矢野経済研究所 ICT・金融ユニット

アナリストオピニオン
2009.06.30

情報システム子会社は企画・運用プロセスを強化せよ

情報システム子会社の注力すべき業務

筆者が前回執筆したアナリストオピニオン「情報システム子会社の目指すべき経営戦略とは」では、内販や外販の各課題を解決し、相乗効果を発揮した経営をできれば、情報システム子会社には飛躍のチャンスがあると述べた。では、具体的に、情報システム子会社はどの業務プロセスに注力したら良いのだろうか。

情報システム子会社の業務は、大きく以下の3つに分けられる。

  1. システムの企画プロセス
  2. システムの開発プロセス
  3. システムの運用プロセス

「1.企画プロセス」とは、顧客企業の業務を踏まえてニーズを整理・把握してソリューションを提案するもの、「2.開発プロセス」は企画したシステムを構築するもの、「3.運用プロセス」は開発したシステムの運用を請け負うものである。
情報システム子会社は、親会社が企画したシステムを開発プロセスから請け負うケースが多いため、企画プロセスに参加できてない企業が多い。また運用に関しても親会社の情報システム部門が行なうケースが多いため、運用プロセスに関わってない情報システム子会社が多い。

しかしながら矢野経済研究所では、今後情報システム子会社が成長していくためには、企画プロセスと運用プロセスに注力していくべきと考える。この2つのプロセスに注力することで、情報システム子会社の収益構造が改善される上に、親会社へのサービスレベルの向上や外販展開に繋がると考えるからである。
以下、アンケート結果を基に、情報システム子会社における企画プロセスと運用プロセスについて見ていくことにする。

企画プロセスへの参加

矢野経済研究所で発刊したレポート「情報システム子会社の経営実態 2009 」では、情報システム子会社66社にアンケートを行なった。そのなかの質問「企画プロセスへの参加の程度」に対する回答結果を情報システム子会社の営業利益別に集計すると、図1のようになった。

【図1】営業利益率別「企画プロセスへの参加の程度」の集計結果
情報システム子会社の営業利益別「企画プロセスへの参加程度」グラフ

図1を見ればわかるように、「主に開発プロセス(設計:開発)から参加」のと回答した情報システム子会社の構成比は、営業利益率が高くなるほど低下しているのに対して、「親会社の主導だが、自社メンバーも企画に参加」と回答した情報システム子会社の構成比は、営業利益率が高くなるほど構成比が高くなっている。この結果から、営業利益率の高い情報システム子会社ほど、企画プロセスに参加していることが見て取れる。
このような結果になったのは、企画プロセスに参加できている情報システム子会社は、より早い段階で親会社情報を入手でき、自社のリソースプランニングを行なうことができるためと推測する。また、ここから企画プロセスへの参加が、情報システム子会社の収益構造を改善する可能性があると考える。

次に親会社が情報システム子会社に期待する内容を見てみたい。
「情報システム子会社の経営実態 2009」では、情報システム子会社を持つ親会社20社に「今後期待する子会社の取り組み」を質問しており、結果は図2のようになった。

【図2】今後期待する子会社の取り組み
情報システム子会社に対して親会社が今後期待する取り組み(グラフ)

図2を見ればわかるように、親会社が情報システム子会社に最も期待する取り組みは、企画プロセスともいえる「IT活用によるグループ競争力への提案」であった。親会社も情報システム子会社からの企画・提案を求めていることが見て取れる。

その他「情報システム子会社の経営実態 2009」では、情報システム子会社の持つ強みに関して親会社と情報システム子会社の双方に質問しているが、双方とも「親会社業務の熟知」の回答が最も多かった。企画プロセスにおいて必須となる業務知識を豊富に有している情報システム子会社が、企画プロセスに参加できていないのは、非常にもったいない話である。

これらのアンケート結果から、矢野経済研究所では、今後情報システム子会社は、企画プロセスに積極的に参加するべきと考える。情報システム子会社は企画プロセスに参加することで、自社の収益構造を改善できる可能性がある。また、自社の持つ親会社の業務知識を活かすことができ、親会社の期待に応えることもできる。さらに、企画提案能力が向上すれば、外販における顧客獲得能力の向上も期待できる。

