矢野経済研究所 ICT・金融ユニット

2019.06.18

【アナリストオピニオン】危機的状況にあるHuawei(ファーウェイ/華為技術)の現状と市場見通し②

Huawei製スマートフォンの仕向地別の構成比は中国が約9,000万台で全体の44%に達する。米国市場は元々少なく2018年はごく少数に留まっている。一方、日本、ASEAN諸国、インドを含むアジア市場や欧州市場等でもシェアを急拡大させており、存在感は高まるばかりであった。

Huawei製スマートフォンが市場で出荷台数を伸ばした背景には、
①販売力
②商品力
③ブランド力
の全てが備わっていた訳だが、今回の件で商品力とブランド力は大きく毀損した。
またスマートフォン以外にタブレット、Wi-Fiルーター、WindowsモバイルPCなども手掛けており、今後はスマート家電分野への進出も計画されていた。

報道されているように、Googleとの取引が不可能となったことでAndroidOSについて、今後発売が予定されている新製品へのAndroid搭載が不可能となった。また既存製品のOSのアップデートが出来なくなる可能性や、Googleが提供する各種サービスが使用できなくなる可能性も指摘されている。また、同社製品が数多く搭載する(米)Qualcomm製チップセットの調達も不可能となり、市場へ競争力のある製品の導入が難しくなった。
更に追い打ちをかけるように(英)ARMのCPU製造におけるライセンス供給の停止に加え、SDアソシエーションの会員名簿からHuaweiの名前が削除されており、ハードウェア製造においても大きな影響が出始めている。今後、更に他のライセンスを使用できなくなる懸念も生じる。

Huaweiも既に対策を講じており、部品在庫の積み増しを図っているもののあくまで短期的なものである。またOSやチップセットも自社開発を表明しているが実現性に疑問が出始めている。

一方で中国国内ではHuaweiを擁護する動きが活発化しており、同社製品の購買運動や同社の元従業員が無償で働くといった本来、中国人には希薄だった団結感や愛国心が生まれている点は注目に値する。

混迷するスマートフォン市場 各国の状況は

Huaweiが市場から排除される事による市場への影響だが、政治的要因があまりにも強い事から全く見通せない。

同社にとって最大市場である中国市場ではApple製品の不買運動が懸念される。一方で制裁を逃れた中国メーカー各社は漁夫の利を得るべく攻勢をかける筈でXiaomi(シャオミ/小米科技)、OPPO(オッポ/欧珀)、Vivo(ヴィーヴォ、ビボ)といった大手メーカーは恩恵を得られる可能性が高い。

米国市場では既にHuaweiは排除されており、影響は軽微である。日本市場では大手通信事業者各社が夏季商戦向けに採用を強化していたところなので出鼻を挫かれた格好である。MVNO各社も新製品の販売延期を発表しており、他社製品での穴埋めを迫られている。

ASEAN、インド市場ではHuaweiはサムスン電子、OPPO、Vivo、Xioamiといったメーカーと厳しい競争を強いられており、後退を余儀なくされる。

欧州市場では、サムスン電子、Apple、LG等にとって有利な状況なものの、OPPO、Xiaomiが進出し始めており、新興勢力が大きくシェアを伸ばすチャンスとなるかもしれない。

アフリカ市場ではHuweiは先行するTRANSSION(伝音)を追撃すべく攻勢を掛けていたが、やはり後退を余儀なくされる。一方で途上国では価格が優先されることもあり、自社開発のOS、チップセット開発に成功し、上手く製品に反映されれば芽はあるかもしれない。

スマートフォン市場は出荷台数が頭打ちの状況にあり、Huaweiの問題が市場にどのような影響を齎すかは読みにくい状況にあるが、もしHuaweiのスマートフォンが市場から消える状況になれば市場バランスは大きく変貌することになるかもしれない。(賀川勝)

*全文は以下よりご覧いただけます

https://www.yanoict.com/opinion/show/id/265

賀川 勝(カガワ スグル) 上級研究員
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