矢野経済研究所 ICT・金融ユニット

レポートサマリー
2021.12.22

社会インフラIT市場に関する調査を実施(2021年)

2020年度の国内インフラIT市場規模は、前年比2.9%減の5,948億円。2019年度までの微増推移から一転、2017年度以来の前年度割れとなった。

株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越孝)は、国内の社会インフラIT市場を調査し、市場規模、分野別の動向、各種入札情報、将来展望、社会インフラ向けITソリューションビジネスの動向などを明らかにした。

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【図表:社会インフラIT市場規模予測】

【図表:社会インフラIT市場規模予測】
  • 矢野経済研究所調べ
  • 注:インフラ運営事業者の発注金額ベース、2020年度までは各種公開情報を元に作成、2021年度以降は矢野経済研究所による見込、予測値
  • 注:2021年度は見込値、2022年度以降は予測値
  • 注:市場規模には、工事(電気設備・送信設備)、ハードウェア、ソフトウェア、SI、コンサルティング、回線利用料、サービスサポート、保守メンテナンス、要員派遣などを含む。

 

社会インフラIT市場の概況

本調査では、道路や鉄道、空港、港湾、河川、ダム、水関連、防災/警察の8分野の社会インフラITを対象として、調査を実施している。2019年度までの微増推移から一転、2020年度の社会インフラIT市場規模(インフラ運営事業者の発注金額ベース)は前年度比2.9%減の5,948億円と6,000億円の大台を割った。2020年度は期初から新型コロナウイルス感染拡大の影響があり、延期・休止により、2017年度以来の前年度割れとなった。
分野別に見ると、特に空港、鉄道、道路での落ち込みが大きく、この3分野だけで140億円ほど減少した。また、河川を除く全ての分野で市場は縮小しており、改めてコロナ禍の影響は大きかったと言える。
2021年度においても、前年度以上にコロナ禍による社会インフラITへの投資抑制が続いており、前述した空港、鉄道、道路に加えて、水関連や防災/警察分野でも大幅な縮小が見込まれる。そうしたことから、2021年度の社会インフラIT市場規模は前年度比10.2%減の5,340億円になる見込みである。

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社会インフラIT市場の注目トピック

■社会インフラ向けITソリューション
これまでは、ほぼ従来型の社会インフラITが実施されて来た。しかし、2010年代に入ってからは、国土交通省を中心に社会インフラ保全でのIT活用を積極的に推奨する流れが生まれており、IoTやクラウド、5G/ローカル5G、LPWA、AI(画像解析、音声認識、データ解析など)、AR/VR&スマートデバイス、センサーネットワーク、ドローン、ロボットといったテクノロジーの実装が始まっている。

これらのITテクノロジーを活用した社会インフラ向けITソリューションは2010年代後半から登場しており、2025年頃にかけて本格的な普及期を迎える見通しである。尚、現状ではNEXCOグループ(東日本、中日本、西日本)や首都高速、阪神高速などの高速道路事業者、JRの旅客事業者(東日本・東海・西日本など)、東京メトロ、首都圏の私鉄大手などの鉄道大手事業者が中核事業者となっている。今後の普及に向けて期待が大きいのが、IoTやクラウドを活用したIoTモニタリング(次世代型の遠隔監視)であろう。この仕組みは、既に河川監視やため池監視、ダム監視、下水道ポンプ(マンホールポンプ)の遠隔モニタリングなどで適用されており、さらにアンダーパス監視(豪雨時での危険個所監視)など防災用途でも徐々に広がっている。

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社会インフラIT市場の将来展望

社会インフラIT市場は2025年度に向けて回復基調になるが、社会インフラ向けITソリューションは2025年頃にかけて本格的な普及期を迎える見通しである。当面は、コロナ禍による経済や社会生活、医療基盤のダメージ回復に主眼が置かれるため、強靭化を目的としたインフラ管理投資自体は堅調であっても、社会インフラITへの投資については抑制気味にならざるを得ないと考える。
エリア別に見ると、首都圏・関東エリアなどでは東京オリンピック・パラリンピック関連でのインフラ投資(高速道路や幹線道路、鉄道、空港など)に一服感がある一方で、2025年の大阪万博が控える近畿エリア、リニア新幹線特需のJR東海案件がある中部エリアなど、より西に向かってインフラ投資の盛り上がりが期待される感がある。個々の分野については、コロナ禍でIT投資が落ち込んだ鉄道や空港、道路のほか、改正水道法が成立して3年ほど経ち民営化/民間活用に踏み出す自治体が出てきた水関連分野などでは、インフラ老朽化への対応およびコスト削減への意向が根強く、2023年度頃からは社会インフラITへの投資は拡大基調が加速すると予測する。

