矢野経済研究所 ICT・金融ユニット

アナリストオピニオン
2022.01.26

「オートモーティブワールド2022」レポート 海外カーボンニュートラル、日本は商用車コネクテッドがリードする!

開催概要

第14回オートモーティブ ワールド 2022」は、2022年1月19日~21日の3日間、東京ビッグサイトにて開催された。同展示会は「第36回 ネプコン ジャパン」等と同時開催されており、出展企業は1,064社。来場者数は同時開催合計で32,795名。長引くコロナ禍のため全参加者に サーモグラフィ等 による体温測定を実施。すべての出入り口に 消毒液 を設置し、セミナー会場では一席飛ばしで座席間隔を確保、入場受付は非対面の自動受付を設置していた。

【写真:マスクを着けて並ぶ入場待ちの列】

【写真:マスクを着けて並ぶ入場待ちの列】

出所:「オートモーティブ ワールド 2022」内にて撮影

期間中は展示会と合わせてカーボンニュートラル、EV(電気自動車)、素材、ソフトウェア、自動運転、MaaS、コネクテッドカーといった、自動車業界注目のトピックを扱う専門技術セミナーが開催された。セミナー受講者数は3日間で10,353名。専門セミナーは合計30枠以上あり、今年はEV(CASEのE,電気自動車)6枠、素材(軽量化等)6枠、車載ソフトウェア5枠、カーボンニュートラル4枠、自動運転(CASEのA)4枠、MaaS(CASEのS)3枠の順にテーマ数が多かった(当社調査による)。

2022年セミナー・テーマの中心は「EV+カーボンニュートラル」

前述したようにセミナーのテーマとしては、ここ数年キーワードの中心であり続けた「CASE」と同レベルに、「素材(軽量化)」「カーボンニュートラル」「ソフトウェア」が食い込んでいるのが今年の特徴といえる。
特に欧州中心に「カーボンニュートラル=EV普及が決め手」と喧伝されており、その定義に従えば、今回のセミナーでは「EV6枠+カーボンニュートラル4枠=10枠」と、やはりここがテーマの中心になっている。さらに素材(軽量化等)6枠についても、EV化により重量増となる車両をいかに軽量化するかという内容が多く、これも加えると「EV6枠+カーボンニュートラル4枠+素材(軽量化等)6枠=16枠」となり、テーマの半数以上が「EV+カーボンニュートラル」の範疇となっていた。

カーボンニュートラルとは、地球規模の課題である気候変動問題の解決に向けて、CO2をはじめとする温室効果ガスの「排出量」から、植林、森林管理などによる「吸収量」を差し引いて、合計を実質的にゼロにすることを意味する。2015年にパリ協定が採択され、世界共通の長期目標として注目されている。本来ならば発電所や工場での削減から手を付けるべきであろうが、欧州では「カーボンニュートラル=EV普及が決め手」というストーリーを喧伝しているのが現状だ。

日本ではカーボンニュートラルについて、欧州とは異なる定義を唱えている。例えばトヨタはカーボンニュートラル達成のためには、EV普及だけでなく、トラック等の長距離輸送車両用にはFCV(燃料電池自動車,Fuel Cell Vehicleの略称)普及が考えられており、また乗用車においても水素エンジンや合成燃料等の技術開発が進められている。さらにはLCA(ライフサイクルアセスメント:Life Cycle Assessment)全体を踏まえた自動車作りが重要であるとしている。LCAとは、ある製品・サービスのライフサイクル全体(資源採取―原料生産―製品生産―流通・消費―廃棄・リサイクル)またはその特定段階における環境負荷を定量的に評価する手法である。このLCAに沿って考えると、カーボンニュートラル的にはむしろHEV(ハイブリッドカー)のほうがEVよりも有効だという声もある。このあたりの是非はまだ微妙で、しばらくは様子見が必要ではあるが……。

それはともかく今回の自動車関連セミナーのテーマの中心は「EV+カーボンニュートラル」であることは間違いない。EVとしては、テスラが一強として市場をリードしている時代を過ぎて、欧州OEMも積極的だし、中国には新興EVメーカが200社以上あるともいわれており、世界中でEVメーカが蠢き出している。

国内市場のリード役は商用車コネクテッド

前述したように、2022年セミナー・テーマの中心は「EV+カーボンニュートラル」であった。現実の市場においても、海外、特に欧州・中国ではEVが注目の的であり、CASEのEが市場をリードしている。しかし、HEV(ハイブリッド自動車,Hybrid Electric Vehicleの略称)を既定路線とする日本国内ではC(CASEのC,コネクテッドサービス)が、それも個人情報保護色が強い乗用車の前に、むしろ商用車向けコネクテッドサービスが市場をリードしているといえる。