運用プロセスの強化

次に運用プロセスだが、情報システム子会社は、親会社の情報システム部門が運用を行なうケースが多いため、運用プロセスに関わっていない企業が多い。しかしながら、矢野経済研究所では、今後情報システム子会社が成長していくためには、運用プロセスを強化していくべきと考える。運用サービスは、スポットで発生する開発案件と違い、継続的に提供するサービスであるため、情報システム子会社の収益安定化に繋げることができるからである。また親会社へのサービスレベルの向上や外販展開に繋げることができる可能性もある。

「情報システム子会社の経営実態 2009」では、情報システム子会社66社に「全体粗利益率と比較した運用(内販)の粗利益率」に関して質問しており、その結果は図3のようになった。

 

【図3】運用の粗利益率(内販)
情報システム子会社における運用の粗利益率(内販)

全体粗利益率よりも高いと回答した「全体粗利益率より若干高い」~「全体粗利益率より大幅に高い」の回答構成比合計は41.0%であり、運用(内販)の構成比が全体粗利益率よりも低いと回答した「全体粗利益率より若干低い」~「全体粗利益率より大幅に低い」の回答構成比合計21.2%よりも大幅に高い結果になった。
「情報システム子会社の経営実態 2009」では、情報システム子会社に対し、同様の質問を内販外販別の開発と運用に関しても行なったが、他の結果では、このような大きな差は見られなかった。
総じて内販の利益設定は外販よりも厳しい傾向にあるといわれているが、その中で運用(内販)は情報システム子会社にとって、比較的利益を確保しやすいと取れる結果であった。

次に親会社の情報システム子会社に対する評価を見てみたい。
「情報システム子会社の経営実態 2009」では、情報システム子会社を持つ親会社20社に「情報システム子会社の現在の評価」を質問しており、結果は図4のようになった。

【図4】情報システム子会社の現在の評価
親会社の情報システム子会社に対する評価(グラフ)

ここでは、「コンサルティング力」「ソリューション提案力」「技術力」「サポート体制」「コスト」「対応のスピード」の6つの項目について、「大変満足」「満足」「不満」「大変不満」の4段階で評価してもらった。
図4の結果を見ればわかるように、「大変不満」の構成比合計が最も高かったのは「サポート体制」であった。さらに「大変不満」に「不満」を合計すると85.0%にもなった。親会社は、現状の情報システム子会社 のサポート体制に不満を感じていることがわかる。

また前掲した図2「今後期待する子会社の取り組み」を見ればわかるように、親会社が子会社に今後期待する取り組みの中で、「サポート体制の充実」は2番目に多い回答であった。これらから、親会社は、現状の情報システム子会社 のサポート体制に不満を感じており、今後の取り組みに期待していると推測できる。

これらのアンケート結果から、矢野経済研究所では、今後情報システム子会社は、運用プロセスに積極的に取り組んでいくべきと考える。運用プロセスに参加することで、自社の収益構造を安定化できる可能性がある。また、親会社は情報システム子会社のサポート体制に不満を感じており、今後の取り組みに期待しているため、その期待に応えることができる。さらに、運用は、継続的に提供するサービスであるため、外販で既存顧客を増加できる可能性もある。

情報システム子会社が、親会社をITの側面から支援していくためには、自社が成長していく必要があるだろう。自社の経営に行き詰っている状態では、親会社の支援などできるわけがないからである。
そのために、情報システム子会社としては、まずはこれまで取り組みが弱かった企画プロセスと運用プロセスを強化することで、収益構造の改善を進めたい。収益構造が改善できれば、親会社へのサービスレベルの向上に繋がる上に、外販展開を強化する余裕が生まれてくるだろう。情報システム子会社は、親会社のIT戦略を支えていける存在になるためにも、これらの取り組みにより自社を成長させていきたい。

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石塚 俊(イシヅカ タカシ) 主席研究員
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