昨今、3rdパーティーCookieの利用規制が進んでいる。例えば、AppleのWebブラウザ「Safari」では2020年3月にITP(Intelligent Tracking Prevention)のアップデートにより3rdパーティーCookieがブロックされる仕様となったことや、GoogleではWebブラウザ「Chrome」における3rdパーティーCookieデータのサポートを2023年以降、段階的に廃止していくことを発表している。Googleでは、ユーザーのプライバシーを保護しながらユーザーに関連性の高い広告を配信できる仕組みとして「Privacy Sandbox」を提案するとしているが、先行きは不透明である。
弊社では2021年6月~9月にかけて、デジタルマーケティング市場の中でもDMP市場、MA市場、CRM/SFA市場を対象に調査を実施し、3rdパーティーCookieの利用規制にともなうそれぞれの市場への影響を『2021年版 デジタルマーケティング市場の実態と展望~CX向上に向けたツールの活用実態~』にて考察している。ここではその一部を簡単に紹介する。
まず、国内のDMP/MAの市場規模推移についてみていくと、拡大傾向が続いており、2021年のDMP/MA市場規模(事業者売上高ベース)は600億円となる見込みである。コロナ禍を背景に顧客の購買行動のオンラインシフトが進んだことで、ユーザー企業では顧客に関するオンラインデータを収集しやすくなってきているほか、IoTの普及などによって多種多様なデータを収集、共有、分析・活用しやすくなってきている。
そのため、大手企業を中心にCX向上や新規事業の創出などを目的とした、DMPやMAなどのデジタルマーケティングツールにおけるデータ活用がより積極的に取り組まれつつある。
【図表:DMP/MA市場規模推移(2020年~2026年予測)】
矢野経済研究所調べ
注:事業者売上高ベース
注:2021年は見込値、2022年以降は予測値
続いて、3rdパーティーCookieの利用規制がデジタルマーケティング市場にどのような影響を与えるのかについてふれていく。
デジタルマーケティング市場の中でも、パブリックDMP市場への影響が大きく、ポストCookieに向けた取り組みは市場全体での喫緊の課題となっている。パブリックDMP市場では、3rdパーティーCookieを利用したソリューションが中心となっていることから、対応が進まなければ市場成長にマイナスの影響が出ることは避けられないだろう。
対応策として以下の方法などがあるが、市場全体としての方向性はまだ定まっていない状況とみる。
- 各社の独自IDの利用
- プラットフォーマーの共通IDの利用
- CMP(同意管理プラットフォーム)の利用
- リアルタイムオーディエンス解析/類推による顧客セグメントの特定
- コンテキストターゲティング
今後、顧客に配信するコンテンツをパーソナライズ化しマーケティング施策の効果を高めていくことや、オンラインシフトが進んだ顧客の購買行動への対応に向けたデジタルマーケティングツールのさらなる利用が期待されている。加えて、ユーザー企業におけるDXに対する課題意識の高まりや、業務効率化や生産性向上に向けたモチベーションも市場拡大の追い風となるとみる。
一方で、消費者のプライバシー意識の高まりを背景に、引き続きユーザー企業はデータの取得時には目的やデータの取得範囲の明確化や、顧客の同意を得ていく仕組みを確立すること、顧客視点で考えた際に情報提供の対価として適切なメリットを提供していくことが重要なポイントとなる。
ユーザー企業においては、3rdパーティーCookie利用の先行きが不透明であることから、今後ユーザー企業は1stパーティーCookieデータの利用へと舵を切ることも考えられる。そのため、1stパーティーCookieデータを利用しているプライベートDMP/CDPや、MAツールなどの利活用が進むことが期待される。
(宮川典子)
■レポートサマリー
●DMP(データマネジメントプラットフォーム)/MA(マーケティングオートメーション)市場に関する調査を実施(2021年)
■アナリストオピニオン
●顧客セグメントではなく、顧客個人を軸としたデータ管理へ? CDPベンダー トレジャーデータの紹介
●「急成長するマルケト、成長の一因にLaunch Point」
●転換期を迎えた企業のデジタルマーケティング ~テクノロジーの進化で個客マーケティング時代が幕を開ける~【前編】
●転換期を迎えた企業のデジタルマーケティング ~テクノロジーの進化で個客マーケティング時代が幕を開ける~【後編】
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