矢野経済研究所 ICT・金融ユニット

アナリストオピニオン
2019.04.08

RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)市場におけるユーザー要望の変遷

2017年度後半から2018年度にかけて、政府による働き方改革推進も追い風となり、大手・中堅企業におけるRPAの導入が広がった。加えて、関連協会・ソリューションベンダー・有力メーカーによる多種多様なイベント・展示会・セミナーが開催され、広範な業界・職種における詳細な導入事例が各種メディアで取り上げられるようになり、「RPAブーム」とも呼べる盛り上がりを見せた。RPA導入を本格的に予算化するユーザーや、自社サービス内に組み込んだSIベンダー、BPO事業者、SSCが増加した。

現在、ユーザー要望は「長期的に/高品質な製品を/将来的な全体適用を踏まえて」「短期的に/できるだけ安く/まずは部分適用から」と二極化している。前者は先行ユーザーや大手・グローバル企業、後者は中堅・中小企業に多い。

これまでのユーザー要望の変遷は、RPAへの認知度が低かった市場黎明期の2015~2016年度では、ベンダーへの依頼内容は「製品・適用業務選定」といったシンプルなものが多かった。しかし、「参入RPAメーカーの増加」「SIerやITコンサルによる付加価値戦略の高度化」「ユーザー自身の成熟・知見蓄積」などの要因を背景に市場が拡大した結果、ユーザー自身によるRPA関連情報の獲得が容易になり、2018年度では製品選定をユーザー自身で行うケースが過半となった。「既に導入したいRPA製品・適用業務は決まっている」「RPAの有用性は既に理解しているため、コストのかかるPoCを行わずに迅速に本番導入したい」といったユーザーが増え、問い合わせ・引き合いからプロジェクト開始までの期間は市場全体で短期化の傾向にある。

RPAソリューション拡大の方向性

2018年度の特徴としては「改善効果の数値化・最大化」「組織運営上の課題解決」「業績・顧客獲得への貢献」など目に見える成果を求める傾向が強まった。加えて、先行ユーザーによる製品・ベンダーの見直し及び切替えが活発化している。主な例としては、

  • デスクトップPC型からサーバー型への移行
  • 有力な複数ライセンスの平衡活用・使い分け
  • 大規模展開・ガバナンス整備を支援してくれるコンサルティング能力のあるベンダーへの切り替え

などだ。

RPA市場の急速な成長を背景に、企業規模に関わらず大半のITソリューションベンダーは何らかの形でRPA事業を開始している。ベンダー側でも、RPA導入作業の習熟度向上とともに、プロジェクト工期の圧縮に繋げている。加えて、ライセンス単価や提供方式の幅も広がった。デスクトップ型に比べて高価なため、初期投資が膨らみがちであったサーバー製品だが、2018年には各メーカーが新たなライセンス形態を小規模(中小企業・単体部署など)向けに提供を開始し始めた。加えて、期間利用できるクラウド型RPA、SIer内製によるデスクトップ型RPAが市場に多数投入された。ソリューション面では、異業種間の活発な協業・製品連携が進み、ソリューションの高度化や複雑性が増している。RPA市場における連携パターンおよび差別化要素として、代表的なものを次に示す。

RPAソリューションにおける代表的な差別化要素

■業務プロセス改善

コンサルティングサービス
RPA専門部隊の設置
●コンサルティング能力とRPAへの知見を有する専門組織の設置
●効果の最大化を目指す進め方、業務プロセス・組織体制の見直し、RPA運用・ガバナンスの設計、新しい働き方や役割を見据えた業務の再構築、デジタルトランスフォーメーションの推進
トータルソリューションの提供
●RPA活用を要件定義・製品選定・導入から運用および保守まで一気通貫で推進、支援を実施

 

■導入工数圧縮

各種技術などの再利用、方法論の提供
●過去のプロジェクト実績及び導入効果の実現に基づいた、すぐに利用可能なツールや方法論の提供
●ロボットテンプレート活用による低コスト・短期間でのロボット作成
●グループ全体で共通の「RPA専門部隊(ソフトウェアロボット作成部隊)」や開発標準、多様なロボットテンプレートを持ち、ロボットの開発効率と品質向上を実現

 

