矢野経済研究所 ICT・金融ユニット

アナリストオピニオン
2014.05.29

クラウドソーシングが持つ可能性を検討したい

注目されているクラウドソーシング

クラウドソーシング(crowdsourcing)とは、インターネットを使った外部委託(アウトソーシング)の新形態であり、「インターネットを介在として、不特定多数の人々に業務を委託するサービスのこと」を指す。

日本では、少子高齢化が進んでおり、労働力人口の減少は避けられない状況となっている。女性や高齢者の労働参加が全く進まない最も悲観的なシナリオの場合、労働力人口は2060年に3,795万人と2013年より42%減少する。国や企業は「高齢者の65歳までの雇用継続制度の導入」や「育児休業制度の充実」などで、高齢者や女性の労働参加の促進を目指しているが、30~49歳の女性労働力率を先進国最高のスウェーデン並みに引き上げ、60歳以上の労働者の引退年齢を5年遅らせた場合でも4,792万人と2013年比で27%減少すると言われている。

一方では、オリンピックを見据えた建設ラッシュが予想されることや景気が回復してきていることなどから、人材の不足感は既に高まってきている。飲食業などでは外国人労働者の受け入れが進められているものの、言語や文化の違いなどがあるため、すべての業種で外国人労働者を受け入れていくのは現実的ではないと言われている。

そのような状況の中で、女性や高齢者の労働参加を促す可能性を秘めているクラウドソーシングサービスが注目されている。
女性は、結婚や出産によってキャリアの空白が生じてしまうケースが多く、女性の年齢別就業形態のグラフは、20歳代半ば~40歳代半ばまでの間に就業率が一時的に落ちる「M字型」になっている。育児休暇制度や児童保育所などの整備が進められてはいるものの、出産や子育てのために職を離れる女性は依然として多いのが実態である。
一方、高齢者は、定年退職後も働く意志や能力を持っている人が多いものの、これまで積み重ねてきた経験や能力を活かすことができる仕事をなかなか見つけることができていないのが実態である。

しかし、クラウドソーシングでは、フルタイムでの就業や時間の制約があるパートタイマーとして働くことが難しい主婦でも、空き時間に自宅で仕事をすることが可能である。
また、高齢者にとっても、まったく未知の仕事や体力仕事ではなく、今までの自分の経験や能力を活かすことのできる仕事を見つけやすい。
このように、クラウドソーシングは、女性や高齢者の労働参加を促し、今後深刻化していく労働力問題を解消していくことができる可能性を秘めている。

クラウドソーシングのメリットとデメリット

業務の発注側がクラウドソーシングサービスを利用するメリットは、コストを削減できることである。一般的なアウトソーシングサービスでは、アウトソーシングサービス提供会社の運営費まで含めた金額を支払う必要があるが、クラウドソーシングサービスでは、個人に業務を直接委託できるため余分なコストを支払わなくて済む。

一方、デメリットは、委託したワーカーのディレクションを自社で行わなければならず、アウトソーサーに委託するようには丸投げをできないことである。

次に、業務の受託者側のメリットは、場所と時間を選ばない働き方が可能になることである。また、数ある仕事の中から自分の能力にあった仕事を選択できることもメリットである。その他、クラウドソーシングでは、クライアントとのやり取りをメールで行うため、移動のための時間、労力、コストが不要であり、それもメリットと言える。

一方、デメリットは、フリーランスへの直接委託によりコストを削減したいという意向を持った企業が多く利用するため、低単価となりやすいことである。また、インターネット上でのやり取りで、人件費の安い海外の人材でも業務を請け負うことが可能となるため、将来的にさらに単価が下がっていくとも言われている。

このようなクラウドソーシングのデメリットに関しては、クラウドソーシング事業者が改善に向けた取り組みを進めている。
例えば、発注者側のデメリットである業務を丸投げできないというデメリットに対しては、ワーカー同士でチームを組ませてリーダーを設定し、会社組織のようにクライアントに対応可能な制度を設ける事業者が出てきている。またクラウドソーシング事業者自らがクライアントの業務を受託し、登録したワーカーの管理まで行っているところもある。

また受託者側の低単価な業務が多いというデメリットに対しては、フリーランスのスキルや経験を可視化することで、スキルや経験を積んだフリーランスが、高い単価の仕事を選びやすくしている。

クラウドソーシングは、日本の労働力人口の減少を解決する可能性を秘めたサービスであるが、まだ普及が進んでいるとは言い難い状況にある。今後クラウドソーシングが普及していくためには、前述したようなデメリットの解消やメリットを活かす方法の検討がなされていかねばならないだろう。

クラウドソーシングを会社の就業形態の一つとしてはどうだろうか

最後に、アイディアレベルで恐縮だが、クラウドソーシングのメリットを活かす方法の一つとして、「会社の勤務形態の一つとしてクラウドソーシングを採用する」ことを検討してみたい。
例えば、会社に雇用されている従業員がクラウドソーシングサービスと同様な形態で、オンラインで会社とつながり、在宅で勤務できたらどうだろう。従業員は、これまでのように満員電車に乗って通勤する必要がなくなり、浮いた時間で家事などをすることが可能になる。また、時間や場所を選ばない働き方が可能になれば、女性がM字カーブに当たる時期にも仕事を継続しやすくなるであろうし、定年退職後の高齢者も自分が経験を積んできた仕事を継続しやすくなるだろう。

一方、会社側としては、従業員の多くが自宅等で働くようになれば、通勤費を削減できる上に、オフィスを小規模にすることができるためオフィスの賃料も削減できる。

また社員が時間や場所を選ばないで働くことができるようになるため、結婚や出産、夫の転勤などによる優秀な女性社員の離職を減少させることができる。もちろん、定年退職後の高齢者にも継続して働いてもらいやすくなり、さらに、繁忙期だけ退職後のOBに業務を委託するなどといった取り組みも可能になる。

その他、オンライン上で社員をマネジメントするためには、ある程度業務を定型化する必要があるため、クラウドソーシングの導入を業務の属人化を解消するきっかけとすることもできる。業務を定型化しておけば、将来的に従業員数が減少してきた時に、社外人材への委託に切り替えやすく、経営のスリム化につなげていきやすいだろう。
もちろん、クラウドソーシングを悪用してリストラを進める企業が出てくるなどいいことばかりではないかもしれない。しかしながら、従業員側と企業側の双方にメリットを生み出す可能性があるため、「会社の勤務形態の一つとしてクラウドソーシングを採用する」ことの是非を一度は検討してみてほしいところである。

関連リンク

■レポートサマリ
クラウドソーシングサービス市場に関する調査結果 2014
BPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)市場・クラウドソーシング市場に関する調査結果2013
BPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)市場に関する調査結果 2012

■アナリストオピニオン
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石塚 俊(イシヅカ タカシ) 主席研究員
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