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産業構造の転換期には新しいITのチャンスが生まれる
厳しかった2009年 製造業向けITビジネスの2010年を展望する
今年(2009年)、IT産業にとって最大の市場である製造業向における投資動向について、ユーザ調査とITベンダー調査の両面から市場分析を行なった。改めて強調するまでもないことだが、昨今の経済環境によって製造業は甚大な打撃を受けており、ITビジネスも大きな影響を蒙った。 2009年は終わりに近づいており、ここでは今後の展望について考えてみたい。当社の調査データでは、2010年度の投資額は加工組立製造業でプラスに転じている。2008年度、2009年度に予算を抑制してきた製造業が、IT投資を再開する可能性はあるだろう。
矢野経済研究所作成
注:プロセス製造業とは、食品、飲料、化学薬品、医薬品、鉄鋼、非鉄金属、紙パルプ、石油、素材など、主に原材料を加工して製品を生産する製造業を指し、加工組立製造業とは、機械、家電、電機・電子機器、自動車、自動車部品など、主に部品を組み立てて製品を製造する製造業を指す。
「エコ」にまつわる新たなITニーズとはどのようなものか
製造業向けITビジネスの復活と再成長のトリガーとなるキーワードのひとつとして、「エコ」を挙げる。耳新しい言葉ではないが、何かと話題は多い。民主党の新政権発足直後、鳩山首相が、温室効果ガス削減目標について「1990年比で2020年までに25%削減することを目指す」と発表したことは記憶に新しい。身近なところでは、「日経トレンディ」誌で選ばれた2009年のヒット商品のベスト1は、エコカー減税を背景に売り上げを伸ばしたトヨタとホンダのハイブリッド車「プリウス&インサイト」だった。
テレビのCMなどを見ていても、家電や食品、消費財など、製品の機能や品質よりむしろ「エコ」という価値を売りにするものが急増しており、消費者の支持に裏打ちされていることもうかがえる。
筆者の実感としては、「エコ」の周囲には新たなITビジネスがある。前述の調査のなかで、ITベンダーからも、「エコ」というキーワードは度々聞かれた。具体的に見てみよう。
IT産業にとって巨大な需要先である自動車業界では、「投資意欲があるのはエコカー関連のみ」という状況だという。例を挙げると、エンジニアリング分野ではエコカーの設計や開発、組み込み開発では、動力源であるモーターやバッテリーの制御システム開発がある。ただし、これらはエンジン車における同分野のビジネス規模よりは小さいため、不況によって失った分を補填するには力不足かもしれない。 それでは、従来の自動車産業にはない、新しい需要に目を向けてみよう。車載用としての利用拡大が見込まれる燃料電池の生産管理システム、電気自動車の充電インフラの制御システム、などさまざまな切り口がある。
その他、自動車以外でITベンダーから挙がったエコ関連の新ビジネスには以下のようなものがあった。
- エコの事業化を支援する分野
・リサイクル品を再利用した製品の製造において、安全性管理のために素材の含有物質の管理を行なうシステム
・家電の使用電力を表示し省エネを促進する「エコモニター」機能の組み込み開発 - 企業の環境対策を支援する分野
・工場のCO2排出量のシミュレーションシステム
・設備の最適なエネルギー使用を実現するためのコントロールシステム
エコビジネス創出への参画がIT産業にとってのチャンス
他方、「エコはビジネスにはならないのではないか」という批判的な意見もあった。実際、ITベンダーは、エコカーなど具体的な製品にまつわる部分以外では、「エコ」がどう「ビジネス」に結び付けられるのか、模索している状況のようだ。
ただし、これはIT業界に限ったことではなく、製造業においても事業アイデアや採算性の面から、手探り状態の企業が多いと考えられる。漠然と「これからはエコにニーズがあるのではないか」という感触を持っていても、なかなかチャンスは得られないようだ。
しかし、筆者が「エコ」がチャンスを生む、と考えるのは、エコが技術革新や産業構造の変革を伴っているからである。再度自動車業界に目を向けると、まったくの異業種であるベネッセコーポレーションが電気自動車製造の新会社立上げに参画したり、ガソリン車を電気自動車に改造する企業が登場するなど、新たな動きが目立つ。 ITはあらゆる場面で産業を支援する役割を担っているが、プレイヤーの顔ぶれにおいても、技術や製品においても、既存の枠組みにとらわれない発想が必要になるのではないか。ITベンダーが、製造業と協業してエコビジネスを創出することが、2010年以降の市場回復に繋がるものと期待する。
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