージシステムを筆頭に、大型のディスプレイに加え、監視カメラや通信システムなどを受注している。
またNECでは、サッカースタジアムを中心とした「スマートシティ開発」までを含めたスタジアムのICT化に関するプロジェクトを相次いで受注している。これらは最先端のICTを駆使したスタジアム構築プロジェクトで、館内のIPネットワーク、無線ネットワーク、セキュリティシステム、大型スクリーンを含む映像・音響・照明・空調などの各種制御システムを総合的に構築するものである。NECでは、同様の案件を計4件受注したと発表している。
このように2020年を前にして、他国で開催されるスポーツイベントを支える日本の技術も多い。彼らはいわばホーム(東京オリンピック)での戦いを前に、アウェイ環境で実戦経験を積み、その実力を磨いているのである。

2020年までに開催されるオリンピック(夏季冬季)やW杯において、インフラ整備に関してこれから新たに入り込む機会はそう多くはないとも考えられるが、インフラ以外でも様々な領域でアウェイ環境での実戦経験を積んでおくことは有用だと考える。
2020年のオリンピックは、1964年の東京オリンピックから56年ぶり、2002年の日韓W杯からでも18年ぶりの世界的スポーツイベント開催となる。
このような絶好の機会を前に、決して待ちの姿勢になることなく、アウェイ環境での積極的な活動によってその恩恵を最大限に受けられる準備を進めたいものである。

YanoICT(矢野経済研究所ICT・金融ユニット)は、お客様のご要望に合わせたオリジナル調査を無料でプランニングいたします。相談をご希望の方、ご興味をお持ちの方は、こちらからお問い合わせください。

YanoICTサイト全般に関するお問い合わせ、ご質問やご不明点がございましたら、こちらからお問い合わせください。

東京カスタマーセンター

03-5371-6901
03-5371-6970

大阪カスタマーセンター

06-6266-1382
06-6266-1422