※国土交通省関係補正予算で「防災・減災、国土強靱化の推進など安全・安心の確保」(約1兆4千億円)を目的とした、令和3年度の補正予算が閣議決定されている。しかし、本調査の市場規模には反映していない。

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参考:このレポートに掲載されている主なデータ一覧

■社会インフラITの概況

  • 社会インフラITの全体イメージ
  • 社会インフラの対象分野
  • 社会インフラITでの対象業務
  • 社会インフラITマーケット分析での考え方
  • 建設後50年以上経過する社会資本の割合
  • 社会インフラ分野をターゲットとするIoTベンチャーの特徴
  • インフラ/エネルギー/防災をターゲットとする参入事業者の内訳
  • 見える化による効果
  • 社会インフラ向けITソリューションが期待される背景
  • 社会インフラ向けITソリューション活用効果
  • 社会インフラでの国内ローカル5G市場規模推移(2020~2025年度予測)
  • 主要企業の5Gソリューションへの取り組み
  • インフラ施設/エネルギー設備保全向け現場作業支援事例
  • インフラ施設/エネルギー設備保全向けの生産性向上事例
  • インフラ施設/エネルギー設備保全向けの研修・トレーニング事例
■社会インフラIT市場概要
  • 社会インフラIT市場規模推移(2017~2025年度予測)
  • 社会インフラ向けITソリューション市場規模推移(2019~2025年度予測)
  • 社会インフラIT市場における社会インフラ向けITソリューション比率
  • 分野別の社会インフラIT市場規模推移
  • 鉄道総研でのR&Dの成果
  • 社会インフラITの地域別構成(2019~2020年度平均)
  • 社会インフラITのメーカーグループ構成(2019~2020年度平均)
  • 公共事業費の推移(2002~2020年度)
  • 公共事業関連予算の内訳(2020年度当初予算額)
  • インフラ保全の背景と期待されるITテクノロジー
  • ITベンダーのIoTソリューション事例(社会インフラ/防災)
  • 日立グループでの主な入札案件(2019~2020年度)
  • 三菱電機グループでの主な入札案件(2019~2020年度)
  • 日本電気グループでの主な入札案件(2019~2020年度)
  • 東芝グループでの主な入札案件(2019~2020年度)
  • 富士通グループでの主な入札案件(2019~2020年度)
  • パナソニックグループでの主な入札案件(2019~2020年度)
  • 日本無線グループでの主な入札案件(2019~2020年度)
  • 三菱重工グループでの主な入札案件(2019~2020年度)
  • その他企業での主な入札案件(2019~2020年度)
  • インフラ対象/インフラ構造物の定量データ
  • 築50年を超えるインフラ割合
■ITベンダーのデータ連携プラットフォーム戦略
  • 都市OS実装エリア数の普及予測シナリオ(2019年度~2030年度予測)
  • スマートシティ市場におけるデータ連携プラットフォーム提供事業者
  • 分散型データ利活用プラットフォーム提供事業者
  • スマートシティにおけるデータ連携プラットフォームの位置づけ

 

■道路関連ビジネスの事業構造

  • 道路の種類・管理主体・総延長
  • 高速道路の種類・管理主体
  • 高規格幹線道路の整備状況
  • 橋梁、トンネルの総延長
  • 主要な道路関連電気・通信系業務メーカー一覧
  • インフラ構造物の診断結果区分
  • 道路施設での2018年度迄の道路点検累積実施状況
  • 道路施設での点検実施状況(2020年度)
  • 建設後50年以上経過する道路橋・道路トンネルの割合
  • 建設後50年以上経過する道路橋の内訳割合
■道路ITビジネスの現状と構造
  • 道路IT市場規模推移(2016~2021年度見込み)
  • 道路管理者別の道路IT市場の内訳(2019~2020年度平均)
  • 道路・橋梁等で推定されるカメラ設置台数の推計」(2020年現在)
  • 自動運転レベルの定義  
  • カテゴリー別の道路ITプレイヤー一覧
  • 道路IT関連プロジェクト一覧:2020年度
■道路ITビジネスの評価と展望
  • 道路ITでの技術取り組み・施策事例

 

