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【現地特別レポート】3次元CAD分野における世界最大のイベントSolidWorks WORLD 2009
「【現地特別レポート】3次元CAD分野における世界最大のイベントSolidWorks WORLD 2009」 小見出し一覧
- 3次元CADの新しい潮流-累積出荷100万台達成が間近に迫るSolidWorks
- 注目されるSolidWorks 2010の「環境を考慮した設計の検証機能」
- SolidWorks 2010の「インポートモデルの直接編集機能」
- ものづくりの知財を蓄積するツールとして3次元CADを利用
- まとめ-SolidWorks WORLD 2009を取材して
- 関連リンク
3次元CADの新しい潮流-累積出荷100万台達成が間近に迫るSolidWorks
「SolidWorks WORLD 2009」初日のゼネラル・セッションでは、米国ダッソー・システムズ・ソリッドワークス社CEOであるジェフ・レイ氏が挨拶の後、同社の今後の方向性についての説明を行なった。
ここでのポイントは、現在、半数以上のSolidWorksユーザーが業務時間の70%においてSolidWorksを使用している、という調査結果が得られたこと。そのような状況から、ダッソー・システムズ・ソリッドワークス社は「マンマシン・インターフェースの向上こそが、システムの利便性を向上させるために、改良すべき大きなポイントである」と捉えているということであった。
また、ジェフ・レイ氏は、ゼネラル・セッションの後、日本からの取材陣のインタビューにも応じ、SolidWorksの累積出荷台数が2009年前半に100万台を超える見込みであることを明らかにした。SolidWorksは、現在、市場に出ている3次元CADのなかで、最大の出荷台数を誇っている。すなわち、SolidWorksは、世界で最も多くのユーザーに使われている3次元CADなのである。SolidWorksの戦略は開発時点から明確であり、以下の3つであった。
- Windowsを基本OSとしてパソコンで稼動すること
- 誰にでも簡単に操作できること
- 低価格であること
この戦略は大きな成功を収めた。100万台に迫る台数のSolidWorksが出荷された理由は、SolidWorksが3次元CADユーザーのニーズを満たしているから、とみることができる。
それまでの3次元CADは、主としてUNIXをOSとしてワークステーションで稼動し、特別に訓練された技術者だけが操作でき、また1台につき数百万円以上もする高価格なシステムであった。それに対して、SolidWorksは画期的な製品であったといえる。そして、3次元CADユーザーのニーズに応えたのである。
今日では、ほとんどの3次元CADはWindowsを基本OSとしており、また、低価格化も進んだ。しかしながら、誰にでも簡単に操作できることについては、SolidWorksはこの領域の先駆者として、他社の追随を許さないものがある。わかりやすいメニュー体系、直感的に理解できる操作など、いわゆるマン・マシン・インターフェースが優れているのである。
3次元CADは今日、技術者にとっての道具のように普及したものの、その操作はまだまだわかりづらく、使いこなすには特別な訓練を必要としている。もちろん、ユーザーにとっては、簡単に使いこなせる方がいい。設計部門にとっては、新しく入ってきた技術者が戦力になるにあたって、教育期間が短い方がいいからだ。
これまで、3次元CADメーカー各社は、マン・マシン・インターフェースの改善について、あまりにも冷淡であった。今後の3次元CADにおける新しい潮流を考えるうえで、マン・マシン・インターフェースの改善は、大きなポイントとなるであろう。SolidWorksは、マン・マシン・インターフェースの改善こそが、3次元CADの新しい市場をつくるということを、先駆者として実証してみせているのである。
注目されるSolidWorks 2010の「環境を考慮した設計の検証機能」
前述のように、「SolidWorks WORLD 2009」では、SolidWorksの次期バージョンであるSolidWorks 2010の概要が紹介された。今回も操作性の向上など、さまざまな機能強化が実現しているが、とりわけ注目されるのが、環境を考慮した設計の検証機能である。これは、独PEインターナショナル社との提携により、実現した。
PEインターナショナル社は、LCA(Life Cycle Assessment)コンサルティングの草分け的な企業である。環境に関する豊富なデータベースを持っており、具体的には、設計時において、材料や製造方法などを入力することで、PEインターナショナル社のデータベースから解析を行なう。そして、解析結果をレポートするとともに、炭素化合物、エネルギー消費量、汚染物質などの環境負荷を計算し、設計時において比較検討することができるというものである。このような機能は、これまでの3次元CADにはなかった、斬新なものである(下の写真左)。
