矢野経済研究所 ICT・金融ユニット

アナリストオピニオン
2015.09.10

注視したい「自治体向けソリューション市場」の動向

2015年度でピークを迎える「マイナンバー特需」

弊社では、2014年12月~2015年1月にかけて全国の地方自治体1,788団体に対して「システムの導入状況に関するアンケート」を実施し、385団体から回答を得た。
図表 1は、「マイナンバー制度に対応したシステムの入れ替え時期」を質問した回答結果である。全体では「入れ替え投資済」が半数を超えており、「半年以内」「1年以内」を加えると9割を超える自治体が2015年末までにシステム入れ替えを完了する見通しである。前年版調査では「2年以内」との回答が2割弱あったが、今回の結果と比べると、着実にシステム入れ替えが実施されているものとみられる。
(※「① マイナンバー制度対応のためのシステム入替計画の有無」の質問で「計画予定なし」「不明」と回答した自治体を除く。)

【図表1:システム入替の投資の開始時期(SA)】

【図表1:システム入替の投資の開始時期(SA)】

矢野経済研究所調べ

図表2は、前述したアンケート結果などを踏まえて弊社が自治体向けソリューション市場の規模推移を予測したものである。数値は情報システム部門以外の部門のIT経費も対象にしており、また都道府県及び市区町村の両方を対象に推計した。

【図表2:自治体向けソリューションの市場規模推移予測(2012年度~2018年度)】

【図表2:自治体向けソリューションの市場規模推移予測(2012年度~2018年度)】

矢野経済研究所推計

弊社の推計では、自治体向けソリューション市場の規模は2015年度がピークになると推計する。
マイナンバー社会保障・税番号制度は、2015年10月に付番開始、2016年1月に個人番号利用・個人番号カードの交付が予定されている。各自治体では、既存システムの更新時期や予算、職員などの人的リソース、IT環境整備に関する方針などの個別の状況に応じてマイナンバー制度への準備が進めてきた。しかしながら、制度対応への方針が決まらないことなどから導入が遅れたり、システム設計の段階で留まっている自治体も多かったため、2014年度の前年度比は4.3%増に留まった。

2015年度は、10月に国民へマイナンバーが通知されるため、対応の遅れた自治体でもシステム改修を進めると考えられる。そのため、マイナンバーを背景とした需要がピークを迎え、前年度比7.0%増になると予測する。
このように、自治体ソリューション市場では、本年がマイナンバー特需のピークとなる予測となるため、IT事業者は自社が顧客とする団体の需要を万が一でも取りこぼすことがあってはならない。

なお、自治体の対応としては、既存システム改修とクラウド化を含めた新システム調達の二つに分かれる。また、自治体ごとのハードウェア・ソフトウェア更新時期と制度導入のスケジュールによって、システム調達・改修の時期が番号の付番開始の後にずれ込む自治体も出てくるとは予想されている。

マイナンバー対応を契機に検討が進む「自治体クラウド」

自治体クラウドは、ここ数年、マイナンバー対応を契機に検討されるケースが増えている。クラウドサービスは、従来のパッケージ導入のような大きなイニシャルコストが不要のため、単年度予算でのシステム運用となる自治体には最適なソリューションとされる。ハードウェアや運用のためのTCO削減が可能であり、IT予算規模の小さな町村など小規模自治体には有効と言われている。マイナンバー制度を機に、既存システムの改修あるいはクラウド化といった選択肢が用意され、個別の自治体ごとに最適なシステム運用の検討が進んでいる。

図表3は、今回実施した自治体向けのアンケートにおいて自治体クラウドの導入状況を質問した結果であるが、前年版調査と比較すると、「導入済み」との回答率は7.0ポイント高まり23.6%となっている。「導入中」との回答率も高まり、「導入検討中」は低下していることから、実際の導入段階に移っている自治体が増えていると考えられる。「未検討・今後検討予定あり」との回答率は高まる一方で、「未検討・今後検討予定なし」は低下しており、今後も自治体クラウドの導入が進んでいく可能性は高い。

【図表3:自治体クラウドの導入状況(SA)】

【図表3:自治体クラウドの導入状況(SA)】

矢野経済研究所調べ

「マイナンバー特需後」の自治体向けソリューション市場

2016年度以降の自治体ソリューション市場は、2015年度まで続いたマイナンバー制度関連需要の勢いがなくなる他、クラウドの普及が改修コストや運用コストを低下させていくと想定されるため、2016年度は前年度比6.7%減、2017年度は前年度比0.1%減になると予測する。

このように、2012年度~2018年度における自治体向けソリューション市場では、マイナンバー制度が大きな成長要因になっている。特に2014年度~2015年度に市場が伸長、2013年度~2015年度の年平均成長率を見ると5.6%となる予測である。しかしながら、2012年度から2018年度の自治体向けソリューション市場の年平均成長率(CAGR)は0.0%と横ばいの推移に留まる予測となる。

しかしながら、弊社では、2018年以降からは、2020年東京オリンピックに向けた公共インフラや観光関連の需要が想定される他、マイナンバーを活用した官民連携が進んでいくと想定しており、自治体向けソリューション市場は再び成長に向かうと予想している。そのため、たとえ2016年度以降からしばらくの間、自治体向けソリューション市場が低調な推移が続いたとしても、IT事業者は自治体向けソリューション市場に引き続き注力していくべきと考える。

関連リンク

■レポートサマリ
自治体向けソリューション市場に関する調査結果2015
自治体向けソリューション市場に関する調査結果 2014

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石塚 俊(イシヅカ タカシ) 主席研究員
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