矢野経済研究所 ICT・金融ユニット

アナリストオピニオン
2013.01.07

年頭のご挨拶

新しい政府はどんな未来を描くのか

皆様、新年明けましておめでとうございます。本年も、YzFLASHのご愛読並びにYanoICTを何卒宜しくお願いいたします。

さて、本稿が掲載される時点では少々古い話題となっていると思われますが、師走に行われた衆議院議員総選挙では、想像以上に自民党が圧勝する結果となり、再び民主党から自民党に政権交代が行われることとなりました。そもそも、現在の小選挙区制度に改革した際の目的として、政権交代が可能な二大政党制の実現がありました。その効果は絶大で、我々が過去何十年も経験しなかった政権交代を、わずかこの4年弱の間に、二度も経験することとなったのです。

しかし、前回、今回と政権交代を経験した結果、我々の国は本当に良い方向に向かっているのでしょうか?
今回の選挙で私が特に強く感じたことは、各政党の主張する内容があまりに特徴がなかったことです。勿論、争点は、景気対策、原発や国防、行政改革、地方分権など、本当に多岐にわたりました。そして、それぞれの政党に関して、同意できたり、できなかったりが混在し、私には、本当に支持できると思う政党が現れませんでした。また、更に厄介だったのは、各政党が向かおうとする方向性が、あまり見出せなかったと言うことです。
この理由を想像するに、今の日本がおかれている状態に課されている問題が、あまりにもはっきりし過ぎているということではないでしょうか。例えば、年金問題、少子化問題、領土問題、財政再建問題などです。そして、それゆえに今の政党が主張している論点は、全てこの「目の前の課題」に留まっていると思うのです。
勿論、目の前の課題を解決することは大変重要ですし、大変厄介な問題ばかりなので、ここを主張することで、有権者の一票を獲得したくなるのは分かります。しかし、我々が本当に知りたいことは、目の前の課題を解決した「その先」にあるのだと考えます。つまり、目の前の厄介な問題を解決して、どのような国を目指すのか、と言う点です。これこそが、政党が掲げる争点でなければならないと考えます。つまり、国家ビジョンです。日本人はビジョンを語るのが苦手だと言われますが、ビジョンは向かうべき方向であり、あるべき姿です。どのような個人でも、持っているはずだと思うのですが、一国の総理を派出せんとする政党が、国家ビジョンを語っていないように感じられてなりません。国民とビジョンが共有できてこそ、その実現のためにどのような戦略をとるのか、また、何に優先度を置き、何を犠牲にしなければならないのか、といった意思決定が出来ると思うのです。今回の選挙で各政党は、日本をどうしたいのか、政権をとったら何を実現しようと邁進するのか、それこそを、政治活動で語るべきだったのではないでしょうか。

我々は、現在大きな目標を失いつつあるのかも知れません。人口は減少し、経済活動は低迷しています。近隣の国には敵対視され、沖縄では事件が絶えません。こんなときこそ、国民が共有できるビジョンが必要なのではないでしょうか。経済大国を再び、なのか、文化大国の実現なのか、国民皆高福祉国家なのか。まずそういった高い視座から語るところから、始める必要があると思うのですが、皆さんは如何でしょうか。あまりに当たり前のことですが、「自由」や「民主主義」が理念であった時代は、とうに過ぎ去っています。「維新」も、その先を全く想像できないという意味では、同様ではないでしょうか。

各党に様々なビジョンがあり、それに国民が一票を投じる。そして成立した政権は、そのビジョンを実現すべく、政策実現に邁進する。また、産業界は、そのビジョンを実現するために有効なビジネスチャンスをうかがい、盛んに競争を繰り広げる。その結果、高い経済成長が実現するならば、赤字国債で実施する公共投資によって一時的に促される、もろい成長とは、全く力強さが異なるのではないでしょうか。
2013年は、もう少し将来への展望が描ける年になることを祈りたいと思います。

野間博美

野間 博美(ノマ ヒロミ) 理事研究員
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