矢野経済研究所 ICT・金融ユニット

アナリストオピニオン
2013.10.31

「リスク」をモバイルする時代

「ながらスマホ」は危険です

「ながらスマホ」がようやく社会的なリスクとして認知されるようになってきたようだが、まだその取り組みに対する効果は浸透していない。
例えば、スマートフォンや携帯電話の画面に気を取られ、駅のホームから落ちたり、人と接触したりする事故が相次いでいる。
先日、東京都板橋区で、携帯電話を操作しながら歩いていた男性が踏切に進入し、電車にはねられて死亡するという、大変痛ましい事故があった。
この事故は、東武東上線大山駅に隣接する踏切で、左右両側から遮断機が下り、警報機も鳴っていたところに、都内の47歳の無職男性が携帯電話を操作しながら、中央部分に数センチ開いた遮断機の隙間を通り抜けて電車と衝突し、死亡したとされるものだ。
携帯電話の画面に気を取られ、誤って進入した可能性があるとされ、近くの飲食店の男性店員が、「同僚が事故を目撃した。警笛が鳴り、男性は踏切の中で驚いた顔をしていたそうだ」と話したそうだ。
また、5月には、新宿区のJR中央線四ツ谷駅のホームで、携帯電話を見ながら歩いていた小学五年の男児が、ホームに転落する事故が発生した。その際、電車が進入したものの、男児はホームと電車の隙間にいたため、あごをけがしただけで済んだという事件もあった。

こういった事故に発展するケースがまれであろうが、そこまでに至らずとも、「ながらスマホ」による危険な状況は、日々我々の身の回りで頻発している。例えば、前からスマホを見つめたまま、自分にまっすぐに進んでくる人に戸惑う人は多いだろう。
ある実験では、彼らは周りが見えていると主張しているが、実際には、彼らが危険を察知する前に、周囲の人が彼を避けて歩いているという事実を認識していなかった。そのため、何の罪もない高齢者や背の低い子供などは、彼らのせいで大変危険な状況におかれているのである。
「ながらスマホ」は、自分の身が危険であるのみならず、周囲をも危険に巻き込む行為であることに対する意識は低いと考えられる。

最近になってようやく、こうした状況に手を打つ動きがみられ始めている。例えば、大手キャリアのNTTドコモは、歩きスマホの危険性を啓発する取り組みとして、2012年2月より新聞、雑誌、ラジオでの啓発広告を展開している。さらに、JR新宿駅の駅構内において、歩きスマホの危険性を注意喚起するマナー広告の掲出を開始した。
このマナー広告は、JR新宿駅東口改札外の「新宿ALTA」方面出口付近の階段に掲出されており、階段面に「危険です、歩きスマホ。」と大きく表示。また、階段左右の側面には歩きスマホの危険な様子を描き、同時に「この広告には気づかなくても、みんなの冷たい視線には気づいてほしい」などのメッセージを表示している。
また、公共広告機構(AC)も、「ながらスマホにマナーを」として、TVCMを展開するようになった。しかし、今のところは、これらに強制力はなく、利用者のマナーに頼るしかない。基本的に徹底は困難な状況にある。

SNSのはらむ「リスク」

もう一つのリスクはいわゆる「炎上」を始めとした、スマホなどスマートデバイス利用における、リテラシーの問題である。
幼いころから携帯電話を利用してきた若年層にとっては、スマホは極めて安易なコミュニケーションツールである。そのような中に登場してきたのが、ダイレクトにインターネットにつながるFacebookやTwitterといったSNSである。
彼らの中にはこうしたSNSがインターネットにつながっており、そのことがはらむリスクを十分認識していない人が多いと予想される。さらに、ネット上に存在する「悪意」に対する意識も非常に低いと言わざるを得ないだろう。
気軽に仲間うちでの会話のつもりで行った投稿が一気に炎上、飲食店を廃業の危機に追い込んだり、投稿者自身が丸裸にされたりという事象が頻発している。
また、SNSを通じて、各種の詐欺、犯罪を犯そうという社会の闇の部分を知らない若年が、犯罪や事件に巻き込まれる事象も後を絶たない。
本来、こういったツールを子供に与える親が、その利用に関しては責任をもって指導するべきであると思うが、厄介なのは、親世代もこういったITツールに関しては、適切に指導するほどの知識に疎いケースが多いことだ。

より快適な「スマホ」活用にむけて

スマホを始めとしたスマートデバイスは、社会を変革するほどのインパクトを持つ、極めて有効なツールである一方、ダイレクトに世界中につながりうる、リスキーなツールでもあることを、きちんと理解しておくことも重要だ。
いつまで経っても自動車事故による死亡者が後を絶たないように、便利なツールには必ずそれに匹敵するリスクが伴うということを、社会全体できちんと認識し、正しい教育のシステムを構築することが急務である。

野間 博美(ノマ ヒロミ) 理事研究員
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