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2017.04.26
東京オリンピックに向けて拡大するサイバーテロ対策需要を取りこぼすな!

危機管理ソリューション市場の現状

危機管理ソリューションとは、「事業継続ソリューション(BCPコンサルティング、DR [災害復旧]ソリューション)」、「防災ソリューション(防災行政無線システム、消防指令システム、総合防災システム、災害情報管理システム、安否確認・緊急速報サービス)」、「情報セキュリティソリューション(情報セキュリティツール(製品)、情報セキュリティコンサルティング・診断、情報セキュリティ構築、情報セキュリティ運用監視・保守)」のことを指す。

「事業継続ソリューション市場」では、東日本大震災以降から、事業継続対策に取り組む企業が増加していたが、2013年度後半から市場は落ち着きを見せている。但し、一旦策定したBCP(Business Continuity Plan:事業継続計画、以下BCP)を継続的に見直す企業が存在しており、引き合いはその後も継続的に見られる。特に2016年度は、熊本地震の影響により策定済みのBCPを見直す動きやBCPに関するセミナー、訓練などのBCPコンサルティング需要が増加した。
事業継続ソリューション市場のうちDR(Disaster Recovery:災害復旧)ソリューションにおいては、クラウド型のサービスの利用拡大により全般的にサービス単価が低下傾向にあるが、導入企業の裾野は拡がった。

「防災ソリューション市場」では、中央政府がBCPや防災対策を着実に進め、引き続きBCPガイドラインの策定や省庁横断の国土強靭化に関する取り組みを進めている。また地方公共団体が職員と住民の双方に、より有効な情報を、より迅速・的確に提供するため、導入済の各システム・サービスの高度化、高機能化を継続的に進めている。

「情報セキュリティソリューション市場」では、2011年以降、大手企業や政府機関へのサイバー攻撃や不正アクセスなどの事例が次々と発覚し、日本でのサイバーテロ攻撃被害が現実味を帯びてきたことから、市場が活発化している。さらに2014年に教育サービス企業で情報漏洩事件が発生し、経営の根幹を揺るがす膨大な被害になったことや2015年に日本年金機構における標的型サイバーテロ攻撃被害という大きなインシデントがあったことなどから、経営者の危機意識が高まり、サイバーテロ攻撃への情報セキュリティ対策の導入を促進する機運はさらに高まっている。
このような状況から、国内の危機管理(事業継続/防災/情報セキュリティ)ソリューション市場(事業者売上高ベース)は、2015~2021年度は年平均成長率(CAGR)3.9%で推移し2021年度に1兆632億円に達すると予測する。

東京オリンピックに向けてサイバーテロ対策需要が拡大

【図表:情報セキュリティソリューション市場規模推移】

情報セキュリティソリューション市場規模推移

矢野経済研究所推計

注:事業者売上高ベース
注:2016年度は見込値、2017年度以降は予測値
注:本調査における情報セキュリティソリューションとは、情報セキュリティツール(製品)、情報セキュリティコンサルティング・診断、情報セキュリティ構築、情報セキュリティ運用監視・保守のことを指す。

2017年度以降、危機管理ソリューションの中でも特に市場が拡大すると思われるのは「情報セキュリティソリューション」である。近年のサイバーテロ攻撃による情報漏洩被害の増加やマイナンバー制度の導入などから、情報セキュリティ対策を重要な経営課題として位置付ける企業や地方自治体が増加しており、これに伴い情報セキュリティ対策への投資が増加すると考えられるためである。

従来は、情報セキュリティ対策を進めるのは主に大手企業であったが、インシデントの発生が続いたこともあり、中堅以下の企業でもソリューションの導入が広がり、あらゆる業種、あらゆる規模の企業へと市場の裾野は拡大している。また公共系でも、マイナンバー制度の導入などもあり、それに対応した製品の導入が進んでいる。

さらに、2020年に東京オリンピック・パラリンピックが控えているため、今後は、インフラ事業者及び関連組織、地方自治体などで、情報セキュリティ対策の強化やサイバーテロ攻撃を受けた場合の復旧時間の短縮に向けた取り組みがますます加速されていくと思われる。2020年の東京オリンピックでは世界中から多くの人が集まるため、テロの脅威も増すと考えられる。2012年のロンドンオリンピックの際には、膨大な数のサイバーテロ攻撃が報告されたが、同様な事態が東京オリンピックでも発生する可能性が高い。オリンピックに向けては、いかに事前準備を行っても、想定外のインシデントが発生する可能性があるため、セキュリティ対策やテロ対策としては、いかに早く対処できるかが重要となる。

最近のサイバーテロ攻撃は内容が高度化している。このため、従来は情報漏洩対策としてのアンチウイルス等が主流であったが、近年は、入り口で防ぎきれないケースについて、侵入後の「あやしいと思われるもの」をどう見つけるかが重要になっている。このため詳細な「振る舞い」を分析するための、動的判断ツールの導入が今後活発化していくものと推測される。

また、東京オリンピックでのサイバーテロ対策においては、モバイルとIoTが特に重要な課題になると想定される。
モバイルについては、Wi-Fi環境でスマートフォンが一斉に使われ、また競技会場内ではウェアラブル端末の利用も想定されるためである。
またIoTについては、様々な計測装置や、施設、車両などがインターネット空間に接続されることで、あらゆる機器がサイバー攻撃にさらされる危険性が高くなるためである。また電力・ガス・航空・鉄道などの重要インフラの制御システムのセキュリティ確保も重要となる。
このように、東京オリンピックにおいては情報セキュリティ対策が非常に重要になるため、官民連携によって、より広範囲な分野における、一段と深いレベルでの対策が必要となるだろう。

東京オリンピックの開催は2020年だが、事前準備や訓練などのPDCAサイクルを考えると、一刻も早く検討がスタートしていることが望ましい。オリンピックにおいてITを欠かすことはできないため2020年に向けてIT投資は伸びていくと思われるが、必然的にセキュリティ対策への投資も増えていくと予測する。

情報セキュリティソリューション提供事業者としては、東京オリンピックに向けて発生するこのような大きなビジネスチャンスを逃すことのないよう企業や国に対して積極的な提案を実施していくべきと考える。

矢野経済研究所では、情報セキュリティ市場は、2015~2021年度において年平均成長率(CAGR)4.8%で推移し、2020年度には6,960億円に達すると予測している。

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石塚 俊(イシヅカ タカシ)主任研究員

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