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2017.11.21
トラックにも押し寄せる電動化の波

東京モーターショー2017では、業界をあげたEV化への取り組みが話題になった。開催を1か月後に控えた9月には、自動車の世界最大のマーケットである中国で、政府が新エネルギー車へのシフトを発表したこともあって、日本の自動車メーカー各社のEV戦略が注目されたためである。そして、EV化が乗用車だけではなくトラックでも本格化しようとしていることが、トラック各社のプレスブリーフィングで明らかになってきた。

三菱ふそうトラック・バスは、電気トラックブランドとして「e-Fuso」を発表。小型トラックの電動車両として世界初の量産モデルとなるeCanterを公開した。ニューヨークで先行発表されており、アメリカの宅配大手UPS社に最初の納品を行い、日本においてもヤマト運輸とセブン-イレブン・ジャパンへ9月に納入している。車両重量7.5t、最大積載3.8~4.0t、最高速度80km、航続距離100~120km、5年間稼働させるだけで75万円~80万円のコストダウンになるという。

三菱ふそうトラック・バスの電動小型トラックeCanter プレス資料より

電動トラックは、内燃式エンジントラックとは違って製品サイクルが早いため、2年リースで最新のバッテリーテクノロジーに乗り替えるチャンスも与えるとしている。更に、小型トラックだけではなく、大型からバスまでフルレンジで対応する予定でもある。当面、長距離は対象外ではあるが、近距離輸送にフォーカスするとしながらも大型トラックの「Vision One」も発表した。
ワールドプレミアとなったVision Oneは、コンセプトモデルながら、航続距離350km、車体総重量(GVW)23.2t、積載重量11.1tで実際に走行が可能な実現性の高いモデルである。

三菱ふそうトラック・バス 電動大型トラックVision One プレス資料より

世界的にも、都市化と都市部への人口集中は大きな流れであり、都市部での騒音、排気、混雑は更に深刻になることから、内燃式エンジンへの規制は高まる可能性が高い。しかし、トラックは物流を支えるバックボーンであり続け、トラックを置き換えるものは他にない。しかし、トラックの動力は変えることができる。そこで、三菱ふそうとダイムラーは、商用車の電動化によって騒音ゼロ、排気ゼロを実現するとしている。

いすゞ自動車では、トラックが社会の快適さや便利さを支えるために不可欠なインフラであることを強調し、商用車としての経済的合理性や使い勝手の良さを考慮した上で、小型トラックのエルフを電動化したELF EVをワールドプレミアとして世界初公開した。航続距離100km以上を実現し、小口配送車両やごみ収集車などとしての採用に期待を寄せる。2018年からモニタリング投入を開始し、今後も実際の使用実態に合わせた商用車両の開発を進める予定である。

いすゞ自動車 ELF EV プレス資料より

一方で、EVでは担いきれない長距離輸送等に対応するためのクリーンディーゼルエンジンや天然ガストラックとの共存を目指して行く考えである。

日野自動車の今回のテーマを「もっとはたらくトラック・バス」として、もっと役立つ車両を提案した。eコマース拡大による配送増加、トラックドライバー不足、過疎地の移動難民の増加など、仮題解決におけるトラック・バスに求められる役割の多様化を挙げ、未来の輸送の姿を映像化してショーケースした。子育て世代がワークシェアリングし、コミュータバスが自動的に自宅前に向かい、個別事情に合わせて配送・集荷のルートが設定され、小型パーソナルモビリティを共有し、貨客混載のコミュニティバスが日常の足になるというようなものである。

日野自動車では、小型バスのポンチョEVを出展。東京都墨田区で2012年のスカイツリーの開業に合わせて導入しており、既に5年間の実績がある。また、同時期に東京都羽村市のコミュニティバスにも採用された。さらに2013年には石川県小松市でも営業運行が開始されている。

日野ポンチョEV プレス資料より

トラックのEVはないが、小型トラックのデュトロと中型トラックのレンジャーではハイブリッドが設定されている。
日野自動車では、大型トラックにおいては当面はディーゼルエンジンが商用車としての性能や経済性において優位が続くとみている。