※写真左注釈:この検証機能では、設計によって、環境負荷がどう変わるかをシミュレーションすることができる。
ダッソー・システムズ・ソリッドワークス社の製品改革担当のディレクターであるリック・チン氏(上の写真右)は、「環境への配慮は、現代社会において、非常に重要な課題となってきている。製品設計時において、環境を考慮した検証を行なうことについては、これまで設計者はきちんと理解しているとはいえなかった。循環型の社会を実現するうえで、まずはそれを意識して設計できるような製品の開発を行なうことが重要である」と話している。
これまでの3次元CADは、設計対象の形状を定義するといったところから、大きくは出ていない。いってみれば、従来、2次元の図面で表現していたものを、高さを加えることにより、立体的なモデルで表現するようにしたにすぎないのである。
誤解を恐れずにいうと、3次元で形状を定義することは、設計のミスを低減し、加工の精度を向上させることにつながっても、製品設計において、革命的な効果につながるかどうかについては疑問であった。
今回、SolidWorks2010が、設計対象の形状を定義するという従来の3次元CADのカバーする領域を大きく超え、環境を考慮した設計の検証機能を発表したことは、製品設計において、革命的な効果を発揮する可能性がある。量産製品においては、わずかな改良であっても、炭素化合物、エネルギー消費量、汚染物質などの環境負荷を大きく低減することにつながるからである。これも、今後の3次元CADにおける新しい潮流を考えるうえで、大きなヒントとなるものと思われる。
SolidWorks 2010の「インポートモデルの直接編集機能」
SolidWorks 2010で行なわれた機能強化のうち、実際の設計において、とりわけ効果を発揮しそうなのは、他社のCADで設計された3次元CADモデル(インポートモデル)を直接編集できる機能であろう。この機能は、現行のSolidWorksにおいても装備されているが、SolidWorks 2010においては、より強化されたものとなっている。
現在、主流となっているフィーチャー・パラメトリック型3次元CADでは、穴、フィレット、押し出し量など、さまざまなフューチャーが定義されており、また回転量、押し出し量など、パラメトリックに形状を変更できる。それゆえ、フィーチャー・パラメトリック型3次元CADは、シリーズ化された繰り返し設計や、類似設計が多い製品を持つ企業の場合、大きな効果を発揮する(SolidWorksは、代表的なフィーチャー・パラメトリック型3次元CADである)。
フィーチャー・パラメトリック型3次元CADは、その3次元モデルを設計した技術者が、同じ機種の3次元CADで形状を編集しようとした場合、非常に便利なものである。が、そうでない場合、すなわち、その3次元モデルを設計したわけではない技術者が、異なる機種の3次元CADで形状を編集しようとした場合、拘束条件が強すぎて、自由度を著しく損なうことがある。これは、だからいいとか悪いとか、そういう問題ではなく、フィーチャー・パラメトリック型3次元CADとは、そういうものだと思うべきである。
この強すぎる拘束条件に対しては、いくつかの代替案が示されている。1992年に、独コクリエイト・ソフトウェア社の前身であったヒューレット・パッカード社は、フィーチャーを持たず、また形状の変更履歴にとらわれない「ダイナミック・モデリング」という技術を発表。自社のSolidDesignerというシステムに搭載した。SolidDesignerはOneSpace Designerと名前を変え、また、コクリエイト・ソフトウェア社は、現在は米国パラメトリック・テクノロジーズ社に買収されたものの、ダイナミック・モデリングという考え方は、一定の支持を得ているとみることができよう。
また、米国シーメンスPLMソフトウェア社は、2008年に「シンクロナス・テクノロジー」を発表。フィーチャー・パラメトリック型3次元CADをベースとしながらも、ある程度、フィーチャーや形状変更履歴にとらわれない自由度をユーザーに提供した。現在の3次元CADの流れとしては、こういった形状変更の自由度の大きさを重視する傾向があると分析することができるだろう。
こういった流れに対して、ダッソー・システムズ・ソリッドワークス社はどのように考えているのか。その回答であるとみられるのが、今回、SolidWorks 2010で発表されたインポートモデルの直接編集機能の強化なのである。
インポートモデルの直接編集機能は、異なる機種で作成された3次元CADモデルにおいて、フィーチャーを自動で判別し、形状を直接編集することができる。また、パターンコピー機能を追加することにより、パターン化されたフィーチャーを持つ穴などを自動で判別し、同時に一括して変更できるようにする。形状変更の自由度を大きく拡大するとともに、フィーチャー・パラメトリック型3次元CADの長所を積極的に残しているといえよう。