その理由はトヨタのITプラットフォーム統合化を目指しての商用車連合設立にある。2021年、トヨタ・いすゞ・日野の商用車連合が発表され、さらに7月にはスズキ・ダイハツも加わった。「ほぼオールジャパン」レベルの商用車連合が立ち上がったといえる。ITプラットフォーム統合化により加入全メーカの車両情報を収集・解析・共有化できるようになっていく。国内商用車における新車の走行データをほぼ全て解析してサービスアプリを構築できるようになるわけだ。

この商用車連合設立は、単に「コネクテッドサービス化」レベルではなく、「ドライバー不足や、増え続ける宅配需要などの解決策としての物流業界全体の再構築」にまで足を踏み入れることになった模様。もしも、それがうまくいけば、国内の物流再構築だけでなく、その成果をもって海外市場(世界の商用車物流網)に進出して拡大を図ることを想定しているという。

もちろん商用車メーカや系列サプライヤなどの純正ベンダばかりではない。これまで物流事業者に向けてデジタルタコグラフ、運行動態管理システム、業務用ドライブレコーダを供給してきた3rdパーティ企業にもチャンスは拡大するものと考えられる。コネクテッドサービスが普及すれば、新車ばかりでなく、保有車両に対してもサービスニーズは高まり、それを提供するのは純正ベンダばかりではなく、むしろアフタマーケットをになう3rdパーティ企業の出番になるからだ。
今回の展示フロアにも、こうした商用車向けコネクテッドサービスの3rdパーティ事業者のブースが複数あった。当レポートでは、そうした企業の内数社を紹介していく。

各社の展示状況

商用車向けコネクテッドサービスにおいて現在注目されているのは、これまでの位置情報アプリ(デジタルタコグラフや運行動態管理システム)に加えて、業務用ドライブレコーダの映像アプリを加えたサービスである。この市場には元々の民生用ドライブレコーダメーカ以外にカーナビメーカ、デジタルタコグラフメーカ、さらにはITベンダまでが参入してきている。
カーナビメーカであるJVCKは、国内では運行動態管理ベンダ及び、損保会社に対して業務用ドライブレコーダを活用したB2Bサービスビジネスを仕掛けている。特に同社の特徴は国内よりも先に海外での活動が広く認知されている点にある。JVCKはASEANの有力配車アプリ運営企業「グラブ(Grab)」立ち上げ時(2015年頃)に、同社に向けてドライバの安全アプリとしてドライブレコーダを導入した。特にインドネシアにおいて「ドライバが乗員から脅される」という事件が相次いだためであった。

2022年現在、コロナ禍の影響でグラブの客送MaaS車両への導入は滞っている模様。しかし、逆に他のASEAN物流事業者などから声がかかってきているという。そこでは「ドラレコの画像アプリ」に「OBDⅡでとった車両データ」を融合させたりするアプリも動き出している。

【写真:JVCKのアピールするスマートシティ想定の見守りソリューション】

【写真:JVCKのアピールするスマートシティ想定の見守りソリューション】

出所:「オートモーティブ ワールド 2022」内にて撮影

デジタルタコグラフメーカのデータ・テックも、ドライブレコーダのソリューションをもってインドネシアに進出している企業の一つだ。2020年に、環境省により選定された公益財団法人地球環境センター(GEC)から交付決定を受け、「インドネシア版セイフティレコーダ(ISR)を用いた運送トラックの燃費改善による低炭素化と物流効率改善への支援実証」を受託した。
本事業では、データ・テック製車載機「セイフティレコーダ(SR)」の技術を現地用途&価格に適合するように、インドネシア国営石油大手Pertamina Patra Njagaと共同開発した。
同社は2021年、兼松のグループ会社になった。兼松とのコラボレーションにより、「海外展開」「営業力強化」「兼松の子会社からの部材調達」などの可能性が広がった模様。

【写真:データ・テックのセイフティレコーダ「SR-LPWA」紹介パネル】

【写真:データ・テックのセイフティレコーダ「SR-LPWA」紹介パネル】

出所:「オートモーティブ ワールド 2022」内にて撮影

アプトポッドはドライブレコーダのハードウェアベンダではなく、そうした車載センサからデータを収集し、クラウドにアップロードし、それらをITで管理する「自動車向け遠隔データ収集ソリューション」を提供している。同社の「intdash Automotive Pro」により「エッジコンピュータでデータ収集」「クラウドへのアップロード」「Webアプリケーション」などの機能を自動車のシステムに仕込んでいる。
「CAN/OBDⅡデータ」、「車載カメラ/ドライブレコーダ」などから、走行中の車両データを収集できる。