UDトラックスの今回のテーマは“Best truck for all drivers! ?すべてのドライバーにとって、ベストなトラックを目指して。”である。今回発表された大型トラックの新型「Quon」は、2015年にスマート・ロジスティクスを実現する環境性能、安全性能、運転性能のコンセプトモデルとして発表した「Quon Vision」を具現化し、乗用車のようなドライバビリティを実現したという。

UDトラックス 新型Quon プレス資料より

今回の展示には電動トラックは無かったが、前回の第44回東京モーターショー(2015年)では、中型電動トラックの実験モデル「UDエレクトリック・デモンストレーター」を発表している。Volvoグループのプレゼンテーションの中では、自動運転、エレクトロモビリティ、コネクティビティへの取り組みを紹介し、電動化に関しては1995年から取り組んでいることに言及している。

EV専業メーカーであるテスラはトラックの電動化にも意欲を見せており、今年1月にイーロン・マスク氏の「電動大型トラックTesla Semiの開発を計画している」というツイートが話題になった。当初の発表によると、Tesla SemiはClass 8(車体総重量GVW15トン超)の大型トラック(トラクタ)に相当する。しかし、この発表に対する批判的な意見も聞かれた。現行の乗用車Tesla Model Sでも航続距離が300マイル(約480km)に過ぎず、20トンを超える車体で長距離を走行する上では更に大容量のバッテリーを積む必要がある。そのため、積載量も犠牲となり、車両コストが上がり、商用車としての経済性を確保できないことから現実的ではないというものであった。

そして、11月16日に発表されたTesla Semi Truckは、車両総重量80,000ポンド(36トン)を時速60マイル(96km/h)で500マイル(800km)の航続距離を出せるという。後輪二軸の車輪を4つのモータでそれぞれ独立駆動することで、0-60マイル/hが20秒。全てにオートパイロット(緊急ブレーキ、車線維持、前方衝突警報)が搭載され、走行距離100万kmまでの故障を保証するとのこと。2019年から製造開始するとしている。
明確な価格は示されなかったが、ディーゼルエンジン車との比較として、1マイル当たりの運用コストがディーゼルではUS$1.51/マイルであるのに対して、Tesla SemiはUS$1.26/マイルで、20%近くの削減になるという。

Tesla Semi テスラHPより

Teslaに先行して、今年8月には産業用ディーゼルエンジンのカミンズ社が電動セミトラック(トラクタヘッド)(Class 7-GVW15トン未満)「Aeos」を発表している。カミンズ社は、Kenworth等の米国トラックメーカーや日本の建機メーカーのコマツにディーゼルエンジンを提供しており、天然ガスを燃料とするエンジンなど代替エネルギーエンジンの開発にも意欲的に取り組んでいる。

Cummings 電動トラック「Aeos」プレス資料より  https://twitter.com/Cummins/status/902551824858845188

既存のトラックメーカー以外にも、ニコラモータース社では水素燃料電池による発電でモータの動力とするEVトラックのプロトタイプを発表し、2020年からの製造開始を予定している。

Nikola Motors水素燃料電池トラック「Nikola One」プレス資料より  https://nikolamotor.com/one

欧州のトラックメーカーMANやScaniaを傘下に持つフォルクスワーゲンでも、傘下ブランドのトラックやバスの電動化に向けて、バッテリーを小型化・高効率化して商用車としての魅力を高めるため2022年までに14億ユーロを投資するとしている。

これまで航続距離が限定的であったことから、トラックのEV化は難しいとの見方も多かったが、近距離配送に特化することなどによって実現が近づいている。近距離のストップ&ゴーが多いルートではEVトラック、長距離の輸送にはディーゼルエンジン車という使い分けがされることになる。
残る課題はEVトラックの価格とバッテリーの耐久性で、商用車として採算ラインに乗る価格での提供をいかに可能にするか、過酷な使用環境で劣化が激しくなるバッテリー交換のコスト等とディーゼルエンジントラックのランニングコストと比べても有利なことをいかに実証するかであろう。

古舘 渉(フルダテ ワタル)主任研究員

新規事業コンサルティング部門、上海現地法人、海外部門を歴任し、新規市場開拓のお手伝いには自信があります。

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