■鉄道事業関連ビジネスの事業構造

  • 鉄道事業者一覧・営業距離
  • 鉄道ITでの分野別主要プレイヤー一覧
  • 鉄道事業における主な投資対象テーマ
  • 鉄道等で推定されるカメラ設置台数の推計(2020年現在)
  • 整備中の都市鉄道新線
  • 私鉄大手の大規模設備投資一覧
  • 2018年度迄の鉄道点検累積実施状況
  • 鉄道橋・鉄道トンネルの建設後の経年経過の状況
  • JRグループ各社の情報システム子会社一覧
  • 大手IT事業者の鉄道I
  • 公益鉄道での鉄道IT関連プロジェクト一覧:2020年度
■鉄道ITビジネスの現状と構造
  • 鉄道関連IT市場規模推移(2016~2021年度見込み)
  • 鉄道関連IT市場(2019~2020年度平均)
  • 鉄道事業者別の構成(貨物含む)
  • 東京メトロ設備の2020年度設備投資予算
  • 鉄道ITビジネスにおける課題
  • 鉄道総合研究所 画像・IT研究室の具体的開発内容
  • 鉄道総合研究所 ITモニタリング研究テーマ
■鉄道ITビジネスの評価と展望
  • 環境面での鉄道輸送の優位性

 

■空港関連ビジネスの事業構造

  • 日本の空港と管理主体
  • 空港の利用状況
  • 業務別の空港IT
■空港ITビジネスの現状と構造
  • 株式会社方式での空港事業委託先(国管理空港)
  • 空港IT関連プロジェクト一覧:2019~2020年度
  • 国土交通省・航空局・空港整備予算
  • 空港関連IT市場規模推移(2016~2021年度)
  • 空港IT市場のカテゴリー別構成(2019~2020年度平均)
■空港ITビジネスの評価と展望
  • 空港コンセッションのイメージ
  • 国管理空港の運営委託(コンセッション)に関する検討状況

 

■港湾関連ビジネス

  • 区分別港湾数/港湾管理者数一覧
  • 経過年数別港湾数
  • 港湾取扱貨物量の推移
  • 主な港湾関連施設
  • 用途分類と主な入港船舶の概略
  • カテゴリー別の主要ダムITプレイヤー
■港湾ITビジネスの現状と市場構造
  • 港湾IT市場規模推移(2016~2021年度見込み)
  • 港湾IT市場のカテゴリー別構成(2019~2020年度平均)
  • 港湾IT市場の地域別の内訳(2019~2020年度平均)
  • 港湾IT関連プロジェクト一覧:2019~2020年度
■港湾ビジネスの現状評価と展望

 

■河川関連ビジネスの構造

  • 水系別の河川分類
  • 河川区分及び管理者
  • 都道府県別河川延長
  • 河川法・水防法・その他関連法規の対象範囲
  • 河川管理施設のうち築50年を経過する施設割合の推移
  • 河川関連ITシステムの概要
  • 河川関連での業務区分
■河川ITビジネスの現状と構造
  • 河川IT関連プロジェクト一覧:2019~2020年度
■河川IT市場規模
  • 河川IT 市場規模推移(2016~2021年度見込み)
  • 河川IT 市場メーカーシェア(2019~2020 年度平均)
  • 河川周辺でのITソリューション
  • 河川管理における問題点・課題
■河川ITビジネスの現況評価と展望
  • 河川管理における革新的河川技術プロジェクト

 

■ダム関連ビジネスの事業構造

  • ダム管理での事業主体
  • ダムの用途と目的
  • ダムの目的別分類
  • 経過年数別ダム数
  • 経過年数別ダム数の内訳(地域別)
  • ダムITビジネスの位置づけとビジネス構成
■ダムITビジネスの現状と構造
  • 水管理・国土保全局ダム予算推移(百万円)
  • 情報化施工に向けての5つの重点目標
  • 情報化施工に向けての10の取り組み
  • 情報化施工技術のイメージ
  • ダムIT 市場規模推移(2016~2021年度見込み)
  • ダムIT 市場メーカーシェア(2019~2020 年度平均)
  • カテゴリー別の主要ダムITプレイヤー
  • ダムITモニタリングに関する背景要因
■ダムITビジネスの評価と展望
  • ダム・堰コントロールシステムの概要
  • 有力IT ベンダーのダムIT ビジネス
  • 日立パワーソリューションズのダム放流計画立案支援のイメージ
  • ダムIT関連プロジェクト一覧:2019~2020年度
  • ローカル5Gの普及可能性(社会インフラ)

