矢野経済研究所 ICT・金融ユニット

アナリストオピニオン
2012.11.12

インド進出は頭のOSを入れ替えて臨むべし

BRICsの一角として、今やビジネスでは当たり前となりつつあるインドであるが、まずは簡単にインドをおさらいする意味で下表を参照頂きたい。

【図表:インドの基本データ】
【図表:インドの基本データ】

表の出所:JETRO

この様に、実質GDP成長率は年率約7%、アメリカ、中国、日本に続く世界第4位の経済大国となったインドを重視する経営者は少なくないだろう。しかし、インドはアジアの一部であっても、中国や東南アジアとは大きく異なっており、「インド市場に参入したものの、なかなかうまくいかない」という悩みを抱える日本企業からの問い合わせが増加しているように感じられる。

その一つの理由として、中国や東南アジアでは日本ブランドが高品質といったプレミアム感、ある種のステータスとして受け入れられている土壌があるが、インドでは現地および欧米企業が既に展開しており、ブランド・価格・品質の厳しい競争環境が存在していることが考えられる。今回、インドへはプリンターなどの調査で行ったわけだが、HPがその部分で先行していたことが肌で実感してきた。

【図表:インド進出日系企業数及び拠点数推移】
【図表:インド進出日系企業数及び拠点数推移】

出所:在インド日本国大使館
注:2010年10月より、一律的に日本人が常駐しない営業拠点やサービス拠点等をより精査したことにより、一部の地域では拠点数が減少している。

また、インドは多様性に富んだ国であり、この多様性に順応できない企業は淘汰されてしまうだろう。多様性の一端として、例えば、言語やタイムマネージメントが挙げられる。
前者については、国内で利用されている言葉も数えるのが難しいことは有名な話である。公用語のヒンディー語ですら南部では通用しない。
後者に関しては、日本では“on time”でビジネスが進んでいくが当たり前だが、インドでは“in time”で動く。もう少し分り易い言い方をすると、アポイントの取り方が典型だろう。日本では「16時に伺います」と言うが、インドでは「14時から16時に伺います」となるのである。これからインドへ進出しようという方は、頭のOSを入れ替え、多様性を持って臨んで欲しい。

【写真:多様性の例】
【写真:多様性の例】

近年増加しているショッピングセンターの内部は非常に近代的である。
一方、少し郊外へ行くと写真(下)のような景色も垣間見える。

次に、少し目線を変えてみよう。インドは富裕層が0.7%(2010年推計)、中間層が15.8%(2010年推計)に過ぎないといっても、インドの人口は12億人。上位16%で1.9億人となり、日本の人口、インド大都市の人口を遥かに上回っており、全国に散らばっているのが特徴といえる。その為、コンシューマービジネスにおいて、それなりの地位を狙いに行くのであれば、主要大都市だけではなく、全国展開が基本戦略と言える。現状、ここで先行するのは現地企業やアメリカ企業、韓国企業である。今回の訪印調査でも、「販売網を全国レベルで築くことで勝負の半分くらいが決まる」いう見解もあった。

*平成22年版通商白書 富裕層:世帯年間可処分所得が35,000ドル以上の所得層。
*平成22年版通商白書 中間層:世帯年間可処分所得が5,000ドル以上35,000ドル未満の所得層。

その一方で、インドは東西南北それぞれの地域でまったく異なる様相を呈し、州の権限が強く、言語も異なる。その為、100km離れたら違う国と考えるべきである。インド特有の文化や都市部の激戦状況を知らずにインド進出を果たすと、思った以上に売上が伸びないのは道理と言えよう。

冒頭にも数値で表れている通り、インドの経済発展には目覚ましいものがあり、ビジネスチャンスは多くある(実際に現地を訪ねたことのある方であれば、直感でご理解頂けるだろう)。上記以外にもインド展開する上での“コツ”があり、失敗せずにインド進出を果たしたいというお方は、是非一度お気軽にご相談頂けると幸いです。

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