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2017.11.09
デザインで「イノベーション」「デジタル変革」を形にする 富士通のHAB-YU(ハブユー) Platform

「イノベーション」「デジタル変革」「共創」といった現代の経営環境を表すキーワードと共に、「デザイン思考」への注目度が高まっている。先日、富士通が提供するデザイン活動の場「HAB-YU Platform(以下HAB-YU)」を取材し、マーケティング戦略本部ブランド・デザイン戦略統括の高嶋氏から、その目的や活動内容を具体的に聞くことができた。

「デザイン思考」とは「イノベーションを生み出すために、卓越したデザイナーの思考方を活用すること(注:「『デザイン思考』でゼロから1をつくり出す」中野明著より)」と表現される、ビジネス創出のための手法だ。デザイナーの思考とは、本質的なニーズを探る、多数のアイデアを生み出す、仮設と検証を重視する、といったものだ。もともと富士通のプロダクトやUIのデザインを行っていたデザイナーの高嶋氏は、「こういった思考法は、我々デザイナーは当たり前にやっていることだ。」と説明する。しかし通常の製品開発プロセスにおいては、デザインの工程は終盤に入り、顧客との接点は少ない。デザイン思考へのニーズや関心が高まる中、デザイナーが直接イノベーションを生み出す体験を提供しようという狙いを持って、2014年9月にHAB-YU(ハブユー)をスタートした。

HAB-YUは、サービス名でもあり、六本木にある一見するとカフェかデザイナーのオフィスのような雰囲気が漂う部屋、“場”の名称であるともいえる。高嶋氏ら運営メンバーを中心として、富士通は、この場所でデザイン思考を活用したワークショップなどを開催する。ちなみに、「YU」は日本語の「結う」からきており、「人とビジネスを結ぶ」ことをイメージしているという。

【写真:六本木のHAB-YU室内】

六本木のHAB-YU室内

【写真:水引は「結う」を示す】

水引は「結う」を示す

顧客の一例にはユナイテッドアローズがある。同社はオムニチャネルやO2O(Online to Offline)の取組み、スマートフォンやタブレットの積極活用など、アパレル業界ではITの活用が積極的な企業として知られている。しかし中期計画を策定する上で「未来の店舗像」を想定しようとしたが、自社のみではアウトプットが出なかった。そこで、店舗接客の現場にいる販売員や富士通のエンジニアが混じってワークショップなどを行いながら次世代の事業検討を行っている。既に3年以上HAB-YUを利用しているそうだ。

「新規サービスを開発したい」「AIを活用したい」といった漠然とした方針を抱える企業は増えている。そこで富士通は、HAB-YUでのワークショップを通じて、社会課題から本質的なテーマを探り、過去の成功体験に囚われないアイデアを引き出し、具体的なアクションを導く支援をする。現時点では年に100~200社程度が利用しており、業種や業態は多岐にわたる。多様なアイデアはカードとして蓄積され、次に活かされる。

【写真:アイデアのカードは700枚以上蓄積されている】

アイデアのカードは700枚以上蓄積されている

昨今デザイン思考のセミナーやワークショップ、ハッカソン等の開催が増えているが、単に参加して面白かった、という打ち上げ花火的なイベントに終わらせず、事業化を前提とした出口を設定する点は、HAB-YUの重要なポイントといえるだろう。
その出口においては、富士通の製品やサービス利用につながる必要はなく、更に言えば必要な手段がITである必要さえないのだという。富士通という社名を極力出さない方針で始めたそうだが、言われてみると、六本木のHAB-YUのスペースには赤いロゴも見当たらなかった。高嶋氏は、「富士通ブランドが前面に出ると制約ができてしまう。HAB-YUから生み出されるイノベーションはオープンなものであり、富士通がすべてカバーできるとは限らない。」と説明した。

新規事業、イノベーション、AI活用、働き方改革…これらは重要な経営課題ではあるが、何から手をつけていいかわからないという声も多く聞く。優れたアイデアはニュートンのリンゴのように突然空から落ちてくるものではなく、然るべきアプローチが必要だ。その際、制約なく社内外からアイデアを持ち寄って共に未来を考えるデザイン思考は、イノベーションの出発点になり得るだろう。

デザイン思考は米国で生まれ、AppleやGoogleも活用していることで知られるが、最後に、高嶋氏に日本の企業で利用するコツがあるかどうかも聞いた。一般に、日本企業はアイデア重視で早期にプロトタイプを作成し失敗するとすぐ別のアイデアを試す、米国式のアジャイル方式は受け入れづらい。日本では、まずビジョンを形成し、経営層と現場がそれを共有するというステップが重要になる。また、高嶋氏は、日本発のやり方は、技術や予算を議論の中心にせず本質をとらえるという点で、普遍的な価値があるとみている。今後は、HAB-YUで培ったプロセスを海外の富士通拠点で展開することを計画しているそうだ。

小林 明子(コバヤシ アキコ)主任研究員

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