 

■水関連ビジネスの事業構造

  • 水関連の事業構造
  • 水関連ビジネスでの業界構造
  • 上水道関連業務での主なITシステム
  • 地方公営企業の決算規模の推移(2013~2020年度)
  • 地方公営企業の建設投資の推移(2013~2020年度)
  • 地方公営企業(水道事業)の事業数
  • 地方公営企業(下水道事業)の事業数
  • 建設後50年以上経過する下水道管渠と水関連施設・設備の経年状況
■水関連ITビジネスの現状と構造
  • 収集データ活用によるサービス提供可能性
  • 水関連IT 市場規模推移(2016~2021 年度見込)
  • 有力ITベンダー/設備・機器メーカーの水関連ビジネス
  • 水関連IT関連プロジェクト一覧:2020年度
■水関連ビジネスの評価と展望
  • 水道事業におけるコンセッション事業者の実施不可能/可能な範囲
  • 水関連ICTでの技術取り組み事例

 

■防災/警察関連の事業構造

  • ソリューションマップ
  • 防災/警察関連ビジネスの業務構成
  • 市町村防災無線システムの整備状況
  • 主なインフラでのカメラ設置台数推計(2021年現在)
  • 国土交通省での防災ITの関連する内容
  • 「国土強靱化予算」での防災ITの関連する内容
■防災/警察ITの現状と構造
  • 防災/警察IT市場規模推移(2016~2021年度見込み)
  • 防災/警察IT市場のカテゴリー別の内訳(2019~2020年度平均)
  • 防災/警察IT市場の地域別の内訳(2019~2020年度平均)
  • 主要防災ITプレイヤー一覧
  • 主な防災/警察関連プロジェクト:2020年度
■防災/警察関連ITの現況評価
  • 防災向けAI活用イメージ
  • 有力IT事業者の防災/警察関連ITでの特色

 

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調査要綱

調査対象:官公庁(国土交通省、経済産業省、総務省等)、地方自治体、公的機関(産業技術総合研究所、土木研究所、国土技術総合研究所、各種業界団体)、ITベンダー/SIer、通信事業者、建設事業者、重電メーカー、建設コンサルティング業など
調査期間:2021年5月~11月
調査方法:当社専門研究員による文献検索 / 文献調査、直接面談(オンライン含む)、電話調査など併用

※社会インフラITとは:本調査における社会インフラITとは、①道路(高速道路、直轄国道、国道、地方道、交通管制など)、②鉄道(JRグループ、東京メトロ、私鉄、公営鉄道など)、③空港(拠点空港、地方管理空港、共用空港、その他空港)、④港湾(国際戦略港湾、国際拠点港湾、重要港湾、地方港湾、56条港湾)、⑤河川、⑥ダム、⑦水関連(上水道、簡易水道、下水道、浄水場、排水処理、農業用水など)、⑧防災/警察の8分野の社会インフラITを対象とした。
社会インフラIT市場規模には、工事(電気設備・通信設備/その他工事)、ハードウェア、ソフトウェア、設備・機器、SI、コンサルティング、回線利用料、サービスサポート、保守メンテナンス、要員派遣などを含み、国や地方自治体、インフラ運営事業者の発注金額ベースで算出した。

※社会インフラ向けITソリューションとは:本調査における社会インフラ向けITソリューションとは、レガシーな(従来型の)社会インフラIT(人手を利用して、電気・受配電設備や通信・伝送・情報処理設備、交通情報システムの保全や点検、修理・修繕・改修を行う業務)とは異なる、主にITベンダーが提供するIoTやクラウド、5G/ローカル5G、LPWA、AI(画像解析、音声認識、データ解析など)、AR/VR&スマートデバイス、センサーネットワーク、ドローン、ロボットといったテクノロジーを利用したソリューションを指す。

<市場に含まれる商品・サービス>
①道路、②鉄道、③空港、④港湾、⑤河川、⑥ダム、⑦水関連、⑧防災/警察の8分野の社会インフラIT

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早川 泰弘(ハヤカワ ヤスヒロ) 主任研究員
産業調査/マーケティング業務は、「机上ではなく、現場を回ることで本当のニーズ、本当の情報、本当の回答」が見つかるとの信念のもと、関係者各位との緊密な関係構築に努めていきます。日々勉強と研鑽を積みながら、IT業界の発展に資する情報発信を目指していきます。

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