ダッソー・システムズ・ソリッドワークス社は、設計者の意図や知識を3次元CADモデルに反映させるためには、フィーチャー・パラメトリック型3次元CADは、大きな効果を発揮するという信念を持っている。その一方で、形状変更の自由度の大きさを拡大したいという、ユーザーのニーズにも対応し、今回、インポートモデルの直接編集機能の強化を発表したとみることができるだろう。そして、このような考え方は、今後の3次元CADにおける新しい潮流を考えるうえで、大きなヒントとなるものと思われる。
ものづくりの知財を蓄積するツールとして3次元CADを利用
3次元CADの利用は、設計対象の形状を定義するという領域を大きく超え、ものづくりの知財を蓄積するツールとなりつつある。そういったことを予感させるような取り組みが、日本国内の先進的なユーザーにおいても行なわれている。
今回、SolidWorks WORLD 2009では、ローランドディー.ジー.株式会社の杉山 裕一氏が、SolidWorksの3次元CADモデルを利用した公差解析に関する事例紹介を行なった。
製品設計においては、公差をシビアにすれば、製品の品質は間違いなく向上するが、コストは高くなる。反面、公差を緩くすれば、製品の品質は落ちるものの、コストを低く抑えることができる。そういった意味では、公差と製品品質、コストは、トレードオフの関係であり、公差をどのように設定し、どう管理するかは、製造業のユーザーにとってはノウハウそのものであるといえよう。
ローランドディー.ジーでは、SolidWorksで設計した3次元データと公差解析ツール「TolAnalyst」を使うことにより、寸法公差だけでなく、幾何公差の解析までも行なっている。解析結果についてはデータベースとして残るため、その設計者がなぜその公差を指定したかを、他の設計者がチェックすることができる。これはものづくりにおいては、大きな知財となる。つまり、3次元CADは、知財を残すためのツールとして、ユーザーにおける活用が始まっているのである。これも、今後の3次元CADにおける新しい潮流を考えるうえで、大きなヒントとなるものと思われる。
今後、ローランドディー.ジーでは、公差のデータベースを協力会社も含めて共有することにより、知恵を出し合い、品質の高いものづくりを追求していくという。3次元CADの利用もここまで来たか、と思わせるほど、先進的な事例であったが、こういった取り組みは、ユーザーにおいて、急速に広まっていくに違いない。
まとめ-SolidWorks WORLD 2009を取材して
SolidWorksは、すでに100万台に迫る出荷実績を達成している。3次元CADは、もはや、現在のものづくりにおいて、なくてはならないツールとなっているとみることができるだろう。しかしながら、3次元CADは、その操作がまだまだわかりづらく、使いこなすには特別な訓練を必要としている。これまで、3次元CADメーカー各社は、マン・マシン・インターフェースの改善について、あまりにも冷淡であった。今後の3次元CADにおける新しい潮流を考えるうえで、マン・マシン・インターフェースの改善は、大きなポイントとなるものと思われる。
これまでの3次元CADは、設計対象の形状を定義するといったところから、大きくは出ていなかった。今回、SolidWorks2010が、設計対象の形状を定義するという従来の3次元CADのカバーする領域を大きく超え、環境を考慮した設計の検証機能を発表したことは、製品設計において、革命的な効果を発揮する可能性がある。
現在の3次元CADの流れとしては、米国パラメトリック・テクノロジー社のダイナミック・モデリングや、米国シーメンスPLMソフトウェア社のシンクロナス・テクノロジーなど、形状変更の自由度の大きさを重視する傾向がある。
ダッソー・システムズ・ソリッドワークス社は、インポートモデルの直接編集機能を強化することにより、形状変更の自由度を大きく拡大するとともに、設計者の意図や知識を3次元CADモデルに反映させるために、フィーチャー・パラメトリック型3次元CADの長所を積極的に残している。
3次元CADの利用は、設計対象の形状を定義するという領域を大きく超え、ものづくりの知財を蓄積するツールとなりつつある。
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【SolidWorks WORLD 2009とは】
CAD/CAM/CAE分野における世界最大のイベント。2009年は2月9日~11日の3日間、米国ダッソー・システムズ・ソリッドワークス社がフロリダ州オーランドにおいて開催した。
会期中は、世界各国から4,300名を超える参加者があり、また150社を超えるパートナーがブースを出展した。また、最終日のゼネラルセッションでは、SolidWorksの次期バージョンであるSolidWorks 2010の概要が紹介された。
今回は、YanoICTアナリストである筆者が「SolidWorks WORLD 2009」を現地取材。その概要を報告するとともに、今後の3次元CADにおける新しい潮流について考察する。
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