株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越孝)は、国内のERPパッケージライセンス市場を調査し、参入企業・ユーザ企業の動向、将来展望を明らかにした。
【図表:ERPパッケージライセンス市場規模推移・予測】
2021年のERPパッケージライセンス市場は、エンドユーザ渡し価格ベースで1,278億円、前年比10.1%増となった。2020年は新型コロナウイルス感染拡大を要因とする、ユーザ企業の業績悪化懸念などから案件の先送りが発生したため前年比1.4%増とほぼ横ばいだったが、2021年は一転して2桁成長となった。
2021年はコロナ禍によるマイナス影響が小さくなったことに加え、先送りされた案件の多くが順当にスタートし、2020年の先送り分が追加需要として上乗せされたことも市場を押し上げた。ERPパッケージライセンス市場は一時的な停滞を脱し、成長軌道に戻ったと考える。また、コロナ禍によって企業活動のデジタル化が進んだことから、クラウドでERPを利用する企業も着実に増加している。
■2022年は電子帳簿保存法やインボイス制度への対応に関心が高まる
2022年は電子帳簿保存法やインボイス制度といった法制度対応への注目度が高い。電子帳簿保存法は2022年1月の改正で要件が緩和されたとともに、電子取引における電子保存の義務化に2023年12月末まで2年間の猶予が認められることとなった。また、2023年10月にはインボイス制度の施行を控えており、ERPパッケージベンダーは猶予期間中にインボイス制度を含めた法制度対応の支援を進める考えである。
なお、ERPパッケージでの法制度対応の機能変更は、保守サポートの範囲で無償または安価に提供されることがほとんどであり、それをきっかけにERPパッケージライセンス市場で特需が起きることはない。しかし、ユーザ企業側の制度変更への関心は高いため、セミナーやキャンペーンのテーマに掲げ集客を図るなど、市場の活性化が期待されている。
2022年のERPパッケージ市場は前年比5.2%増の1,345億円になると予測する。
2021年には前年に先送りされた案件が上乗せされるという特需的な要因があったのと比べると伸び率は下がるが、老朽化したレガシーシステムのリプレイス、DXの一環としての経営基盤強化といったニーズが市場の成長を支える。コロナ禍で加速したクラウド化(クラウドでのERP利用)はERP導入における継続的なトレンドとなり、クラウドへのシフトはいっそう進展する見通しである。システム基盤にIaaSやPaaSを利用する形態が中心だが、SaaSの利用も拡大すると見込まれる。
なお、成長を鈍化させる要因となりうるのは、ウクライナ情勢の影響による資源価格の高騰や物価上昇、急速に進む円安などによる外部環境の悪化である。しかし、ユーザ企業では、経営環境の変化に対応するための手段としてERPに投資する前向きな姿勢が強まっており、景気後退が起きたとしても、ERPへの投資凍結や大幅な予算削減に直結することはない見通しである。
■レポートサマリー
●ERP及びCRM・SFAにおけるSaaS利用状況の法人アンケート調査を実施(2020年)
●ERP及びCRM・SFAにおけるSaaS利用状況の法人アンケート調査を実施(2018年)
■アナリストオピニオン
●ERP市場と「2025年」を巡る問題
●「次世代ERP」のリリースラッシュが起きているのはなぜか
●ERPをクラウド化する3つの理由
●戦略的な経営を実現するクラウドERP NetSuiteが支える企業変革
●ERPパッケージの顧客ロイヤルティ調査で人事・給与分野において最高評価を得たZeeM
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調査対象:ERPパッケージベンダー
調査期間:2022年4月~6月
調査方法:当社専門研究員による直接面談(オンライン含む)、ならびに文献調査併用
※ERPパッケージライセンス市場とは:ERP(Enterprise Resource Planning)パッケージとは、財務会計、人事給与、販売管理、生産管理などの基幹業務データを統合する情報システムを構築するための基幹業務管理パッケージソフトウェアを指す。
本調査におけるERPパッケージライセンス市場は、ERPパッケージベンダーのライセンス売上高(クラウドのサブスクリプション売上高を含む)をエンドユーザ渡し価格ベースで算出した。なお、コンサルティング・SI等、保守サポートなどの関連売上高は含まない。
<市場に含まれる商品・サービス>
ERPパッケージ
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