■内製化・サポート提供

開発者育成サービス・内製化プログラムの提供
●RPAの効果を最大限に引き出すには、クライアント企業内部に運用できる人材の配置が重要。ユーザー自身が外注せずに社内でロボットを作成・運用するための教育や支援を実施
保守・運用支援
日本語サポート
●RPAの保守・運用も支援し、また最適な運用モデルの提案を行う
●販売特約店や技術者の多さ、広域な地域、24時間365日対応可能などといったサポート体制の整備
●海外製品における日本語サポートの強化

 

■ソリューション範囲の拡大

総合ソリューションの一部分として提供
●「業務改革ソリューション」「働き方改革ソリューション」などの1要素としてRPAサービスを提供
特定業界・職種向けソリューション
●特定業界(金融・製造・流通など)、特定職種(経理・人事・サーバー監視など)向けに特化したRPAソリューションを提供

 

■提供価格

料金プランのバリエーション
●業務量の変化やスポット対応に柔軟に対応できる時給制・従量課金制プランの提供
●各種プランの組み合わせにより、個々の業務に適したプランを採用し、セキュリティ面およびコスト面での最適化を図る

 

■RPA製品ベンダーとの連携

マルチベンダー
●特定ベンダーに捉われないマルチベンダー体制をとり、顧客に最適な製品を提案する
特定ベンダーとの連携・協業
●特定、あるいは複数の主要ベンダーとの強固な関係により、効果的なベンダ連携が可能となる

 

■他サービス・技術との組み合わせによる高度化

既存パッケージ・システム
+RPA
●ERP(基幹業務システム)、CRM(顧客管理システム)、BIツール、経費精算システムなどの既存パッケージと組み合わせたRPAソリューション
BPM・ワークフロー+RPA
●BPMやワークフローとRPAを組み合わせた業務プロセス改革ソリューション
●業務プロセスのパフォーマンス測定が可能となり、ROI計測やPDCAサイクルによる改善を目指す
OCR+RPA
●物理的な紙情報を電子化するソリューション
●2017年度後半から2018年度には、SIerと複合機メーカーの協業など、多くの事業者によるソリューション化が進む見通し
●読み取り精度向上のためにAI活用(OCR+AI+RPA)への試みが注目されており、ソリューション化を実現する事業者が現れ始めている
BPO+RPA
SSC+RPA
人材派遣+RPA
●従前、人間のリソースのみで進めていた業務を、ロボットを活用することにより、同じコスト・同じ処理時間でパフォーマンス向上を実現
●効率化に加え、処理業務の可視化・標準化・高度化を目指す
AI/Cognitive+RPA
●OCRやチャットボットでの取り組みが進んでいるが、現時点で提供している事業者は一部である
●Class2(一部非定型業務の自動化)、Class3(高度な自動化)の実現には必須となる 。事業者各社は、研究開発や技術提携によってソリューション化への取り組みを進めている

矢野経済研究所作成

既にソリューションベンダーの間では、「RPAは、環境構築だけでは収益性が低い」という認識が生まれていることに留意する必要がある。業務の内製化が利点の一つとされるRPAでは、ユーザーがロボットを自作し「ごく限られた領域で小規模的な自動化」を図ることは、さほど難しくはない。しかし、

  • 拠点・部署横断、グループ企業適用にも耐えうる標準化
  • ロボットの開発効率を高めるロボット本体やパーツの共通化
  • 組織体制や業務プロセスの全体を踏まえての業務改革

といった観点でユーザーが内製化を図るには限界があり、この部分でこそユーザーのニーズと事業者の収益性が両立できる。また、AI・OCR・BPMなど、RPA×他ソリューション・サービスといった連携案件によって、ソリューション付加価値を高める動きは今後ますます加速するだろう。

関連リンク

■レポートサマリー
RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)市場に関する調査を実施(2018年)

■アナリストオピニオン
急成長するRPA市場、ソリューションおよび参入事業者の多様化が進む

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加藤 佳奈(カトウ カナ) 研究員
ICT先進国である我が国において、どの業種においても「ICT利活用」が企業の課題解決および成長における重要項目になっています。個々の事象を明らかにするだけでなく、「本質的な課題」と「業界・市場全体における位置づけと影響」、そして「将来予測」の観点を含めた調査・分析を行うことで、企業の成長・発展のお役に立ちたいと考えています。

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