矢野経済研究所 ICT・金融ユニット

アナリストオピニオン
2021.01.08

空飛ぶクルマ(エアタクシー)の実現性 Part II

家の近くのドローンポートから飛び立って、勤務先のビルに降り立つ...そんな世の中が現実になろうとしている。開発が先行しているのは海外企業である。

約2年前の本稿記事「空飛ぶタクシーの実現性」で取り上げたEhang,(イーハン)やVolocopter(ボロコプター)などの企業は、既にプロトタイプでのテストフライトも行っている。そして、前回の記事で言及しなかったKitty Hawk(キティ・ホーク)もボーイングとのパートナーシップにより、Wisk(ウィスク)として電動垂直離着陸機(eVTOL)の開発を進めており、Verical Aerospace(バーティカル・エアロスペース)は、英国初のフルサイズeVTOLとしてのテストフライトを成功させ、Joby Aviation(ジョビー・アビエーション)はトヨタなどから大型出資を引き出し、Uber(ウーバー)のエアタクシー事業であったUber Elevateの譲渡を受けるなど、新たな企業も頭角を現している。

日本では、政府によって「空の移動革命に向けた官民協議会」が立ち上げられ、経済産業省と国土交通省は2023年の事業開始、2030年の本格普及に向けたロードマップを示した。 空飛ぶクルマは、都市部では交通渋滞に無縁の通勤・通学、離島や山間部では船や車に変わる新しい移動手段、さらには災害時の救援物資輸送など、活躍の舞台は多岐に存在する。

空飛ぶクルマの最大の特徴は、垂直離着陸(VTOL)が可能であることによってごく小さなスペースでも離発着できること、電動パワートレインによって制御が容易であること、自律飛行によって誰でも搭乗できることである。日本でもSkyDrive(写真)やteTra Aviationなどの企業が注目されており、前者は2人乗り、後者は1人乗りの小型機体だが、海外企業の中には、7人の搭乗を想定する大型機体なども、数多くの機体開発が進んでいる。

【展示会「フライングカー・テクノロジー」(2020年11月)でのSkyDriveの機体】

展示会「フライングカー・テクノロジー」(2020年11月)でのSkyDriveの機体

筆者撮影

 

手軽に利用できる移動手段としての新しいモビリティは、社会課題の解決にもつながる。しかし、安全な飛行のためのメカニズムなどの技術的な課題と同時に、例えば民家や道路上を飛行するときの社会の受容性、パイロット不在で自律制御に操縦を任せる時の責任など法的市日など、課題も多い。

日本におけるロードマップでは、まずはモノの移動(物流)からスタートし、地方部でのヒトの移動、都市部でのヒトの移動と段階的な実用化を目指すものとなっている。
制度面でも、テスト飛行の離発着場所・飛行空域の許認可や機体の耐空証明、遠隔操縦や搭載システムによる自律飛行に対する安全性評価基準などを整備するとしている。

一方、海外企業の多くは、自社でエアタクシーとしての事業展開を目指しており、新しいモビリティの創造に着目している。開発機体の製造販売で複数の顧客開拓を狙うより、自社が主体となって運行することで収益を確保し、ノウハウを蓄積しようとするものである。

地域によってエアモビリティに求められる要件は異なる。例えば、離島や山岳地帯が多い日本では小回りの利く小型機体が有利になる場面が多いが、広大な平野部が広がる米国では航続距離の長い大型機体への需要が高いかもしれない。

古舘渉

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古舘 渉(フルダテ ワタル) 主任研究員
新規事業コンサルティング部門、上海現地法人、海外部門を歴任し、新規市場開拓のお手伝いには自信があります。

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