【写真:アプトポッドの自動車向け遠隔データ収集ソリューション「intdash Automotive Pro」】

【写真:アプトポッドの自動車向け遠隔データ収集ソリューション「intdash Automotive Pro」】

出所:「オートモーティブ ワールド 2022」内にて撮影

NSWや日本ユニシスのような完全にIT業界のプレーヤも同市場に参入している。
NSWは独立系のSI事業者であるが、ここ数年IoTテレマティクスに注力している。2021年から、モビリティ機器や利用者の動態情報を地図上でリアルタイム管理するNSW-MaaSプラットフォームをベースに、通信型ドライブレコーダと連携したIoTテレマティクスサービス「Drive Tracer(ドライブトレーサー)」を開発・販売している。
ドライブトレーサーは様々な通信型ドライブレコーダと連携が可能で、車両の運行情報を一元管理し、その情報を基に危険運転事象のリアルタイム検出やドライバーモニタリングなどの安全運転管理といった各種業務・サービスのDX実現を支援するクラウド型ソリューションである。
さて、このような国内企業各社は、その技術力を持って、海外市場に進出し大きく成長できるであろうか。

【写真:NSWの通信型ドラレコ連携IoTサービス「ドライブトレーサー」】

【写真:NSWの通信型ドラレコ連携IoTサービス「ドライブトレーサー」】

出所:「オートモーティブ ワールド 2022」内にて撮影

専門技術セミナー

本展示会では専門技術セミナー(有料)も充実しており、専門の講師の講演を聴講する事が可能で、最新の技術やマーケット動向を知る事が出来る。今年のセミナーは合計30枠以上あり、前述したようにEV、素材(軽量化等)、車載ソフトウェア、カーボンニュートラル、自動運転(CASEのA)、MaaS(CASEのS)などのテーマが多かった。
今回の取材は、「①ボッシュの地図ソリューションによるLv3自動運転」「②スマートドライブのMaaSプラットフォーム事業の成功ポイント」「③MIHのEVプラットフォーム」等のセミナーについて実施した。

■ボッシュの地図ソリューションによるLv3自動運転
ボッシュは地図システムにデータ収集・解析を実施させ、Lv3自動運転ドライビングを可能にするシステムを開発している。車両の自動運転機能であると同時に、高度地図システムが自動的に生成されることになる。ここにもMAPという技術において、グーグルに戦いを挑んでいる企業が存在する。

■スマートドライブのMaaSプラットフォーム事業
スマートドライブのシガーソケット型端末では、「スマートドライブ FLEET」というサービスを提供している。同端末とサービスにより業務車両/MaaS車両はコネクテッド化され、各分野のビジネスで展開されている。既に700社に導入されている。

■EVのオープンプラットフォーム「MIH」
MIH(Mobility in Harmony)は、台湾のFoxconn(鴻海)によるEVソフトウェア・ハードウェアのオープンプラットフォームである。
2020年10月の設立から1年余りが経過し、日本をはじめとする世界各国から2,000社を超える企業が開発連合に加わった。かつてない規模のアライアンスが自動車業界に大きなイノベーションをもたらそうとしている。

最後に

世界中でCASEのE(CASEのE,電気自動車)市場がブレイクしようとしている。しかし、HEVを既定路線とする日本国内ではC(CASEのC,コネクテッドサービス)が、それも個人情報保護色が強い乗用車の前に、むしろ商用車両向けが市場をリードしているといえる。この分野に注力し、その成功事例を持って、ASEANや米国、あるいは他の新興国に向けて展開することは、CASE時代の日本自動車産業の方向性として有意義であることは間違いない。

森健一郎

関連リンク

■レポートサマリー
世界のトラック・バス向けコネクテッドサービス市場に関する調査を実施(2022年)
国内の業務用車両/MaaS車両向けコネクテッドサービス市場に関する調査を実施(2021年)
車載ソフトウェア市場に関する調査を実施(2020年)
位置・地図情報関連市場に関する調査を実施(2020年)

■アナリストオピニオン
もはや自動車問題は世界的社会問題である
eパレット(e-Palette)は2020年代の『どこでもドア』である
世界自動車産業はソフトウェアの戦いの時代に
CASE時代の「人馬一体」 ―モビリティとは生きることなのだ―
「オートモーティブワールド2021」レポート
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森 健一郎(モリ ケンイチロウ) 主席研究員
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